被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
購入する前に注意!
いつの間にか「定期購入」になってたトラブルもこれで減る!? 6月からは契約事項を分かりやすく表示することが必須に
2022年7月8日 11:55
販売サイトなどでは、「お試し」として初回のみ8~9割引きや、サンプル無料となっている商品を見かけます。そんなに安いなら、と初回分のみ購入したつもりでいたら、翌月以降も商品が送られてきて請求が発生してしまった……というトラブルが増えています。
もちろん、定期購入したと分かっているなら問題ありません。しかし、意図していないとなれば問題です。今回は定期購入に関するトラブルとその回避方法について紹介します。
「いつでも解約できます」だったのに……
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された消費生活相談情報によると、定期購入に関する相談件数は激増しています。2015年には5620件でしたが、2020年には5万9172件と、10倍以上になっているのです。
定期購入していることに気付いていない場合、商品が続けて届いた段階で知ることになり、そこから解約の連絡をすることになりますが、中には2回目の段階で数カ月分の商品がまとめて届くケースもあります。
逆に、定期購入だと把握したうえで被害に遭うケースもあります。例えば、規約に「いつでも解約できます」と書いてあり、1カ月目の値段は割安になっているため、商品を手に入れてから、すぐに解約をするつもりで契約する人もいます。
しかし、解約時にすんなりいくとは限らないのです。例えば購入条件として「6カ月分以上の購入が必要です」などと記載されているケースがあり、1~2カ月目で解約するのであれば、購入条件分の通常価格と送料をまとめて支払ってもらう、と言わることがあるのです。
「いつでも解約できる」と書いてあったのに、「解約は次回発送予定日の7日前までに連絡が必要。次回の発送は2日後なので今は解約はできない」と言われたケースもあります。販売サイトを確認したところ、確かにその旨が条件として書かれてありましたが、とても小さい文字で書かれていたそうです。
また、国民生活センターには、解約しようにも事業者に電話がつながらずに解約手続きができない、という相談も寄せられているようです。
2022年6月1日からは各契約事項を最終確認画面に表示することが必須に
なぜ、こんなに定期購入のトラブルが多いのでしょうか。それは、業者が売り上げを上げるべく、定期購入だと分からないように格安を餌に集客している場合があるからです。当然、業者としては割引商品だけを買われては儲けになりません。本来であれば、お試しで気に入っていただき、定期購入につなげるのが筋ですが、無理矢理誘導してしまうケースもあるのです。
その場合、定期購入であることや解約条件を分かりにくく表示します。購入・契約状況を確認するための最終確認画面では定期購入だと分からなくなっていることもあります。中には、お得な価格で購入できる時間をカウントダウンするように表示するウェブサイトもありますが、これでは消費者は騙されてしまいます。
近年、急増するこの定期購入トラブルに対応するため、「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律」が2021年3月5日に国会に提出され、同年6月9日までに可決・成立、同月16日に公布されました。そして、2022年6月1日から施行されています。
全てのEC事業者は、カートシステムの注文確定の直前に表示される最終確認画面で、分量や価格、支払い方法、提供時期、解約に関すること、申し込み期間などを簡単に確認できるように表示しなければならなくなりました。このうち支払い方法については、定期購入契約の場合は、各回の請求時期も表示しなければなりません。そして、消費者に誤認を与えるような表示を行った場合には、消費者が取消権を行使できる場合がある、となったのです。
注文を確定する前に3つのポイントをチェックしよう
消費者庁では、ネットショッピングで注文を確定する前に、3つのポイントを確認するよう注意を呼び掛けています。
1つ目は、1回限りの購入かあるいは定期購入か確認する必要があります。「○カ月コース」や「自動更新」などと書いてあれば、定期購入です。
2つ目が価格です。定期購入の場合、初回と2回目以降の価格が異なることが多いですが、2回目以降の価格が書かれているか確認しましょう。
3つ目が解約の方法です。1回でも簡単に無料で解約できるのか確認しましょう。
これらは、2022年6月1日以降は最終確認画面で明確に表示しなければいけないよう義務付けられています。誤認させる表示により申し込みをしてしまっても、契約を取り消せる可能性があります。
トラブル回避のために、最終確認画面のスクリーンショットは残しておく癖を付けておいた方が良いでしょう。もし、トラブルになった場合は、消費者ホットライン「188(いやや!)」番に相談してみましょう。
定期購入であることを隠すのは「ダークパターン」の一種(過去記事『いつの間にか定期購買に、消費者が不利になるように誘導する「ダークパターン」に注意』参照)ですが、法改正されたこともあり、今後は減っていくことでしょう。
しかし、何らかの商品を購入する際、表示内容をよく読むのは基本です。定期購入でトラブルになった経験のある人は、今後はより一層注意しましょう。こうしたトラブルがネット詐欺につながる可能性もあるため、本連載のほかの事例も参考に、被害に遭わないデジタルリテラシーを身に付けましょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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