インタビュー

シャープの家電は50万台がネットにつながって動作中!スマートライフを目指し「ネット接続率6割」の知見を他社にも提供

CEATEC「スマートライフ企画展」の出展詳細を聞いてみた

 AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)」を組み合わせた「COCORO+(ココロプラス)家電」というコンセプトを打ち出し、数多くのAIoT(※1)家電を生み出してきたシャープは2019年10月1日、100%子会社として(株)SHARP COCORO LIFE(以下、シャープ・ココロ・ライフ)と(株)AIoTクラウド(以下、AIoTクラウド)の2社を設立した。

 シャープ・ココロ・ライフ社はIoT家電における課金サービスの創出などに取り組む。一方、AIoTクラウド社はCOCORO+家電で培ったAIoT家電のノウハウをプラットフォームも含めて他社に提供していく。

 ここでは、CEATEC「スマートライフ企画展」のシャープブースに参画するAIoTクラウド 取締役副社長の白石奈緒樹氏に、出展の狙いや今後の展望などについて聞いた。

※1 AIoT「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」と「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」を組み合わせてシャープが作った言葉。

シャープの家電とKDDI、セコムとの連携、実際のサービスをブースで体験できる

──今回、「CEATEC」の「スマートライフ企画展」に出展されることになりましたが、その狙いはどのようなところにあるのでしょうか。

IoTクラウド 取締役副社長 白石奈緒樹氏

[白石氏]
 最近は「スマートライフ」の実現に向けてネットワーク家電が広がってきています。

 昨年のCEATEC JAPANでは今ひとつ「スマートライフはこういう風に形作られる」というビジョンがなかなか出せなかったのが反省点でした。そこで今回は、実際に機器と家庭の方が受けられるリアルなサービスを組み合わせて、かつブースの中で一緒に展示するということを実現しました。

 これからのネットワーク家電が持つ情報が別の企業のサービスにも活用できることを、来場される方々にはぜひ見て、感じていただきたいなと思っています。

──具体的にはどういったことが会場で体験できるのでしょうか。

[白石氏] 例えば、協業させていただくセコム様、KDDI様と一緒に、ご両親の家庭やお子様の見守りを行うサービス内容を展示しています。各社が提供されているサービスについて今回のネットワーク家電を使うことでより詳しく見守りができるようになるということを実感できる展示になっています。

 もともとシャープでは「AIoT(AI+IoT)製品」を打ち出していました。これまでクラウド側でコンピューティングパワーを駆使し、それを家電製品の機能・性能にフィードバックして、さらに付加価値をつけることをアピールしてきたのです。

 今年はそれに加えて、私たち自身も家電製品そのものの機能・性能の向上だけでなく、例えば見守り機能の搭載や、あるいは別のところにお知らせをするような横への広がりもできるようにしておりますので、それもご紹介していきます。

新開発の90V型シースルーディスプレイを使った“AR(拡張現実)”的な展示も用意

──そうした新たな取り組みについて、展示ではどのような工夫がなされているのでしょうか。

[白石氏] ネットワーク家電の機能をお伝えすることはなかなか難しいことです。そこで今回、当社が開発した90インチ透過液晶ディスプレイを使い、製品の上に情報を重ね合わせて見えるようにしました。情報の動きをビジュアル化することで、来場者の皆様に機能の良さをわかりやすくお伝えする工夫をしています。

 また、AIoT家電をわかりやすく見ていただくためにも、まずは自分たちで使ってみようと考えて作った展示もさせていただきます。

 透過型液晶は画面に情報を表示したり、後ろにあるものを見せないようにしたりできるのですが、後ろの製品を見せながら、その上の情報がクラウドを通ってどのように加工されたらサービスと連携するのかということを、見て理解していただけるようにするのにかなり苦労しました。

 実際の製品とバーチャルのデータの動きを重ね合わせて見せるAR(拡張現実)の展示もありますので、これはぜひご期待いただきたいです。

スマートライフを実現するAIoTのソリューション「多くの企業に関心を持っていただきたい」

──どのような方にブースを訪れてほしいと考えていますか?

[白石氏]
 CEATECの来場者はB2CとB2Bが混在しており、一般の来場者の方だけでなく、企業の方が商材を探しにくるという面も強くなっていると思います。その両方に見ていただきたいと思っています。また、先程ご紹介したネットワーク家電、AIoT家電の取り組みについては、特にコンシューマーの方々に知っていただきたいですね。

 一方で、スマートライフを実現するためには、シャープだけが頑張っていてもダメです。家の中にはいろいろな機器がありますので、これらをより多くネットワーク化していくほどスマートライフを実現しやすくなります。そのためには、他の企業の方々にもAIoTソリューションを提供することが必要になります。

 もともと、我々は社内の各事業部に対してAIoTのソリューションを提供してきましたが、今後は他社に向けてこれまで我々が開発してきたソリューションを提供したいと考えています。そのための展示も用意しています。

 B2Bのお客様もたくさんいらっしゃいますので、その方々には「我々のAIoTソリューションを活用しませんか」とお伝えしたいと思っています。

スタートアップ企業も含めた企業同士の共創への期待

──出展を通じて、どのような効果を期待していらっしゃいますか。

[白石氏]
 繰り返しになりますが、ネットワーク化されている家電製品と、その情報を活用したサービスが出てきたということを、まずは見ていただきたいです。その上で、ネットワーク家電がどのようなことまでできるようになったのか、それが他の製品に広がっていく可能性が出てきたということを知っていただけたら、出展した意味があると思います。

 これまでにも、「そういう取り組みをされているのならうちのこれを活用できませんか?」「うちのこの製品とつないでみませんか?」といったお話は、たくさんの企業様からいただきました。今回の出展でも、そういった具体的なお話ができることを期待しています。

 製品だけを紹介していると、なかなかそうならないのですが、その中の技術やプラットフォームの紹介をしていると、クラウドを手がけられている企業とも同業者として話が合うのではないかと思います。また、部品企業にとってはコンペティターなのか仲間なのか、といったことを確認するため話をしに来られることもあるでしょう。

──ブース内のカンファレンスではどのようなことをされるのでしょうか。

[白石氏]
 基本的には展示している商材についてさまざまな解説をしたいと思っています。昨年もブース内にあの小さなカンファレンスコーナーでそれぞれの技術や商材を紹介しましたが、通路に人が溢れるほどの盛況でした。今年もいろいろなことをお伝えして盛り上げていきたいですね。

シャープブースのイメージ

 今年、来場者の方にお伝えするために考えていることは4つです。1つはAIoT製品の紹介。2つめがAIoTプラットフォームの紹介。3つめが経済産業省の「LIFE UPプロモーション」のご説明です。4つめは今回協業するKDDI様、セコム様から説明していただく予定です。

──今回のCEATECに向けた意気込みをお聞かせください。

[白石氏]
 我々AIoTクラウドは2019年10月にシャープから子会社として分社化したばかり。すぐに、これだけ大々的な展示会に参加できるのはとてもありがたいことです。スマートライフという、企画展示の内容に合った取り組みをしていますし、経済産業省が推進する「LIFE UPプロモーション」のキャンペーンによる後押しもありますので、またとない機会になってくれるのではないかと期待しています。

 できるだけ多くの方にAIoT家電の良さを分かっていただくのと同時に、「そういう時代が来ている」ことを知っていただきたいです。さらに、そのようなスマートライフの実現に向けて他社の製品も含めたAIoTを推進するシャープの子会社として、当社が設立されたことを多くの方に知ってもらえたらうれしいです。

50万台以上のAIoT家電がアクティブにネット接続テレビまで入れれば数百万台

──分社化して誕生したAIoTクラウドでは、今後どのようなことを他の企業に提供できるのか、もう少しお話いただけますか。

[白石氏] AIoTクラウドが提供するサービスと他のプラットフォーマーとの決定的な違いは、我々は基本的にそのメーカーがIoT化していくことを手助けするということです。

