特集

住民税はどうやって決まる? その計算方法とは

~難解な住民税を詳しく解説、秀逸な計算ツールも紹介~

最終更新 2020年6月22日 17:10
初出日時 2018年6月27日 17:05

 新型コロナウイルスの影響で、一部の人は税金の徴収が猶予されているが、4月の固定資産税、5月の自動車税に続き、6月は「住民税の通知書」が届く時期だ。サラリーマンは6月の給与明細に通知書が同封されているはずだ。毎月の給与明細を並べて見ると、毎月同額の住民税が6月だけ異なっている人も多いと思われる。天引きされている税額を見ると所得税より住民税の税負担が多い人もいるだろう。個人事業主は6月上旬に住民税の通知を受け取り、6月末日までに納税しなければならない。

 住民税(の所得割額)は保育園費用や国民健康保険料(以下、国保)などの算定に利用される。保育園費用や国保は、住む地域で算出方法が異なるので、その額を知るには自分(または世帯)の住民税を算出しなければならないが、住民税は分かりにくく、その計算は難易度が高い。今回は、よく分からない住民税について説明をしよう。簡単に住民税を計算するツールも紹介したい。

筆者に送られてきた住民税の通知書

 住民税はザックリ説明すると「課税所得の10%くらい」。ところがご自身の源泉徴収票を見ながら、自力で住民税を正確に計算しようと思うとかなり面倒くさい。この記事では計算方法を紹介するが、細かなところは読み飛ばしていただいて結構。「住民税は分かりにくい」というコラムも読み飛ばしていただいて結構。概要を把握して「複雑な計算の結果、課税所得の10%くらい」と理解してもらえばよいと思っている。

住民税が安い都市は?

 皆さんは「○○市は住民税が安い」と聞いたことはないだろうか。もっと具体的に「愛知県豊田市はトヨタがいるから住民税が安い」とまことしやかに言う人もいる。サラリーマン時代の筆者は税に興味はなかったので「へぇ~そうなんだ」と思っていた。

 これは都市伝説みたいなもので、住民税はほぼ全国一律だ。東京都千代田区の住民税の税率は10%。人気の吉祥寺(東京都武蔵野市)に住んでも10%。荒川を隔てて東京都と接する埼玉県川口市に住んでも10%。筆者が先日訪れた人口2000人ほどの岐阜県東白川村に住んでも10%。もちろん豊田市も10%だ。ただし、税率に差はなくても税収の多い自治体は住民サービスが充実している可能性は高い。

人口2000人の岐阜県東白川村で有名なのはツチノコと鮎釣り。村に住んでも住民税の税率は10%

 筆者は住民税に地域差があるという話を2度聞いたことがある。記憶が正しければサラリーマン時代の三十代に1度、起業後の四十代に1度。高校生や大学生が住民税の話をすることはないと思われるし、若いころに住民税の話をした記憶もない。年齢を重ねた人ほど「住民税に地域差がある」と聞く機会が多くなるのであろう。この記事に対するコメントを見ると「聞いたことがある」が多めで、「聞いたことがない」は少なめな印象だ。この都市伝説の要因は国保だと思われる。国保は自治体により計算式が異なり地域差も大きい。このことが住民税と勘違いされていると思われる。国保に加入する多くの人は自営業なので、サラリーマンはどこに住んでも住民税はほぼ同じだ。

 住民税の地域差の話を直接聞いたのは2度だが、テレビ番組でこの話題を耳にしたのは2019年12月22日放送の「噂の!東京マガジン」。人口の東京一極集中を避けるために東京税の導入はありか、という話題で出演者が「東京ってもともと住民税自体高いですよね」と発言し、他の出演者も賛同。人はこうした機会を経て「住民税は地域によって差がある」と思い込んでしまうのだろう。

