被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

求められる“親子での対策”

小学生にも忍び寄るネットのリスク、被害回避の鍵は「親のデジタルリテラシー向上と家族会議」

川崎市高津区の下作延小学校にて開催された「小学生向けITセミナー」の様子

 サイバーセーフティブランド「ノートン」が6月22日、川崎市高津区の下作延小学校にて「小学生向けITセミナー」を開催しました。今回は、その講師を務めた株式会社ノートンライフロックの櫻井理沙氏(SNS・PR担当)にお話を伺いながら、子供を狙ったネット犯罪に関する最新情報をご紹介します。

株式会社ノートンライフロックの櫻井理沙氏(SNS・PR担当)に、SNS犯罪から子供を守るために求められる“親子での対策”を聞きました

 警察庁によると、SNSで犯罪に巻き込まれて被害に遭った小学生は、2014年は38人でしたが、2023年には139人へと増えています。学生全体では横ばいか減少傾向にあるのですが、小学生は一貫して増え続けており、2023年に過去最高を記録しています。

 「SNSを使い始めるのは何年生くらいだと思いますか? 下作延小学校にてアンケートを取ったところ、親御さんの回答で一番多かったのが5年生でした。しかし、子供の回答では小学校1年生が24.2%で最多です。次いで、3年生が17.5%となっているのです。親子でSNSに対する意識が乖離していることが分かります。」(櫻井氏)

 そもそも、スマートフォンを持っている小学生の割合も高く、アンケート結果では75%を超えていたそうです。全国を対象とした調査ではもう少し低いものの、年を追うごとに所有率は高くなってきています。

子供は親が思っているより早くからSNSを使っています。

 SNSで被害に遭った児童のうち74.2%が、自分からSNSに投稿した内容が発端となっていました。それを見た人がプロフィールを見て小学生と見抜き、声をかけてくるのです。最初は丁寧に会話を続け、徐々に信頼されるようにします。場合によっては、小学生を装うこともあります。そのうえで、個人情報を聞き出したり、プライベートな写真を送ってもらったりするのです。

 通っている小学校の名前を聞き出せれば、ネットで検索すると意外と関連する写真が見つかります。あるいは他のSNSで検索することで、本名を突き止められてしまうこともあります。何気ない写真でも、場所を特定されてしまうケースも頻繁に起きています。一見、手掛かりのない写真でも、PCで拡大することで瞳に移った建物から撮影場所を割り出されたこともあるのです。

 個人情報が手に入ると、X(旧Twitter)やInstagramなどのアカウントを匿名で使っている小学生に対し、「身元をばらすぞ」と脅迫することがあります。嫌なら、わいせつな写真を自撮りして送るように指示したり、電子マネーを要求したりするそうです。

 オンラインゲームも接点になることがあります。ゲームをしながら、チャットやボイスチャットでコミュニケーションを取ることで仲良くなってしまうのです。過去には、ゲームで知り合った小学4年生の女の子が中年男性の家に連れ込まれてしまうという事件も発生し、犯人が逮捕されています。

SNSの情報や写真から個人情報が特定されてしまう可能性があります

 家族や友人と連絡手段としてよく使うツールは、LINEが最多で62.4%となっています。親としてもLINEの使い方は注意する必要があるでしょう。電話が55%、メールが34.2%と高めなのは、小学生には機能を制限したキッズケータイを持たせている家庭が多いためです。LINEなどのアプリが使えず、基本機能で親と連絡を取るのが目的です。

 「ただし、LINEだけを使っているというわけでもないのです。アンケートによると、XやTikTok、Instagramなどで連絡を取っている子供もいるのです。これは親御さんも知っておいた方がよいと思います。」(櫻井氏)

 1日のスマートフォンの利用時間のアンケートを取ったところ、10分未満が22.8%で最多なのは健全でホッとするところですが、なんとそれに次いで3時間以上が20.8%という結果になりました。3時間もあれば、LINEなどのSNSを使い、他人とがっつりとやり取りができてしまいます。

家族や友人と連絡する際に使うツールについてのアンケート結果
1日のスマートフォンの利用時間についてのアンケート結果

 子供がSNSを介して被害に遭ってしまわないために、家族会議でルールを作っておくことが重要です。しかし現実は、スマートフォンの利用時間を決めていない家庭が75%もあるそう。例えば、利用時間は1日1時間とか、使っていいアプリを決める、他人とはSNSで会話してはいけない、といったルールを話し合うべきでしょう。

 約束を破ったら1週間スマートフォン禁止など、厳しめのペナルティを課すのもありです。また、この家族会議は定期的に行う必要もあります。スマートフォンのペアレンタルコントロール機能を使えば、利用できるアプリを制限したり、検索したキーワードを確認したりできるので、親もデジタルリテラシーを身に付ける必要があります。

 「女の子がSNSで脅されて裸の写真を送らされているときに、家族会議を開催していれば早い段階で悩みを打ち明けてもらえるかもしれません。きっかけがなければ、犯人に脅されたまま、ずっと裸の写真を送り続けてしまう可能性もあります。」(櫻井氏)

家族会議で話し合う項目の例

 子供がSNSを使い始める時期が低年齢化していること、子供のネット犯罪被害が増加していることを受け、ノートンライフロックが企画した「小学生向けITセミナー」。開催するのは今回の下作延小学校が初めてだったそうですが、同社では今後も各地で開催することで、親子のITリテラシー強化とネット犯罪に対する危機感の底上げを図っていきたいとしています。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと