被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
ネットショッピング中は気を付けよう!
いつの間にか定期購買に、消費者が不利になるように誘導する「ダークパターン」に注意
2021年5月14日 06:00
ネットショップを利用しているときに「10人がこの商品を閲覧中」「あと30分でセールが終了」などと表示され、焦って購入してしまったことはないでしょうか?
また、有料のサブスクリプションサービスを解約しようとしても、解約する方法が見つからず、諦めてしまったことはないでしょうか? 解約できたとしても、オプションと称して別の課金が継続するケースもあります。
これらは「ダークパターン」と呼ばれる、消費者が不利になるように誘導する手法です。昔からある手口ですが、これまでは泣き寝入りするしかありませんでした。しかし、アメリカで社会問題として取り上げられるようになってきました。
筆者もダークパターンに引っ掛かったことが何度もあります。初回割引になっているサプリを買ったら、次々と送られてきて、意図せず定期購買になっていたことがありました。そのほかにも、契約した覚えがないのに高額なフォトストレージの料金が数年にわたって引き落とされていたこともあります。
ホテルの予約や限定品の申し込みなどで、ダークパターンに煽られて、慌てて手続きしてしまったケースは多々ありそうです。
悪質の度合いはさまざまですが、大手のECサイトでもダークパターンは見られます。例えば、Amazon.co.jpでは商品を購入する際、デフォルトで定期購買が選択されていることがあります。よく確認せずに購入手続きを進めると定期的に商品が届いてしまいますし、通常の注文にするのは選択し直さなければならないので面倒です。
登録解除するのも大変、大量のメルマガが届くように
筆者の場合、ネットショップで登録していたメールマガジン(メルマガ)の送付を拒否するのが面倒で、今では毎日膨大な数のダイレクトメールが届くようになってしまいました。時間のあるときにメルマガを解除しようとしても、面倒な作業が必要で諦めてしまうことも多々あります。これもダークパターンの1つです。
アメリカの事例ですが、メールアドレスを登録すれば○%オフのようなサービスを利用させようとするダークパターンがあります。それは、「登録しますか?」という回答に、「いいえ」だけではなく、「いいえ、全額支払うのが好きです」「いいえ、お金を節約するのは嫌いです」と表示するのです。日本ではまだ見たことはありませんが、露骨すぎてひどいですね。
メルマガを大量に送りつけるダークパターンは多くのECサイトで使われています。有名どころでは、楽天がデフォルトでさまざまなメルマガを購読する設定になっており、気が付いたら大量のメルマガが届いた……なんてことがあります。
必要以上に個人情報を要求したり、判断を急かせるようなダークパターンに注意
そのほかにも、アプリをインストールするときに、規約に同意を求めるのですが、わざと難解で長文の規約を表示するケースもあります。ほとんどの消費者は読まずに同意してしまうことでしょう。
サービスの提供には特に必要がないのに、名前や住所などの個人情報を求めてくることもあります。その際、誘導するためのボタンを大きく明るく表示し、その他の選択肢を目立たなくするという手口もあります。
びっくりするようなアイデアで誘導する企業もあります。例えば、Twitterに表示した広告画像にリンクを貼り、その画像の一部に黒い汚れを表示するのです。ユーザーは当然ディスプレイが汚れていると思い、指で拭きます。すると、タッチしたことになり、広告が再生されるというわけです。
This mobile ad designed to make it look like you have a speck of dirt on your phone, making you tap on it.https://t.co/vd7Olo7gsspic.twitter.com/RnQcItQf5h
— Cory Doctorow (@doctorow)January 30, 2018
※カナダのジャーナリストCory Doctorow氏がTwitterに投稿したダークパターンの1例
現在のところ、日本ではほとんどのダークパターンが合法です。ダークパターンの被害に遭わないためには、事例を学び、自分で自分の身を守ることが重要です。心の準備なしに遭遇すると、デジタルリテラシーのある人でも誘導されてしまうのです。
対策としては、ネットで何かを購入したり、登録したりする際、判断を急がせるようなメッセージが表示されたら、そこで手続きをするのをやめてしまうというのも手です。
解約を回避するようなサービスの場合、まずはネットで「○○(サービス名) 解約の方法」と検索してがんばって解約してしまいましょう。ヘルプページで検索しても書いていないことがあるので、検索する方が手っ取り早いです。そして、その企業のサービスは今後使わないようにすればいいでしょう。
アプリ購入時など、契約や規約の文言は残念ながらきちんと読まざるを得ません。面倒なら、そのアプリやサービスを使うことを断念する方が安全です。
ダークパターンを利用して目の前の利益を追う企業がブランディングに傷が付く、という風潮になれば、採用する企業は減っていくと考えられます。みんなでデジタルリテラシーを高め、ダークパターンを回避していきましょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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