筆者の手元にある、鈴木直道氏の夕張市長時代の著書

 住民税の税率は一部に例外があり、神奈川県だけは県民税が0.025%高く、神奈川県民の住民税は10.025%。名古屋市の市民税は0.3%低く、名古屋市民の住民税は9.7%となっているが、全国的に見れば税率が異なるのはごく一部であり、住居を移しても住民税の額が何割も増減することはない。かつて全国一住民税が高いと言われたのは財政破綻した夕張市だったが、財政再生計画の見直しにより10.5%だった税率を現在は10%に戻している。これは全国最年少で市長となった鈴木直道氏の手腕によるものと思われる。素晴らしい。ちなみに鈴木直道氏は2019年4月に北海道知事に当選した。現在39歳、全国一若いイケメン知事だ。ちなみに2番目に若い知事は今や時の人となった大阪府の吉村洋文知事(45歳)。2人のイケメン知事の今後に期待したい。

 税率以外の地域差については別項で説明したい。

住民税は分かりにくい その1:税率が異なる

住民税の税率は神奈川県や名古屋市のような例外があり、一律ではない。全国には1700ほどの自治体があるので、全ての自治体の住民税を把握するのは困難だ。加えて平成30年(2018年)から政令指定都市(地方自治法では指定都市)20市は市民税と県民税の税率の比率を6対4から8対2に変更した。従来の市民税の税率が6%から8%になり、道府県民税の税率が4%から2%となっている。

住民税の計算方法を理解する前に、所得税を理解したい

 住民税の計算方法と所得税の計算方法はかなり似ている。所得税の計算も簡単ではないが、輪を掛けて複雑なのが住民税の計算だ。できれば所得税の概要を理解してから住民税を理解するのが近道だと思う。所得税の計算方法を知るには源泉徴収票の見方を理解するのがお勧めだ。所得税の計算方法を知らない人は、筆者が2019~2020シーズンに執筆した税金に関する以下の記事のうち、4番目の『【図解で説明】源泉徴収票の見方を知ると、税金の仕組みが見えてくる』を一読すると理解しやすいと思われる。

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。

令和元年から改正された、住民税の「所得割額」を計算する

 住民税は「所得割額」と「均等割額」を合算したものが納税額となる。所得割額は個人個人の所得(収入)によって納税額に差があり、多くの人は住民税の大半を所得割額が占めるため、住民税の主役的な存在だ。均等割額は所得に関わらず課税され、同じ自治体に住む納税者が同額を納税する。

 なお、住民税は市町村民税と道府県民税に分かれていて、○○市に住んでいる人は市民税、△△町の人は町民税、北海道の人は道民税、京都府の人は府民税となるが、市町村民税と毎回表記するのは無駄なので、ここでは市民税、県民税で統一したい。適宜、居住する自治体に応じて読み替えていただきたい。

 また、多くの人は市民税の税率が6%、県民税の税率が4%で合算した住民税の税率は10%となるためこれを基本とする。加えて、住民税の計算は同じ計算式で市民税分(6%)、県民税分(4%)を算出して合算する方法が正式となるが、できるだけシンプルな考え方にしたいので、住民税の税率=10%を基本として進めたい。

 まずは、サラリーマンを例に、住民税の主役と言える所得割額から説明していこう。所得割額は以下の計算式で算出できる。所得割は所得税の計算式と全体の流れは似ている。

住民税・所得割額の計算式
所得税の計算式

 所得割と所得税の計算式の1行目[給与の収入金額-給与所得控除=給与所得]は同じだ。2行目の式[給与所得-各種所得控除=課税所得]はほぼ同じだが、各種所得控除の金額が住民税(所得割)と所得税で異なるので注意したい。令和2年(2020年)住民税は令和元年(2019年)分の所得から算出するので、令和元年の所得税との控除額の違いを見てみよう。

控除名住民税の控除額所得税の控除額差額
基礎控除33万円38万円5万円
配偶者控除~33万円~38万円~5万円
配偶者控除(老人)38万円48万円10万円
配偶者特別控除~33万円~38万円~5万円
扶養控除(一般)33万円38万円5万円
扶養控除(特定)45万円63万円18万円
老人扶養控除(同居老親)45万円58万円13万円
老人扶養控除(同居老親等以外)38万円48万円10万円
寡婦・寡夫控除26万円27万円1万円
特別寡婦控除30万円35万円5万円
生命保険料控除:旧~3万5千円~5万円~1万5千円
生命保険料控除:新~2万8千円~4万円~1万2千円
地震保険料控除~2万5千円~5万円~2万5千円

 表のように住民税の控除額は所得税より少ない。控除額が少ない=課税所得が増加=納税額が増加ということだ。代表的な控除を見ると、基礎控除は5万円少なく、扶養控除の一般は5万円、特定(主に大学生)は18万円少ない。扶養控除の住民税と所得税の差異は複雑なので、控除額と年齢の関係は図を参照していただきたい。

 住民税は前年の所得から算出される。前年の所得税が改正されると翌年の住民税に反映される仕組みだ。平成30年(2018年)分の所得税の配偶者控除・配偶者特別控除が改正されたため、令和元年(2019年)の住民税の配偶者(特別)控除が改正となった。現在進行形の令和2年(2020年)から所得税の基礎控除などが改正されたので、来年、令和3年(2021年)の住民税はこれらの税制改正が反映される。

 矢継ぎ早に行われる税制改正の目的は増税で、普通の人には覚えきれない複雑な内容だ。ここでは令和元年から反映された配偶者(特別)控除の改正点について一応説明するが、パッと表を見ても理解するのは困難だと思われるので、スルーして次ぎに進んでいただきたい。

 平成29年分(2017年)までの所得税の配偶者控除は、給与所得者(例えば旦那さん)の所得が300万円でも2000万円でも、所得額に関係なく配偶者(例えば奥さん)の所得が38万円(年収で103万円)以下であれば配偶者控除の額は38万円で固定されていた。平成30年分から配偶者(特別)控除の仕組みが大幅に改正され、かなり複雑となった。大きな変更点は3つ。

  • 旦那さんの所得額により配偶者(特別)控除の額が異なる
  • 旦那さんの所得額が1000万円を超えると配偶者控除が受けられない
  • 奥さんの年収の103万円の壁が150万円に引き上げ

 旦那さんの所得と配偶者控除の控除額は以下の表のようになった。

旦那さんの所得額所得税 配偶者控除の控除額
2017年分 以前
所得税 配偶者控除の控除額
2018年分 以降
900万円以下38万円38万円(変更なし)
900万円超 950万円以下26万円
950万円超 1000万円以下13万円
1000万円超0円

 この所得税の改正にともない、令和元年から住民税の配偶者控除も改正された。サラリーマンの場合、年収1120万円(所得900万円)以下であれば従来と同じだが、年収1120万円(所得900万円)を超えると控除が減り増税となる。

納税者本人の所得給与収入(参考)所得税の控除額住民税の控除額差額
従来制限なし制限なし38万円33万円5万円
改正後900万円以下1120万円以下38万円 33万円5万円
900万円超
950万円以下
1120万円超
1170万円以下
26万円 22万円4万円
950万円超
1000万円以下
1170万円超
1220万円以下
13万円 11万円2万円
1000万円超1220万円超0円 0円0円

 配偶者特別控除は従来どおり納税者の所得が1000万円を超えると受けられないが、配偶者の所得の上限額が所得で123万円、収入で201万6000円未満まで引き上げられた。納税者本人の所得金額が900万円を超えると控除額が減額となり、もともと複雑な配偶者特別控除がますます複雑になった印象だ。詳細は以下の表のとおりだが、ハッキリ言って表を作成するのも見るのも大変なレベルだ。

従来の配偶者特別控除額(参考)
配偶者の所得  配偶者の給与収入控除額
38万円超
40万円未満
103万円超
105万円未満
33万円
40万円以上
45万円未満
105万円以上
110万円未満
33万円
45万円以上
50万円未満
110万円以上
115万円未満
31万円
50万円以上
55万円未満
115万円以上
120万円未満
26万円
55万円以上
60万円未満
120万円以上
125万円未満
21万円
60万円以上
65万円未満
125万円以上
130万円未満
16万円
65万円以上
70万円未満
130万円以上
135万円未満
11万円
70万円以上
75万円未満
135万円以上
140万円未満
6万円
75万円以上
76万円未満
140万円以上
141万円未満
3万円
76万円以上141万円以上0円
改正後の配偶者特別控除額
納税者本人の所得金額
 配偶者の所得 配偶者の給与収入900万円以下900万円超
950万円以下
950万円超
1000万円以下
38万円超
85万円以下
103万円超
150万円以下
33万円22万円11万円
85万円超
90万円以下
150万円超
155万円以下
33万円22万円11万円
90万円超
95万円以下
155万円超
160万円以下
31万円21万円11万円
95万円超
100万円以下
160万円超
166.8万円未満
26万円18万円9万円
100万円超
105万円以下
166.8万円以上
175.2万円未満
21万円14万円7万円
105万円超
110万円以下
175.2万円以上
183.2万円未満
16万円11万円6万円
110万円超
115万円以下
183.2万円以上
190.4万円未満
11万円8万円4万円
115万円超
120万円以下
190.4万円以上
197.2万円未満
6万円4万円2万円
120万円超
123万円以下
197.2万円以上
201.6万円未満
3万円2万円1万円
123万円超201.6万円以上0円0円0円

住民税は分かりにくい その2:所得税と控除額が異なる

所得税と住民税で控除額が異なっている。その差額は5万円、10万円、18万円など専門家でないと覚えられない複雑な体系だ。所得税と住民税の控除額を統一するなど、もっとシンプルにしないと、多くの人は理解できないだろう。昨今の税制改正を見ると、今後ますます複雑化が予想される。さまざまな面で日本の税金はワザと分かりにくくしている印象だ。国民に税金のことを理解して欲しくないという姿勢の表れかもしれない。

 所得割額の計算式に戻ろう。3行目[課税所得×税率(10%)=所得割]の税率は、一部例外な地域はあるが基本は10%。所得税のように課税所得に応じて5%、10%、20%と累進することはない。

住民税・所得割額の計算式
課税所得金額所得税の税率住民税の税率
195万円以下5%ほぼ一律 10%
195万円超 330万円以下10%
330万円超 695万円以下20%
695万円超 900万円以下23%
900万円超 1800万円以下33%
1800万円超 4000万円以下40%
4000万円超45%

 実際に所得割を計算してみよう。『【図解で説明】源泉徴収票の見方を知ると、税金の仕組みが見えてくる』の記事で使用した、安倍進次郎さんの源泉徴収票を元に住民税を算出してみたい。

 まず最初に求めるのは給与所得控除の額。給与所得控除の計算式は以下の表となる。年収650万円の安倍進次郎さんの給与所得控除の額は184万円(=650万円×20%+54万円)。給与所得控除後の金額(=給与所得)は466万円(=650万円-184万円)だ。ここまでは住民税と所得税は同じ金額だ。

給与等の収入金額(年収)給与所得控除額
162万5000円以下65万円
162万5000円超 180万円以下収入金額×40%
180万円超 360万円以下収入金額×30%+18万円
360万円超 660万円以下収入金額×20%+54万円
660万円超 1000万円以下収入金額×10%+120万円
1000万円超220万円(上限)

 なお、年収660万円未満の人の給与所得控除後の金額の計算は「令和元年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」(PDF)という速算表を使用することになっている。ご自身の住民税を実際に計算する場合、該当する人はこの速算表を使用していただきたい。

年収660万円未満の人は速算表を使用して年収から所得を導く

 2行目の式[給与所得-各種所得控除=課税所得]は各種所得控除の金額から計算しよう。前述のとおり住民税の控除額は所得税より少ないので、計算を間違わないように注意したい。特に計算が面倒な生命保険料控除は気を付けよう。この例では旧制度の一般生命保険(12万円)、新制度の介護医療保険(9万円)、旧制度の個人年金保険(12万円)に加入している。所得税では生命保険料の上限となる12万円の控除だったが、住民税では7万円(上限額)となる。

 安倍さんの住民税と所得税の控除を表にしてみた。支払った全額が控除となる社会保険料控除だけ同額だが、それ以外は軒並み控除が減り、合計額は260万円となった。給与所得の466万円からこの260万円を引いた206万円が課税所得となる。所得税の控除額と比べ、住民税の控除額は46万円も少なくなる。これにより課税所得が46万円増えるので、かなり増税された気分となる。

控除名住民税の控除額所得税の控除額差額
基礎控除33万円38万円5万円
配偶者控除33万円38万円5万円
扶養控除(特定)45万円63万円18万円
老人扶養控除(同居老親)45万円58万円13万円
社会保険料控除97万円97万円
生命保険料控除7万円12万円5万円
260万円306万円46万円