 例えばそのメーカーが製品からのデータをクラウドに上げるのであれば、基本的にシャープで情報そのものを扱うことはありません。あくまでもその企業が意図するプラットフォームを構築するためにソリューションを提供するという考え方です。

 我々の強みは、日本市場の中でAIoT家電としてアクティブに動いているシャープ製品がすでに50万台を超えるという実績を持っていることです。50万台というのはアクティブにネットワークに接続している家電の数で、販売数で言えばもっと多くなります。ネットワークテレビを含めると、数百万台に上ります。

 我々はもともとメーカーですから、どのような商品であっても価値を高めていかなければお客様に選んでもらえないことを理解しています。そのため、実際に具現化するための道具立てというのを持っています。企業のお客様が提供する機器がどのような価値を生み出せるかも、ご要望があればさまざまなご提案ができると思います。

ヘルシオ ホットクックのネット接続率はなんと6割!「ちょっとつないでみよう」と思える知見を「AIoTクラウド」で他社にも

──「COCORO+家電」というAIoT家電のアクティブな台数が50万台以上ということですが、ネットワーク接続率はどのくらいなのでしょうか。

[白石氏]
 一般的にネットワーク家電というと、その製品の中で1割が接続されれば優等生と言われていますが、シャープのネットワーク家電はだいたい4割ぐらいです。当然ネットワークに接続されるVODを見られるテレビの場合、7割5分ぐらいです。(調理家電の)「ヘルシオ ホットクック」の場合、なんと約6割がネットワークに接続されています。

 ホットクックをネットにつなげると、新しい料理のレシピをダウンロードできます。ネットにつなげずに使うと、ホットクックが音声で「ネットにつなぐと、新しいメニューがダウンロードできるよ」といった感じでしゃべるのです。

COCORO KITCHENの模様

 使っていると、ちょくちょく話しかけてくるので、じゃあ「つないでみよう」という気持ちになるのです。つなごうとすると、「無線ボタンを押して」とか「ルーター側の方の接続ボタンを押して」など手順を声でお知らせして、接続したら「ありがとう!」と返してくれる仕組みになっています。

 つないだだけでは、私たちとしては顧客が誰なのか分かりません。ただ、製造番号から「XXXXXXXX番のホットクックがネットにつながっている」ことが分かるだけです。ある意味ネットワークの社会で企業としてビジネスしていくのには、すごく中途半端な状態です。

 そこで、スマートフォンアプリと連携する次のステップが必要になるわけです。つなげていると、あるとき「スマートフォンでメニューを選ぶこともできるよ」と言ってくる。ではどうすればいいのかたずねると、最新機種の場合は画面にQRコードを表示して「スマートフォンアプリをつなげられます」、と説明をしてくれます。

 スマートフォンアプリがつながったら、今度はメールアドレスなどを入れていただくことで、ホットクックとスマートフォンとを結びつけます。こういうやり方によって、接続率6割を達成しました。

 いまではホットクックなどで得られた知見をベースに、他の家電メーカーにもAIoTソリューションを提供することができるようになりました。

──シャープ自身がクラウドベースのAIoTプラットフォームを持たれています。今後、自社の製品をAIoT化することに加えて、プラットフォームやサービスのバックエンドシステムとのつなぎ込みまで提供されるという理解でいいのでしょうか。

[白石氏] その通りです。実際、そのようなメーカーからのお声掛けはたくさんいただいています。最近は「スマートライフの枠組みの中に入りたい」という企業が多くなっている印象があります。我々はさまざまな方々と協力して、IoT化を促進していきたいと考えております。

 企業のお客様はもともとメーカーであることが多いので、本来のものづくり自体は大変高いレベルで理解されていますが、1社たりとも同じ状況のところはありません。私共は、どの企業様でもなるべく早くスマートライフへの対応ができるように、できる限り協力させていただきたいと考えております。