インタビュー

20周年を迎えたCEATEC、今年のテーマを聞いてみた

エグゼクティブプロデューサーに聞く「20周年に目指すもの」

 CEATEC 実施協議会は、2019年9月24日、大阪・西天満のDK会館において、CEATEC 2019に関する説明を行った。

 CEATEC 実施協議会は、CEATEC 2019を開催する一般社団法人電子情報技術産業協会、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会の3団体で構成する組織。CEATEC 2019は、2019年10月15日~18日までの4日間、千葉県千葉市の幕張メッセで開催される予定だ。テーマは、「つながる社会、共創する未来」。入場は無料だが、全来場者登録入場制としており、すでに、公式Webサイトで事前の入場登録を開始している。

 開催まで約3週間となったことで、9月20日に開催した東京での説明会に続き、大阪においても説明を行うことで、CEATEC 2019の内容を広く告知するとともに、関西エリアの企業の出展内容の紹介、関西エリアからの集客を図る狙いがある。会場には約10社の出展企業が参加し、展示内容などについて個別に説明を行った。

 関西に本社を持つ企業では、第1回目から19年連続で出展していたパナソニックが初めて出展を取りやめたほか、シャープが出展規模を縮小。しかし、その一方、主催者企画展示エリアである「Society 5.0 TOWN」には、関西電力および大阪ガスが初めて出展。さらに、デバイス&テクノロジーエリアでは、村田製作所や京セラ、ロームなどの関西エリアのデバイスメーカーが相次いで出展する。

今年のCEATECは「毎日が見どころアリ」?開催日ごとのテーマも設定「5G」「AI」「モビリティ」

CEATEC実施協議会 エグゼクティブプロデューサー 鹿野清氏

 CEATEC実施協議会 エグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏は、「展示を見て、コンファレンスを聴いて、未来の社会を感じて、考えて、共創に向けて動き出してもらいたい。それをCEATEC体験と呼んでいる。CEATEC全体を、産業界のオープンキャンパスに見立て、CPS/IoTなどのテクノロジーを活用した未来を発信する『Society 5.0の総合展』となる。今年は20周年の節目であり、20年連続で出展した企業を表彰する予定である。20年連続で出展している企業には部品メーカーが多く、関西の企業も多い」などとした。

 なお、現時点で見込んでいる出展者数は750社/団体、出展小間数は2000小間以上、来場者数は16万人以上。前年に比べて1ホール増となる7ホールを使用。これまではホールごとにテーマを決めていたが、全ホールを横串とする形でレイアウトを行い、それぞれのテーマごとに中央通路を設けて展示を見やすいようにしている。2018年の実績は、出展者数725社/団体、来場者数15万6063人であり、それを超える規模を目指す。

 CEATEC実施協議会 エグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏は、本誌の取材に答え、次のように話している。

――今年のCEATEC 2019の大きな変化点はなんですか。

[鹿野氏] 2016年に、脱・家電見本市を宣言し、「CPS/IoTの総合展」へとシフトしてきたわけですが、今年も「つながる社会、共創する未来」をテーマに開催し、日本が目指す超スマート社会である「Society 5.0」の姿を示す展示会と位置づけています。

 今回は、20周年という節目も迎えますが、これまでの「CEATEC JAPAN」という名称から「JAPAN」を外し、日本の企業だけのイベントではなく、グローバルに向けて発信するイベントであることを新たに示しました。ただ、まだまだ海外からの出展社数は少なく、海外からの来場者数も増やしていかなくてはなりません。20周年の節目に、次のステップに向けた新たな姿勢を明確に打ち出した、と考えていただければと思います。

 展示スペースのレイアウト、という意味では、展示スペースの配置を見直し、「特定ホールに来場者が集中しやすくなる」という状況をさけるかたちにしました。具体的には、ホールを横に横断する形で3つのエリアに区分けし、横方向に分割するレイアウトを新たに採用しました。各エリアには中央に大きな通りを用意し、これを歩くことですべての展示を見ることができます。

 さらに、これまでは基調講演が初日に集中していましたが、今年は毎日、基調講演を行うほか、会期2日目を「5G Summit」、3日目が「AI Summit」、4日目は「Mobility Summit」というようにテーマを設定し、複数のキーマンが登場するサミットを開催することにしました。これもテーマに沿って、目的にあわせた日に来場していただくことや、最終日に集中しがちな状況を分散させて、ゆっくり見ていただくことを狙っています。

――CEATECは、首都圏からの集客が中心になっており、関西をはじめとした首都圏以外からの集客が課題となっています。

[鹿野氏] これまでも地方自治体との連携は取ってきましたが、かつての出展目的はその多くが企業誘致でした。しかし、最近のCEATECは、そうした内容ではあわなくなってきたのも事実です。

