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住民税はどうやって決まる? その計算方法とは

~令和になり、さらに分かりにくくなった住民税を詳しく解説~

最終更新 2019年6月21日 15:10
初出日時 2018年6月27日 17:05

 多くのサラリーマンは6月の給与明細と一緒に「住民税の通知書」なるものを受け取っているはずだ。給与明細を見ると毎月同額だった住民税が6月から異なっている人も多いと思われる。天引きされている税額を比べると所得税よりも住民税が税負担が多い人もいるだろう。また、個人事業主は6月上旬に住民税の通知を受け取り、7月1日(6月末日が日曜のため)までに納税しなければならない。今回は、よく分からない住民税について説明をしよう。

筆者に送られてきた住民税の通知書

 住民税はザックリ説明すると「課税所得の10%くらい」。ところがご自身の源泉徴収票を見ながら、自力で住民税を正確に計算しようと思うとかなり面倒くさい。この記事では計算方法を紹介するが、細かなところは読み飛ばしていただいて結構。「住民税は分かりにくい」というコラムも読み飛ばしていただいて結構。概要を把握して「複雑な計算の結果、課税所得の10%くらい」と理解してもらえばよいと思っている。

住民税が安い都市は?

 皆さんは「○○市は住民税が安い」と聞いたことはないだろうか。もっと具体的に「豊田市はトヨタがいるから住民税が安い」とまことしやかに言う人もいる。サラリーマン時代の筆者は税に興味はなかったので「へぇ~そうなんだ」と思っていた。

 これは都市伝説みたいなもので、住民税はほぼ全国一律だ。東京都千代田区の住民税の税率は10%。人気の吉祥寺(武蔵野市)に住んでも10%。荒川を隔てて東京都と接する埼玉県川口市に住んでも10%。筆者が先日訪れた人口2000人ほどの岐阜県東白川村に住んでも10%。もちろん豊田市も10%だ。

人口2000人の東白川村で有名なのはツチノコと鮎釣り。村に住んでも住民税の税率は10%

 筆者は住民税に地域差があるという話を2度聞いたことがある。記憶が正しければサラリーマン時代の三十代に1度、起業後の四十代に1度。高校生や大学生が住民税の話をすることはないと思われるし、若いころに住民税の話をした記憶もない。年齢を重ねた人ほど「住民税に地域差がある」と聞く機会が多くなるのであろう。記事に対するコメントを見ると「聞いたことがある」が多めで、「聞いたことがない」は少なめな印象だ。この都市伝説の要因は国民健康保険だと思われる。国保は自治体により計算式が異なり地域差も大きい。このことが住民税と勘違いされていると思われる。国保に加入する多くの人は自営業なので、サラリーマンはどこに住んでも住民税はほぼ同じだ。

 一部に例外があり、神奈川県だけは県民税が0.025%高く、神奈川県民の住民税は10.025%。名古屋市の市民税は0.3%低く、名古屋市民の住民税は9.7%となっているが、全国的に見れば税率が異なるのはごく一部であり、住居を移しても住民税の額が何割も増減することはない。かつて全国一住民税が高いと言われたのは財政破綻した夕張市だったが、財政再生計画の見直しにより10.5%だった税率を現在は10%に戻している。これは全国最年少で市長となった鈴木直道氏の手腕によるものと思われる。素晴らしい。ちなみに鈴木直道氏は2019年4月に北海道知事に当選した。現在38歳、全国一若いイケメン知事の今後に期待したい。

 税率以外の地域差については別項で説明したい。

住民税は分かりにくい その1:税率が異なる

住民税の税率は神奈川県や名古屋市のような例外があり、一律ではない。全国には1700ほどの自治体があるので、全ての自治体の住民税を把握するのは困難だ。加えて平成30年から政令指定都市(地方自治法では指定都市)20市は市民税と県民税の税率の比率を6対4から8対2に変更した。従来の市民税の税率が6%から8%になり、道府県民税の税率が4%から2%となっている。

住民税の計算方法を理解する前に、所得税を理解したい

 住民税の計算方法と所得税の計算方法はかなり似ている。所得税の計算も簡単ではないが、輪を掛けて複雑なのが住民税の計算だ。できれば所得税の概要を理解してから住民税を理解するのが近道だと思う。所得税の計算方法を知るには源泉徴収票の見方を理解するのがお勧めだ。以下は筆者が2018~2019シーズンに執筆した税金に関する記事で、所得税の計算方法を知らない人は、3番目の「【保存版】知っておきたい源泉徴収票の見方を図解で説明」を一読すると理解しやすいと思われる。

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。

令和元年から改正された、住民税の所得割額を計算する

 住民税は「所得割額」と「均等割額」を合算したものが納税額となる。所得割額は個人個人の所得(収入)によって納税額に差があり、多くの人は住民税の大半を所得割額が占めるため、住民税の主役的な存在だ。均等割額は所得に関わらず課税され、同じ自治体に住む納税者が同額を納税する。

 なお、住民税は市町村民税と道府県民税に分かれていて、○○市に住んでいる人は市民税、△△町の人は町民税、北海道の人は道民税、京都府の人は府民税となるが、市町村民税と毎回表記するのは無駄なので、ここでは市民税、県民税で統一したい。適宜、居住する自治体に応じて読み替えていただきたい。

 また、多くの人は市民税の税率が6%、県民税の税率が4%で合算した住民税の税率は10%となるためこれを基本とする。加えて、住民税の計算は同じ計算式で市民税分(6%)、県民税分(4%)を算出して合算する方法が正式となるが、できるだけシンプルな考え方にしたいので、住民税の税率=10%を基本として進めたい。

 まずは、サラリーマンを例に、住民税の主役と言える所得割額から説明していこう。所得割額は以下の計算式で算出できる。所得割は所得税の計算式と全体の流れは似ている。

住民税・所得割額の計算式
所得税の計算式

 所得割と所得税の計算式の1行目[給与の収入金額-給与所得控除=給与所得]は同じだ。2行目の式[給与所得-各種所得控除=課税所得]はほぼ同じだが、各種所得控除の金額が住民税(所得割)と所得税で異なるので注意したい。控除額の違いを見てみよう。

控除名住民税の控除額所得税の控除額差額
基礎控除33万円38万円5万円
配偶者控除~33万円~38万円~5万円
配偶者控除(老人)38万円48万円10万円
配偶者特別控除~33万円~38万円~5万円
扶養控除(一般)33万円38万円5万円
扶養控除(特定)45万円63万円18万円
老人扶養控除(同居老親)45万円58万円13万円
老人扶養控除(同居老親等以外)38万円48万円10万円
寡婦・寡夫控除26万円27万円1万円
特別寡婦控除30万円35万円5万円
生命保険料控除:旧~3万5千円~5万円~1万5千円
生命保険料控除:新~2万8千円~4万円~1万2千円
地震保険料控除~2万5千円~5万円~2万5千円

 表のように住民税の控除額は所得税より少ない。控除額が少ない=課税所得が増加=納税額が増加ということだ。代表的な控除を見ると、基礎控除は5万円少なく、扶養控除の一般は5万円、特定(主に大学生)は18万円少ない。扶養控除の住民税と所得税の差異は複雑なので、控除額と年齢の関係は図を参照していただきたい。

 令和最初の住民税で改正されたのは配偶者控除、配偶者特別控除だ。平成30年分の所得税の配偶者(特別)控除が改正されたため、平成30年分の所得から算出される令和元年の住民税も改正となった。

 平成29年分(2017年)までの所得税の配偶者控除は、給与所得者(例えば旦那さん)の所得が300万円でも2000万円でも、所得額に関係なく配偶者(例えば奥さん)の所得が38万円(年収で103万円)以下であれば配偶者控除の額は38万円で固定されていた。平成30年分から配偶者(特別)控除の仕組みが大幅に改正され、かなり複雑となった。大きな変更点は3つ。