 課税所得の206万円(1000円未満切り捨て)に住民税の税率10%を掛けた20万6000円が所得割となる。住民税の通知書には市民税6%(一部8%)、県民税4%(同2%)に分けて計算されている自治体が多いと思うが、合計額は分けても分けなくても同じだ。以下の計算は上段がまとめて10%で計算、下段が市民税 6%、県民税 4%に分けた計算した場合。結果は同じだ。

住民税課税所得×税率(10%)=所得割
住民税所得割 206万円×10%=20万6000円

市民税所得割 206万円×6%=12万3600円
県民税所得割 206万円×4%=8万2400円
住民税所得割 12万3600円+8万2400円=20万6000円

分かりにくい「調整控除」を計算する

 次に計算するのは普通の人には意味不明、極めて分かりにくい「調整控除」だ。調整控除の計算に必要な人的控除の差額から説明しよう。前述のように所得税と住民税では控除の金額に差がある。生命保険料控除や地震保険料控除などを除く、自分や奥さん、子、親などに関する控除が人的控除の対象だ。安倍さんの例では基礎控除(納税者本人)、配偶者控除、扶養控除(特定)、扶養控除(同居老親)が該当する。差額は以下の通りだ。

控除名住民税の人的控除額所得税の人的控除額人的控除の差額
基礎控除33万円38万円5万円
配偶者控除33万円38万円5万円
扶養控除(特定)45万円63万円18万円
老人扶養控除(同居老親)45万円58万円13万円
156万円197万円41万円

 課税所得をA、人的控除の差額をBとする。課税所得(A)の金額が200万円以下のときは

AとBのいずれか小さい金額の5%=調整控除

 課税所得(A)の金額が200万円を超えるときは

B-(A-200万円)=C
※計算結果が5万円未満のときは一律5万円
C×5%=調整控除

 安倍さんの例は課税所得が206万円で200万円を超えているため、下記の計算から調整控除は1万7500円となり、所得割(=課税所得の10%)から調整控除を引くと所得割額は18万8500円と計算できる。

41万円-(206万円-200万円)=35万円
35万円×5%=1万7500円(調整控除)

所得割(=課税所得の10%)-調整控除=所得割額
20万6000円-1万7500円=18万8500円(所得割額)

筆者に届いた通知書の調整控除の欄。名古屋市は市民税、県民税が8対2なので調整控除も4%と1%となっている

住民税は分かりにくい その3:「調整控除」って何?

調整控除は過去のしがらみだ。平成19年に所得税(国税)の税率を下げ、住民税(地方税)の税率を上げ、国から地方へ税源移譲が行われた。

平成19年から所得税と住民税の税率が変更された(国税庁ウェブサイトより)

 例えば平成18年まで所得税10%、住民税5%の人が平成19年から所得税5%、住民税10%(一律)になると、住民税の控除が少ないため納税額が増える(=増税)。これを解消するために調整控除なるものが施行され、結果として面倒な計算が必要となり分かりにくくなった。

 総務省国税庁のウェブサイトには税率が変わっても「税負担が変わることは基本的にありません」などと書かれているが“基本的に”がクセモノだ。

 人的控除の差額は調整控除の面倒くさい計算式により税負担が変わっていないが、生命保険料控除や地震保険料控除を受けている人は、その分の控除の差額は調整されないので増税となっている。ちなみに生命保険料控除を受けている人は約80%。世の中の80%の人が増税されても“税負担は基本的に変わってない”らしい。

 筆者が起業したのは平成18年(2006年)12月なので、起業直後にこの税率改正があった。当時の筆者は人生初の青色申告を前に「青色申告って何? 確定申告はどうすればいい?」という時期で、税率が変わることなど知るよしもなかった。実質は増税されたことを知るのは数年先のことだ。当時の筆者のように税に無関心な国民が多いことが、詭弁を許すことにつながっているように思う。

 ここまではサラリーマンの住民税を例に説明をしてきた。個人事業主の住民税は、所得を求める最初の式が収入金額→売り上げ、給与所得控除→経費となるだけで、それ以降の控除、税率、調整控除などはサラリーマンと同じ計算式となる。

地域差が大きい「均等割額」

 均等割額は地域差があるので、まずは安倍進次郎さんの例にある東京都千代田区で確認してみよう。均等割額は都民税分が1000円、区民分が3000円で計4000円が基本だ。これに東日本大震災の「復興特別税」が平成26年度から平成35年度(令和5年度=2023年度)まで10年間、都民税、区民税に500円ずつ上乗せとなり、合計5000円が均等割額となる。この額は所得200万円の人も5000万円の人も同額だ。

 他の地域も見てみよう。埼玉県さいたま市は県民税が1000円、市民税が3000円で計4000円と同額(平成26年度から10年間は5000円)。千葉県千葉市も同額の4000円(平成26年度から10年間は5000円)だ。

 では、神奈川県横浜市は……。県民税が1800円、市民税4400円で合計6200円と1200円(24%)割高だ。

 まず、神奈川県の県民税の均等割は、ベースとなる1000円に復興特別税の500円がプラスされ、さらに水源環境の保全・再生のために「水源環境保全税」の名目で300円を県独自で上乗せし1800円となっている。

 市民税は、ベースとなる3000円に復興特別税の500円が足され、さらに「横浜みどり税」の900円が上乗せされ4400円となっている。県民税と市民税で計1200円が千代田区、千葉市、さいたま市よりも増税となっている。

 さすが神奈川&横浜ブランドといった感じだろうか。そのブランドにこだわらないなら、将来的に東京への通行手形が必要となる不安はあるが(翔んで)埼玉に住んだ方が住民税は安くなる。

横浜市の住民税のウェブサイト。均等割の市民税4400円、県民税1800円に加え、神奈川県は所得割の税率が0.025%高い

 47都道府県で独自の課税を行う超過課税は37の府県で施行されている。超過課税がないのは北海道、青森県、東京都、埼玉県、千葉県、新潟県、福井県、徳島県、香川県、沖縄県の10都道県だけというのが現状だ。超過課税の金額は500円前後が多く、先ほど紹介した横浜市(1200円)や宮城県(みやぎ環境税1200円)など1000円を超える自治体もある。ご自身の均等割額は居住する自治体のウェブサイトで確認していただきたい。

住民税は分かりにくい その4:「均等割」は地域差が大きい

均等割のベースとなる金額はほとんどの地域で4000円だが、県独自で10%以上の超過課税を課している県が大半だ。金額差以上に問題だと思うのは、多くの県民が超過課税の存在を知らないこと。知らないうちに「○○税を1000円上乗せ」という決定がなされても、報道もされず県民も気付かず増税が行われているのが現状だろう。

 では、安倍進次郎さんの最終的な住民税を計算してみよう。東京都千代田区在住なので、先に計算した所得割額に均等割額を足すと19万3500円となる。おおよそ課税所得(206万円)の10%くらいだ。安倍さんの所得税の税額は8万1600円なので住民税の方が倍以上となっている。

所得割額+均等割額=住民税
18万8500円+5000円=19万3500円

「簡単に住民税を計算するツール」を紹介

 執筆した筆者が言うのもなんだが、難解な住民税の記事をここまで読まれた人は、有森裕子さん風に自分で自分を誉めてあげてよいレベルだと思う。だが実際に複雑な計算を自分でするのは大変。「住民税の地域差は少ない」「複雑な計算が必要」「所得税より控除額が少ない」「課税所得のだいたい10%」と理解できたら、計算ツールを利用してサクッと住民税を算出してみよう。

 東京都千代田区は源泉徴収票から住民税を試算するページを用意している。1月に受け取った源泉徴収票を利用して、6月を待たず手軽に住民税を把握することが可能だ。安倍進次郎さんの源泉徴収票を見ながら入力すると以下のように住民税が計算できた。

源泉徴収票を見ながら入力すると、住民税の税額が計算される。給与所得控除や扶養親族の控除、生命保険料控除などの面倒な計算が不要なので積極的に利用したい

 同様のサービスは多くの自治体のウェブサイトで提供されている。筆者の自宅マンション&住民票のある名古屋市も、オフィスのある川崎市も、税金の高い横浜市も同じサービスを提供している。

 このサービスは株式会社インテックが各自治体に導入しているもので、同社によると全国で50以上の自治体で採用されているとのこと。サクッと検索してみると仙台市、茨城県水戸市、静岡市、大阪市、福岡市など多くの自治体に導入されている。シミュレーションはサラリーマン(給与収入)だけでなく、年金収入、事業所得などにも対応しているので、個人事業主も確定申告書を見ながら売り上げや経費、各種控除などを入力すると住民税の納税額をすぐに把握することができる秀逸なサービスだ。

 試しに安倍進次郎さんの源泉徴収票を名古屋市、川崎市、横浜市のシミュレーションサービスに入力すると、最も住民税額が低かったのは名古屋市で千代田区より5900円も少なかった。河村たかし市長の減税政策のお陰と言えよう。川崎市は千代田区より+800円、横浜市は+1700円となった。

均等割額所得割額住民税差額
東京都千代田区5000円18万8500円19万3500円
神奈川県川崎市5300円18万9000円19万4300円800円
神奈川県横浜市6200円18万9000円19万5200円1700円
愛知県名古屋市5300円18万2300円18万7600円-5900円

 もし安倍進次郎さんが都内から横浜市に引っ越すと、1700円(月額で約142円)の増税となる。地域差はあるものの、都市伝説的に「○○市は住民税が高い」と大騒ぎするほどの差はない。

自分の住む自治体に「住民税のシミュレーションサービス」がない場合

 冒頭に書いた保育園料を調べるために所得割額を知りたいとしよう。1月に受け取った源泉徴収票を住民税のシミュレーションサービスに入力すれば、6月の住民税の通知を待たず入園前に保育園料が算出できる。では自分の住む自治体に住民税のシミュレーションサービスがない場合はどうするか。

 例えば神奈川県で唯一の村である人口約3000人の清川村はシミュレーションサービスを提供していない。神奈川県には33の自治体があるが、シミュレーションサービスを提供している自治体は少数派だ。清川村の均等割額は村民税が3500円、県民税が1800円。所得割の税率は10.025%。筆者の調べでは横浜市以外の32の自治体は均等割、所得割が同じなので、川崎市藤沢市小田原市相模原市などのサービスを利用すればサクッと住民税を調べることができる。

小田原市の住民税試算システム。小田原に本社のあるサンネット株式会社が提供している

神奈川県は税率が10.025%で他県とは税率が異なるので県内の自治体のシミュレーションサービスを利用することになるが、他府県で自分の住む自治体にシミュレーションサービスがない場合は、均等割額と税率が同じであれば他の都道府県のシミュレーションサービスを利用することもできる。

東日本大震災のための住民税の「復興特別税」は令和5年度まで?

 住民税の復興特別税は平成26年度から令和5年度まで10年間、年間1000円の上乗せとなっている。当然、令和6年度から減税されるはず……だった。

 各自治体のウェブサイトには10年間、1000円を上乗せと記載されているが、その先に関しての記述はほとんどない。皆さんは新たな税金として「森林環境税」が、住民税に上乗せされることをご存じだろうか。

 森林環境税は、復興特別税が終わると同時に徴収が始まり税額は年1000円。復興特別税と異なり期限はなく、恒久的な増税となった。住民税の納税者を約6000万人とすると、年間600億円の税収となる。まだ1円も徴収していないが、前倒しで使ってよいことになっている財源だ。

 年1000円。サラリーマンが12カ月に分けて納税すると月83円。目くじらを立てる額ではない。しかし、国民も野党もテレビ・新聞も消費税以外に関心がないことを尻目に、よく分からない増税が行われるのはいかがなものか。

 東日本大震災の復興特別税の増税は所得税が2037年、住民税が2023年まで続く。そのなか、新型コロナウイルス対策で第1次25兆6914億円、第2次31兆9114億円の補正予算が可決・成立した。それは国民の税金が財源となる。よく分らない森林環境税は、さっさとコロナ対策税に切り替えたほうが、納得する国民が多いような気がする。

住民税が非課税? パート/アルバイトは注意しよう

 所得税は年収が103万円以下であれば、パート/アルバイトは基礎控除の48万円(令和2年から)と給与所得控除の55万円(同)が引かれ、課税所得が0円となり非課税となる。住民税は、多くの自治体で年収100万円以下(所得で35万円以下)なら非課税となる。どういうこと?