 今年は、最終日(18日)の基調講演に、広島県の湯﨑英彦知事の登壇が予定されており、ここでは広島県が取り組むデジタライゼーションがテーマになっています。また、札幌、仙台、神戸、広島、福岡といった自治体が、行政のデジタライゼーションへの取り組みやスタートアップ支援について公開します。

 このように、新たなCEATECに対して、自治体の方々が形を変えて出ていただくことが少しずつ増えてきました。一方、Co-Creation PARKには、スタートアップ企業が出展するStartup Universityのエリアを設けており、ここに地方のスタートアップ企業に出展いただています。まずは首都圏以外からの出展を増やし、それに伴って、首都圏以外からの来場者も増やしたいと思っています。

「今年は多くの学生に来場してほしい」理工系だけでなく、文系も……

――今年は自動車関連企業の出展がありません。

[鹿野氏]

 今年はCEATECの1週間後に東京モーターショーの開催が控えている影響が大きいと思います。とはいえ、自動車に関する企画がないわけではありません。特別企画として、「スマートモビリティイノベーション企画」を実施し、幕張新都心の公道で来場者を乗せた自動運転の実証実験を行います。

 幕張メッセと海浜幕張駅を周る約1500mのコースを、時速18kmで、約15分で周回します。ただ、これも、「CEATECで自動走行をやった」というだけで終わってしまっては意味がありません。これがMaaSにどうつながっていくのか。来年への布石として、それを体験していただきたいと思っています。自動走行を見せるためにやっている企画ではないのです。

 会期4日目に開催するサミットのテーマは、「Mobility Summit」です。ここでは、MaaSという観点から、大手企業、スタートアップ企業、自治体など連携して、どんなことが起きるのかということを感じていただけると思います。

――今年のCEATECで力を入れている部分はどこですか。

[鹿野氏] 今年は多くの学生に来場してほしいですね。しかも、理工系の学生だけでなく、文系の学生にも来場してもらいたいと考えています。AIやIoTといった新たなテクノロジーは、社会を変えるトリガーになります。それを知ることは、理系も文系も関係ありません。

 CEATEC 2019では、学生に向けた新たな企画を用意しました。「CEATEC Student Lounge(学生交流ラウンジ)」がそれで、学生の方々に集まっていただく場として提供するとともに、村田製作所の村田恒夫会長兼社長をはじめとする企業トップらに、学生向けにスピーチしてもらう予定になっています。学生が新たなテクノロジーに触れてもらえる機会になると思います。日本は、テクノロジーで社会を変えることに対して、グローバルに比べて意識が低いというデータがあります。テクノロジーをうまく活用して、新たな社会を作っていくという意識が高まるきっかけになるといいですね。今年は、1万人の学生に来場してもらいたいと思っています。

――昨年、異業種の出展で注目を集めたIoT TOWNは、今年は「Society 5.0 TOWN」になりました。

[鹿野氏] 「Society 5.0 TOWN」は、金融、製造、流通など幅広い業種から、24社/団体が参画し、2030年の未来の「まち」で、実現が見込まれる多様なサービスを披露します。ANAホールディングス、大阪ガス、大林組、関西電力、清水建設、JapanTaxi、大成建設、大日本印刷、戸田建設などが初参加となります。また、企業同士の共創事例を発信する「共創ゾーン」を初めて設け、従来の個社ごとの展示だけに留まらない新たなスタイルにも挑戦します。

「展示会だけに留まらないCEATECを展開していきたい」

――CEATECにとっての課題とはなんでしょうか。

[鹿野氏] 今年も新たな企業が数多く出展していますが、その一方で、これまで出展していた企業が出展を取りやめるといったことが起きています。CEATECが変化するなかで、持続性や継続性をどうするかといったことは課題だといえます。ただ、いまはまだ変化のなかにありますから、そこは割り切っていくという捉え方も必要かもしれません。

 2018年には、初めて「Global Symposium」を開催し、これを完全招待制として、約250人の経営トップの方々に集まっていただきました。今年は「Global Symposium」の開催はありませんが、今後は、このシンポジウムをCEATECの会期中にこだわらずに開催するといったことも視野に入れていきたいと思っています。

 年に1回だけ、CEATECを開催するのではなく、こうした「Global Symposium」の開催などを通じて、年に複数回のイベントとすることや、展示会に留まらず、「共創」というテーマにあったコンファレンスやシンポジウムを期間外に開催することで、「CEATEC=展示会」という考え方から脱却することも考えていきたいと思っています。展示がなくても、コンファレンスに出てもらうということでもいいですし、CEATECを複合的に見せることや、出展がすべてであるという考え方もなくしたいですね。これは、2020年以降の新たなテーマとして取り組んでいきたいと思っています。