  • 旦那さんの所得額により配偶者(特別)控除の額が異なる
  • 旦那さんの所得額が1000万円を超えると配偶者控除が受けられない
  • 奥さんの年収の103万円の壁が150万円に引き上げ

 旦那さんの所得と配偶者控除の控除額は以下の表のようになった。

旦那さんの所得額所得税 配偶者控除の控除額
2017年分 以前
所得税 配偶者控除の控除額
2018年分 以降
900万円以下38万円38万円(変更なし)
900万円超 950万円以下26万円
950万円超 1000万円以下13万円
1000万円超0円

 この所得税の改正にともない、令和元年から住民税の配偶者控除も改正された。サラリーマンの場合、年収1120万円(所得900万円)以下であれば従来と同じだが、年収1120万円(所得900万円)を超えると控除が減り増税となる。

納税者本人の所得給与収入(参考)所得税の控除額住民税の控除額差額
従来制限なし制限なし38万円33万円5万円
改正後900万円以下1120万円以下38万円33万円5万円
900万円超
950万円以下
1120万円超
1170万円以下
26万円22万円4万円
950万円超
1000万円以下
1170万円超
1220万円以下
13万円11万円2万円
1000万円超1220万円超0円0円0円

 配偶者特別控除は従来どおり納税者の所得が1000万円を超えると受けられないが、配偶者の所得の上限額が所得で123万円、収入で201万6000円未満まで引き上げられた。納税者本人の所得金額が900万円を超えると控除額が減額となり、もともと複雑な配偶者特別控除がますます複雑になった印象だ。詳細は以下の表のとおりだが、表を作成するのも見るのも大変。理解するのは困難だと思われるのでスルーして次ぎに進んでいただきたい。

従来の配偶者特別控除額(参考)
配偶者の所得  配偶者の給与収入控除額
38万円超
40万円未満
103万円超
105万円未満
33万円
40万円以上
45万円未満
105万円以上
110万円未満
33万円
45万円以上
50万円未満
110万円以上
115万円未満
31万円
50万円以上
55万円未満
115万円以上
120万円未満
26万円
55万円以上
60万円未満
120万円以上
125万円未満
21万円
60万円以上
65万円未満
125万円以上
130万円未満
16万円
65万円以上
70万円未満
130万円以上
135万円未満
11万円
70万円以上
75万円未満
135万円以上
140万円未満
6万円
75万円以上
76万円未満
140万円以上
141万円未満
3万円
76万円以上141万円以上0円
改正後の配偶者特別控除額
納税者本人の所得金額
 配偶者の所得 配偶者の給与収入900万円以下900万円超
950万円以下
950万円超
1000万円以下
38万円超
85万円以下
103万円超
150万円以下
33万円22万円11万円
85万円超
90万円以下
150万円超
155万円以下
33万円22万円11万円
90万円超
95万円以下
155万円超
160万円以下
31万円21万円11万円
95万円超
100万円以下
160万円超
166.8万円未満
26万円18万円9万円
100万円超
105万円以下
166.8万円以上
175.2万円未満
21万円14万円7万円
105万円超
110万円以下
175.2万円以上
183.2万円未満
16万円11万円6万円
110万円超
115万円以下
183.2万円以上
190.4万円未満
11万円8万円4万円
115万円超
120万円以下
190.4万円以上
197.2万円未満
6万円4万円2万円
120万円超
123万円以下
197.2万円以上
201.6万円未満
3万円2万円1万円
123万円超201.6万円以上0円0円0円

住民税は分かりにくい その2:所得税と控除額が異なる

所得税と住民税で控除額が異なっている。その差額は5万円、10万円、18万円など専門家でないと覚えられない複雑な体系だ。所得税と住民税の控除額を統一するなど、もっとシンプルにしないと、多くの人は理解できないだろう。改正が決まっている給与所得控除などで、今後ますます複雑化が予想される。さまざまな面で日本の税金はワザと分かりにくくしている印象だ。国民に税金のことを理解して欲しくないという姿勢の表れかもしれない。

 3行目[課税所得×税率(10%)=所得割]の税率は、一部例外な地域はあるが基本は10%。所得税のように課税所得に応じて5%、10%、20%と累進することはない。

課税所得金額所得税の税率住民税の税率
195万円以下5%ほぼ一律 10%
195万円超 330万円以下10%
330万円超 695万円以下20%
695万円超 900万円以下23%
900万円超 1800万円以下33%
1800万円超 4000万円以下40%
4000万円超45%

 実際に所得割を計算してみよう。上記【保存版】知っておきたい源泉徴収票の見方を図解で説明」の記事で使用した、安倍進次郎さんの源泉徴収票を元に住民税を算出してみたい。

 まず最初に求めるのは給与所得控除の額。給与所得控除の計算式は以下の表となる。年収660万円の安倍進次郎さんの給与所得控除の額は186万円(=660万円×20%+54万円)。給与所得控除後の金額(=給与所得)は474万円(=660万円-186万円)だ。ここまでは住民税と所得税は同じ金額だ。

給与等の収入金額(年収)給与所得控除額
162万5000円以下65万円
162万5000円超 180万円以下収入金額×40%
180万円超 360万円以下収入金額×30%+18万円
360万円超 660万円以下収入金額×20%+54万円
660万円超 1000万円以下収入金額×10%+120万円
1000万円超220万円(上限)

 なお、年収660万円未満の人の給与所得控除後の金額の計算は「平成30年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」(PDF)という速算表を使用することになっている。ご自身の住民税を実際に計算する場合、該当する人はこの速算表を使用していただきたい。

年収660万円未満の人は速算表を使用して年収から所得を導く

 2行目の式[給与所得-各種所得控除=課税所得]は各種所得控除の金額から計算しよう。前述のとおり住民税の控除額は所得税より少ないので、計算を間違わないように注意したい。特に計算が面倒な生命保険料控除は気を付けよう。この例では旧制度の一般生命保険(12万円)、新制度の介護医療保険(8万円)、旧制度の個人年金保険(12万円)に加入している。所得税では生命保険料の上限となる12万円の控除だったが、住民税では7万円(上限額)となる。

 安倍さんの住民税と所得税の控除を表にしてみた。支払った全額が控除となる社会保険料控除だけ同額だが、それ以外は軒並み控除が減り、合計額は262万円となった。給与所得の474万円からこの262万円を引いた212万円が課税所得となる。所得税の控除額と比べ、住民税の控除額は46万円も少なくなる。これにより課税所得が46万円増えるので、かなり増税された気分となる。

控除名住民税の控除額所得税の控除額差額
基礎控除33万円38万円5万円
配偶者控除33万円38万円5万円
扶養控除(特定)45万円63万円18万円
老人扶養控除(同居老親)45万円58万円13万円
社会保険料控除99万円99万円
生命保険料控除7万円12万円5万円
262万円308万円46万円

 課税所得の212万円(1000円未満切り捨て)に住民税の税率10%を掛けた21万2000円が所得割となる。住民税の通知書には市民税6%(一部8%)、県民税4%(同2%)に分けて計算されている自治体が多いと思うが、合計額は分けても分けなくても同じだ。

課税所得×税率(10%)=所得割
212万円×10%=21万2000円

市民税所得割 212万円×6%=12万7200円
県民税所得割 212万円×4%=8万4800円
住民税所得割 12万7200円+8万4800円=21万2000円

分かりにくい調整控除を計算する

 次に計算するのは調整控除だ。調整控除の計算に必要な人的控除の差額から説明しよう。前述のように所得税と住民税では控除の金額に差がある。生命保険料控除や地震保険料控除などを除く、自分や奥さん、子、親などに関する控除が人的控除の対象だ。安倍さんの例では基礎控除(納税者本人)、配偶者控除、扶養控除(特定)、扶養控除(同居老親)が該当する。差額は以下の通りだ。

基礎控除5万円
配偶者控除5万円
扶養控除(特定)18万円
扶養控除(同居老親)13万円
41万円

 課税所得をA、人的控除の差額をBとする。課税所得(A)の金額が200万円以下のときは

AとBのいずれか小さい金額の5%=調整控除

 課税所得(A)の金額が200万円を超えるときは

B-(A-200万円)=C
※計算結果が5万円未満のときは一律5万円
C×5%=調整控除

 安倍さんの例は課税所得が212万円で200万円を超えているため、調整控除は1万4500円となり、所得割(=課税所得の10%)から調整控除を引くと所得割額は19万7500円と計算できる。

41万円-(212万円-200万円)=29万円
29万円×5%=1万4500円(調整控除)

所得割(=課税所得の10%)-調整控除=所得割額
21万2000円-1万4500円=19万7500円(所得割額)

筆者に届いた通知書の調整控除の欄。名古屋市は市民税、県民税が8対2なので調整控除も4%と1%となっている

住民税は分かりにくい その3:調整控除って何?

調整控除は過去のしがらみだ。平成19年に所得税(国税)の税率を下げ、住民税(地方税)の税率を上げ、国から地方へ税源移譲が行われた。

平成19年から所得税と住民税の税率が変更された(財務省ウェブサイトより)

 例えば平成18年まで所得税10%、住民税5%の人が平成19年から所得税5%、住民税10%(一律)になると、住民税の控除が少ないため納税額が増える(=増税)。これを解消するために調整控除なるものが施行され、結果として面倒な計算が必要となり分かりにくくなった。

 総務省財務省国税庁のウェブサイトには税率が変わっても「税負担が変わることは基本的にありません」などと書かれているが“基本的に”がクセモノだ。

 人的控除の差額は調整控除の面倒くさい計算式により税負担が変わっていないが、生命保険料控除や地震保険料控除を受けている人は、その分の控除の差額は調整されないので増税となっている。ちなみに生命保険料控除を受けている人は約80%。世の中の80%の人が増税されても“税負担は基本的に変わってない”らしい。

 筆者が起業したのは平成18年(2006年)12月なので、起業直後にこの税率改正があった。当時の筆者は「青色申告って何? 確定申告はどうすればいい?」という時期で、税率が変わることなど知るよしもなかったし、実質は増税されたことを知るのは数年先のことだ。当時の筆者のように税に無関心な国民が多いことが、詭弁を許すことにつながっているように思う。

 ここまではサラリーマンの住民税を例に説明をしてきた。個人事業主の住民税は、所得をもとめる最初の式が収入金額→売り上げ、給与所得控除→経費となるだけで、それ以降の控除、税率、調整控除などはサラリーマンと同じ計算式となる。

地域差が大きい均等割額

 均等割額は地域差があるので、まずは安倍進次郎さんの例にある東京都千代田区で確認してみよう。均等割額は都民税分が1000円、区民分が3000円で計4000円が基本だ。これに東日本大震災の復興特別税が平成26年度から平成35年度(令和5年度=2023年度)まで10年間、都民税、区民税に500円ずつ上乗せとなり、合計5000円が均等割額となる。この額は所得200万円の人も5000万円の人も同額だ。

 他の地域も見てみよう。埼玉県さいたま市は県民税が1000円、市民税が3000円で計4000円と同額(平成26年度から10年間は5000円)。千葉県千葉市も同額の4000円(平成26年度から10年間は5000円)だ。

