被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

起きてもいないのに?「南海トラフ地震災害義援金」の募集メールが来た

社会的ニュースに便乗してくる詐欺に注意。新紙幣発行に絡めた手口も

銀行口座情報を記載した義援金詐欺メール

 8月8日、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されました。連日ニュースで取り上げられていたので、耳にした人も多いでしょう。そして、このような大きなニュースがあったときには、便乗したネット詐欺も登場します。

 8月10日、私たちNPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)のメールアドレスに、「【義援金受付】2024年 南海トラフ地震災害義援金について」という件名のメールが届きました。「このたびの、2024年 南海トラフ地震により被害にあわれた皆様に謹んでお見舞い申しあげますとともに、被災地の一日も早い復旧を、心よりお祈り申しあげます」と書かれていますが、南海トラフ地震は起きていません。

 「日本国際緊急援助委員会」という組織名を名乗り、義援金を募集しており、もちろん明らかなネット詐欺です。「【お申し込み方法】クレジットカード決済によるオンライン募金」と記載しているのに、クレジットカード決済用のリンクはなく、銀行の口座番号情報が書かれていました。義援金を募集しているのは日本国際緊急援助委員会のはずなのに、銀行口座名義が個人名になっており、ネット詐欺確定です。

 ちなみに、この個人名が詐欺師の名前というわけではありません。銀行口座を開設する闇バイトなどで募集し、買い取った口座が使われています。銀行口座の売買は犯罪です。口座を売る側も罪に問われるので、絶対に手を出さないようにしてください。

「えきねっと」を偽装したフィッシングサイトへ誘導するメール

 8月16日には、JR東日本の「えきねっと」を偽装したメールが届きました。本文には、えきねっとのリニューアルに従い、一定期間ログインのないアカウントの退会処理を行うと書かれています。メール内のリンクをクリックすると、えきねっとのウェブサイトに似せたフィッシングサイトが表示されます。このメールには、南海トラフ地震臨時情報を受けた運行計画に関する情報も記載されており、鉄道事業者からのメールとして本物っぽく見せようとしていました。

 筆者のところには届きませんでしたが、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)または台風5号接近情報を受けて、鉄道でのご旅行のキャンセルを検討しているお客様へご案内いたします」といった文面でも同様の詐欺メールが出回っているようです。こちらも同じく、えきねっとのウェブサイトに似せたフィッシングサイトに誘導されます。

 いずれも手垢のついた手口で、ほとんどの人はだまされないと思います。しかし、1000人に1人でも、1万人に1人でも引っ掛かってくれれば、詐欺師としては儲けものなのです。寝ぼけていたり、お酒に酔っていたりして、ふと信じてしまう可能性もあります。こうした手口の詐欺が発生しているということを知っておくことで、だまされる可能性をゼロに近くできます。

 ちなみに、ネット詐欺ではなく電話による詐欺ですが、7月から発行された新紙幣に関しても便乗した詐欺が発生しているようです。例えば、「従来の紙幣が使えなくなります」「旧紙幣を新紙幣に交換します」と言ってきたり、「国の施策で調査をしているので、モニターとしてATM操作に協力してください」などと持ち掛けてくるようです。旧紙幣はまだ問題なく使えます。

警視庁特殊詐欺対策本部が公開している新紙幣詐欺の注意喚起パンフレットです

 この記事を今読んでいる読者であれば引っ掛からないと思いますが、シニア層などは注意が必要です。ぜひ、ご両親などに情報を伝え、デジタルリテラシーを共有してください。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと