被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

騙されないように注意!

SNSの詐欺広告から副業詐欺へのコンボに要注意、被害届を受理してもらえなかったケースも

 最近、Facebookのタイムラインで詐欺広告を多く見かけるようになってきました。筆者の場合は、有名人の写真を勝手に使った仮想通貨や投資詐欺の詐欺広告が多く表示されます(関連記事「Facebookに流れた怪しいネット詐欺広告に注意」を参照)。このほかに、副業詐欺へ誘導する詐欺広告がSNSで表示されるケースもあります。

 先日、筆者が所属するNPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)に実際に副業詐欺による被害について相談が寄せられました。ネット詐欺師とのやり取りの画像も提供していただいたので、今回はSNSの詐欺広告から副業詐欺のコンボによる誘導手口について、どこで危険だと判断すべきなのかを紹介します。ただし、細部に関しては個人情報が分からないように変更し、事例として使用する画像も筆者が作成したダミーになります。

FacebookでAirbnb関連企業を装った広告が表示される

 今年の5月中旬、休職中だったある女性がFacebookを見ていると、「Airbnbオンラインアシスタント採用中 1日20000円」という広告が表示されたそうです。Airbnbのロゴを勝手に使い、関連企業を装っていました。自宅作業で、経験不問。1日2~3時間の作業で1日2万円を日払い可能と謳っています。

Facebookに詐欺広告が掲載されていました(筆者が作成したダミー画像です。実際に表示されていた広告ではありません)

 問い合わせは指定のLINE IDに連絡するように書いてあり、連絡すると業務の内容を紹介してきます。Airbnbは2008年に米サンフランシスコで設立されたというような事実に絡めて、自社も何年に登録された、などと言ってきます。これは事実と絡めることで、信頼度を高めようとするテクニックです。

 実際にやり取りされた文章を見ていると、「一部の民宿製品の販売量と知名度が理想的ではないため」「全世界の旅行愛好家に予約されて成功に普及され」といった言い回しがあり、外国語を機械翻訳したような不自然な日本語になっています。ただ、自ら外国の企業だと言ってきているので、この点では怪しむことができませんでした。

 会話を進めると「各プロモーション製品の口銭は数%で、私の経験で注文を処理した後、一日に5000-10000円を稼げます」という説明がありましたが、相談者も何のことか分からず、いろいろと質問をします。

 まとめると、Aibnbに登録されている民泊物件の口コミを登録し、評判を上げるというステルスマーケティング(ステマ)的な作業内容でした。

 実際の宿泊は行いませんが、宿泊費の立て替えは発生するのがポイントです。実際に泊まることはありませんが、ネット詐欺師が用意した口コミを登録すれば、立て替えた代金全てと数%の報酬が振り込まれると言うのです。

 簡単な作業ということで相談者は数件作業し、15万円を立て替えました。すると、翌日に立替金3万5000円と報酬1万5000円の計5万円が振り込まれたのです。続けて作業しようとしたところ、次の立替金は24万円だと言うのです。これ以上は立て替えられないので、キャンセルすることを伝えると、「それはできない」と言ってきました。

 残りの立替金も、40件分の処理を完了すれば全て支払う、と言うのです。もし指示通り40件やりきった場合はとんでもない金額になります。怪しいと感じた相談者がネットで検索したところ、ネットには100万円、1000万円といった被害を受けた人の投稿があふれており、被害回復に向けて動き出しました。

 警察に被害届を出しに行きましたが、「一度でも報酬を得ていると、刑事事件としての詐欺罪に該当しないので、被害届は受理できない」と言われたそうです。刑事事件ではなく、民事事件として処理しなければならない、ということです。

 今回のケースのポイントは、ステマをするためには宿泊料金を立て替えなければならない、というロジックを構築している点です。そして問題は、初めて作業した翌日にお金を振り込んで相手を信じ込ませ、同時に刑事事件を回避している点です。

SNSで「稼げる」を謳う広告には手を出さないこと

 これらの詐欺被害を回避するためには、SNSで「稼げる」と謳う広告には手を出さないことです。特にFacebookは最近、詐欺広告が多いので要注意です。「楽して稼げる」と書かれている募集には近付かないようにしましょう。本当に楽して稼げる仕事はみんな誰にも言わず、自分でやっています。他人に教えるわけがありません。

 ネット詐欺を仕掛ける場合、LINEに誘導することが多いので、その点でも気付くことができます。また、文章が流暢だから安心というわけではありませんが、機械翻訳の時点で危険を感じてください。万が一トラブルになったときに、海外の相手を追い詰めることはとても困難です。取引相手の企業について情報をしっかりと確認できないなら、手を出さない方が良いでしょう。

 次に、業務内容ですが、今回はステマの手伝いです。嘘の口コミはNGなのでそもそも手を出してはいけません。最後に、絶対に立て替えなどはしてはいけません。相手の身元も分かっておらず、怪しい仕事を手伝い、先にお金を渡してしまったら、もう取り返すことはほぼ無理です。

 今回の件も事例を知っていれば、最初から連絡せず、被害を回避できた可能性が高いです。ぜひ、SNSの詐欺広告や副業詐欺といった手口がまん延し、大きな被害が出ていることを周りの人たちと共有してください。デジタルリテラシーを高め、ネット詐欺から身を守りましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

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高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと