イベントレポート

CEATEC 2023

視力によらず映像のピントが合う「直接網膜投影方式」のAR/VRグラスを展示するTDK

網膜に直接投影するからメガネがなくてもピントが合う!!

TDKの展示した直接網膜投影方式のARグラス

 10月17日~20日に幕張メッセで「CEATEC 2023」が開催中だ。その中でTDKは、同社製のフルカラーレーザーモジュールを活用した直接網膜投影方式のAR/VRグラスを展示していた。

展示ホールの「キーデバイス」エリアに設置されたTDKブース

 Beyond 5G、IoT、ロボティクス、AR/VR、メディカル/ヘルスケア、モビリティ、再生可能エネルギーの7分野を「Seven Seas」と位置づけ、長期的な取り組みを続けている同社。当然、展示内容も幅広くカバーしているが、中でもブース通路付近に配置されて来場者の大きな注目を集めていたのが、直接網膜投影方式のAR/VRグラスだ。同社が直接網膜投影方式のグラスをCEATECに出展するのは、昨年に引き続き2度目となる。

映像を網膜に直接投影し、視力によらずピントの合った映像を視聴できる

 現在実用化されている多くのAR/VRグラスは、いずれもヘッドセットやグラス上のレンズに映像を投射して小型ディスプレイとし、それを間接的に視聴するものが主流。直接網膜投影方式は、その名の通り網膜上に微弱なレーザー光を直接投影することで、近視や遠視を問わずピントの合うフォーカスフリーを実現しているのが特徴だ。

左側面に光学モジュールを内蔵。目の正面でレーザー光を反射させ、網膜に光を投射している

 特にVRゴーグルなどでは、視力によって眼鏡やコンタクトレンズがなければ映像がぼやけて見えない場合があるのは周知の通り。直接網膜投影方式であれば、多くの人が視力によらず裸眼でコンテンツを楽しめるようになるのが大きなメリットと言える。自発的にフォーカスを合わせようとする必要もないため、既存のARグラスの着用時のように、映像部分にフォーカスを合わせた結果それ以外の視界がぼやけてしまうといったデメリットも回避できる。

 デモンストレーション用のグラスは、レーザー光ソリューションを得意とするQD LaserやメガネフレームメーカーのCHARMANTとの共同開発。TDKのレーザーモジュールは、一般的な空間光学モジュールと比較して体積比で約10分の1と非常に小型であり、これによりモジュール一体型のグラスを実現している。現在は実用化に向けて改良を続けている段階とのことで、担当者曰く「2025年頃までに製品化を目指している」という。

 今回のARグラスで投影される映像の解像度は720p(HD)で、リフレッシュレートは60Hz。実際に2つほど映像を視聴したが、HD画質由来の粗さはあるものの、最初から最後までしっかりと鮮明な映像を見ることができた。モジュール部分の発熱が大きかった点は気になるが、こちらは現在改善に取り組んでいるそうだ。

ARグラスの紹介エリア。左側のARグラス近くに置かれているのはレーザー光モジュールのモックアップだ

 同じエリアに設置されたVRグラスは、本来1080p(フルHD)で映像を投影できるそうなのだが、機材の都合でARグラスと同じ720pでのデモンストレーションを実施していた。こちらはさらに発熱が大きいようで、外側から2基のファンで絶えず冷却していたのが印象的だった。

VRグラス。本来1080pで映像投影が可能だが、体験時は機材の都合によりHD画質で映像が投影されていた
左右のレンズホールを移動させ、網膜に直接映像を投影できるよう調整する必要がある。こちらも発熱の処理に苦慮しているようで、すぐ横に冷却用のファンが用意されていた

 実際に製品として流通させるには課題もありそうなものの、利便性が極めて高いことから、将来的にはAR/VRデバイスの主流となる可能性も大いにある。明日以降来場される方は、試してみてはいかがだろうか。