 例えば100万1円の年収があった場合、所得税は0円だが住民税は均等割額を納税することになる。千代田区なら5000円、横浜市なら6200円の住民税を納税しなければならない。「1時間短く勤務していたら非課税だったのに」となるかもしれないので、パート/アルバイトの人は要注意だ。自治体によって均等割の非課税限度額は年収93万円(給与所得で28万円)以下、96万5000円(給与所得で31万5000円)以下というケースもある。サクッと検索すると非課税限度額93万円以下は滋賀県東近江市栃木県小山市三重県伊勢市など。96万5000円以下は宮崎県宮崎市埼玉県越谷市岩手県盛岡市などが該当する。ギリギリまで稼いでいる人は、自分の住む自治体のウェブサイトで非課税限度額を確認をしよう。

住民税の「時間差攻撃」に注意

 サラリーマンは毎月の給与明細から天引きされている所得税と住民税に1年以上の時差があるのをご存じだろうか。所得税はその月の給与から社会保険料などを差し引き、みなしで天引きされている(源泉徴収)。要するに1月分の所得税はその月に納税し、12月の給与で年収が確定するので生命保険料控除などを反映、年末調整で正しい税額に調整して1年間の納税が完了する。医療費控除などは各自が年明けに確定申告を行う。

 この結果が住民票を置く地方自治体に送られ、その自治体の税率、均等割により住民税の額が決定し、6月から翌年5月まで天引きされている。例えば住民税が12万300円の人は6月に1万300円。7月から翌年5月まで1万円となるので、6月だけ金額が異なるのが一般的だ。

 具体的には、昨年(2019年)の1~12月に所得税を納税し、住民税は今年(2020年)の6月から来年(2021年)の5月に納税をすることになる。

サラリーマンの所得税は毎月納税、住民税は2019年分を2020年6月から2021年5月まで納税する

 ずっと同じ会社にいると時差があることに気付かないが、退職すると1年遅れの住民税を納税することになり、「えっ住民税20万円!」と驚くケースは珍しくない。年末に退職すると前年分も含め17カ月分を納めることになるので、退職を考えている人は住民税の時間差攻撃に注意しよう。

住民税の時間差攻撃に注意。実際には所得税が第1弾、住民税が第2弾の時間差2弾攻撃だ

 個人事業主の場合は2~3月で確定申告し、所得税1年分を納税。6月に住民税の通知を受け取り、6月に全額を納税するか、6月・8月・10月・1月に分けて納税するかを自分で選択する。

税金はシンプルに

 最後は筆者の雑談だ。筆者は税理士でもなく税の専門家でもないが、なんとなく税金の原稿を書き始めて10年が過ぎた。素人目線で見ると、日本の税制はつぎはぎだらけで、増築を繰り返した温泉旅館のようだ。一度解体し建て直したほうがいいと思っている。住民税の調整控除などはその代表格でかなり無理がある感じだ。

 所得税と住民税の控除額に差があることも複雑な調整控除の原因だし、住民税自体を分かりにくくしている。令和2年(2020年)から所得税の基礎控除が改定され、これまで一律だった控除額が所得によって段階的に額が変わり複雑化した。その複雑化は来年から住民税に反映される。

 筆者は国民が税金の仕組みを理解することは、国が良くなることだと思っている。そのためにはもっとシンプルな税制にするべきだ。「控除額38万円って40万のほうが分かりやすくねぇ」「年収103万円以下って120万円にしたら月10万円で計算しやすいじゃん」などと、ゼロからシンプルで分かりやすい税制を再構築して欲しいと思うが、残念ながら税金を取り巻く環境は複雑化の一途だ。それでも多くの読者が税に対する理解を高めていただくと、税制を見直す小さな一歩につながると期待している。

【記事更新 2019年6月21日 15:10】
 所得割額の計算方法を令和元年からの改正に合わせたものにアップデートするなど、記事内容の一部を更新・加筆しました。

【記事更新 2020年6月22日 17:10】
 自治体のウェブサイトで提供している「住民税のシミュレーションサービス」についての詳しい説明など、記事内容の一部を加筆・更新しました。

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。