 では、神奈川県横浜市は……。県民税が1800円、市民税4400円で合計6200円と1200円(24%)割高だ。

 まず、神奈川県の県民税の均等割は、ベースとなる1000円に復興特別税の500円がプラスされ、さらに「水源環境の保全・再生に継続的に取り組むため」の300円を県独自で上乗せし1800円となっている。

 市民税は、ベースとなる3000円に復興特別税の500円が足され、さらに「横浜みどり税」の900円が上乗せされ4400円となっている。県民税と市民税で計1200円が千代田区、千葉市、さいたま市よりも増税となっている。

 さすが神奈川&横浜ブランドといった感じだろうか。そのブランドにこだわらないなら翔んで埼玉に住んだ方が住民税は安くなる。

横浜市の住民税のウェブサイト。市民税4400円、県民税1800円に加え、神奈川県は税率が0.025%高い

 地方自治体で独自の課税を行う超過課税は37の県で施行されている。超過課税がないのは北海道、青森県、東京都、埼玉県、千葉県、新潟県、福井県、徳島県、香川県、沖縄県の10都道県だけというのが現状だ。超過課税の金額は500円前後が多く、先ほど紹介した横浜市(1200円)や宮城県(みやぎ環境税1200円)など1000円を超える自治体もある。ご自身の均等割額は居住する自治体のウェブサイトで確認していただきたい。

住民税は分かりにくい その4:均等割は地域差が大きい

均等割のベースとなる金額はほとんどの地域で4000円だが、県独自で10%以上の超過課税を課している県が大半だ。金額差以上に問題だと思うのは、多くの県民が超過課税の存在を知らないこと。知らないうちに「○○税を1000円上乗せ」という決定がなされても、報道もされず県民も気付かず増税が行われているのが現状だろう。

 では、安倍進次郎さんの最終的な住民税を計算してみよう。東京都千代田区在住なので、先に計算した所得割額に均等割額を足すと20万2500円となる。おおよそ課税所得(212万円)の10%くらいだ。安倍さんの所得税の税額は8万4800円なので住民税の方が倍以上となっている。

所得割額+均等割額=住民税
19万7500円+5000円=20万2500円

 東京都千代田区は源泉徴収票から住民税を試算するページを用意している。1月に受け取った源泉徴収票を利用して、6月を待たず手軽に住民税を把握することが可能だ。

源泉徴収票を見ながら入力すると、住民税の税額が計算される

 ちなみに、もしこの例の安倍さんが横浜市に引っ越すと、税率が+0.025%、均等割額に1200円が加算されるので20万4200円となり、1700円の増税となる。地域差はあるものの、「○○市は住民税が高い」と大騒ぎするほどの差はない。

(所得割-調整控除)+均等割額=住民税
(21万2530円-1万4500円)+6200円=20万4200円(100円未満切り捨て)

 住民税の復興特別税は平成26年度から平成35年度(令和5年度=2023年度)まで10年間、年間1000円の上乗せとなっている。当然、平成36年度(令和6年度=2024年度)から減税されるはず……だった。

 各自治体のウェブサイトには10年間、1000円を上乗せと記載されているが、その先に関しての記述はほとんどない。皆さんは新たな税金として「森林環境税」が、住民税に上乗せされることをご存じだろうか。

 森林環境税は、復興特別税が終わると同時に徴収が始まり税額は年1000円。復興特別税と異なり期限はなく、恒久的な増税となった。住民税の納税者を約6000万人とすると、年間600億円の税収となる。

 年1000円。サラリーマンが12カ月に分けて納税すると月83円。目くじらを立てる額ではない。しかし、国民が消費税以外に関心がないことを尻目に、森林の次は海をテーマに「海洋保全税」、その次は……と次々に増税が行われそうだ。

住民税が非課税? パート/アルバイトは注意しよう

 所得税は年収が103万円以下であれば、パート/アルバイトは基礎控除の38万円と給与所得控除の65万円が引かれ、課税所得が0円となり非課税となる。住民税は、多くの自治体で年収100万円以下(所得で35万円以下)なら非課税となる。どういうこと?

 例えば100万1円の年収があった場合、所得税は0円だが住民税は均等割額を納税することになる。千代田区なら5000円、横浜市なら6200円の住民税を納税しなければならない。「1時間短く勤務していたら非課税だったのに」となるかもしれないので、パート/アルバイトの人は要注意だ。一部の自治体では非課税は年収98万円以下(所得で33万円以下)というケースもあるので、自分の住む自治体のウェブサイトで確認をしよう。

住民税の時間差攻撃に注意

 サラリーマンの人は毎月の給与明細から天引きされている所得税と住民税に1年以上の時差があるのをご存じだろうか。所得税はその月の給与から社会保険料などを差し引き、みなしで天引きされている(源泉徴収)。要するに1月分の所得税はその月に納税し、12月の給与で年収が確定するので、毎月の誤差を年末調整で正しい税額に調整して1年間の納税が完了する。医療費控除などは各自が年明けに確定申告を行う。

 この結果が税務署から住民票を置く地方自治体に送られ、その自治体の税率、均等割により住民税の額が決定し、6月から翌年5月まで天引きされている。例えば住民税が12万300円の人は6月に1万300円。7月から翌年5月まで1万円となるので、6月だけ金額が異なるのが一般的だ。

 具体的には、昨年(平成30年=2018年)の1~12月に所得税を納税し、住民税は今年(令和元年=2019年)の6月から来年(令和2年=2020年)の5月に納税をすることになる。

 ずっと同じ会社にいると時差があることに気付かないが、退職すると1年遅れの住民税を納税することになり、「えっ住民税20万円!」と驚くケースは珍しくない。退職を考えている人は住民税の時間差攻撃に注意しよう。

 個人事業主の場合は2~3月で確定申告し、所得税1年分を納税。6月に住民税の通知を受け取り、6月に全額を納税するか、6月・8月・10月・1月に分けて納税するかを自分で選択する。

住民税って必要?

 最後は筆者の雑談だ。筆者は税理士でもなく税の専門家でもないが、なんとなく税金の原稿を書き始めて10年が過ぎた。素人目線で見ると、日本の税制はつぎはぎだらけで、増築を繰り返した温泉旅館のようだ。一度解体し建て直したほうがいいと思っている。住民税の調整控除などはその代表格でかなり無理がある感じだ。

 そもそも個人的には現状の住民税の仕組みは不要だと思っている。住民税は所得税の結果を受けて税額を決定し、時間差で徴収している。税務署から結果を受け取らないと徴収できない仕組みだ。ザックリ言うと集金係のようなものだ。所得税がみなしで、その月に徴収できるなら、住民税もその月に徴収することは可能だろう。

 県民税と市民税を別々に納税している人はいない。まとめて徴収して、あとから県と市で分けあっているなら、全部まとめて徴収して所得税分、県民税分、市民税分と分配すれば、全国の市町村で人員削減ができ効率的だ。稼いだときに天引きすれば時差がなくなるので、「お金使っちゃった」などと支払えなくなる人も減るだろう。

 金融庁・金融審議会の報告書の「老後に2000万円」というニュースに不安を感じた人がいるだろう。2000万円が一人歩きしているが、報告書はサラリーマン世帯のモデルケースの例を示したもので、国民年金の人はさらに年金が少くなるし、支出面も居住地や持ち家・借家で差があるので、自分に当てはめなければ意味はない。

 税金も同様で、所得税や住民税の算出方法を理解していれば、税制が改正された際、自分がどれだけ増税されるかを把握することができる。筆者は、国民が税に関心を持つことは国をよくすることだと思っている。この機会に少し税に関心を持っていただきたい。

【記事更新 2019年6月21日 15:10】
 所得割額の計算方法を令和元年からの改正に合わせたものにアップデートするなど、記事内容の一部を更新・加筆しました。

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