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【TP-Link編】中の人に聞いてみた「Wi-Fiルーターの買い換え時とセキュリティ対策」

「自社生産だからこそ言える長期利用という自信」

ティーピーリンクが日本特別仕様として作ったWi-Fi 6ルーター「Archer AX80」

 自宅のWi-Fiルーターが犯罪に使われる、そんなリスクを防ぐため、INTERNET Watchでは「Wi-Fiルーター見直しの日」として啓蒙を行っている。といっても自宅のWi-Fiルーターをこのまま使い続けていいのかは気になるところだろう。

 現在のWi-Fiルーターのセキュリティ対策は、技術基準適合認定によって定められている部分もあり、一見、どのメーカーも同じに見える(技術基準適合認定については関連記事「Wi-Fiルーターの新常識!! もう1つの「技適」で必須化されたセキュリティ対策とは?」参照)。しかし、実際にはメーカーごとにサポートやセキュリティ対策への姿勢の違いがあり、それが実際の製品の特長にもなっている。

 そこで本稿では、ティーピーリンクジャパン株式会社 技術部マネージャー Hugh Hu(ヒュー・フウ)氏に、同社の具体的な方針やユーザーに推奨する買い替え年数などを伺った。

ティーピーリンクジャパン株式会社 技術部マネージャー Hugh Hu(ヒュー・フウ)氏

日本での存在感も大きくなりつつある

 今や価格面だけでなく、技術面でも高い存在感を示すTP-Linkだが、脆弱性対策を含めたサポートにもかなり注力しているメーカーだ。

 TP-Linkの強みは、ハードウェアの設計からソフトウェアの開発まで、基本的に自社で手掛けている点だ。これにより、脆弱性が発見されてから、実際にファームウェアを更新するまでの期間を短くしたり、旧機種も含めた広い範囲でのサポートを展開したりすることができる。

ソフトもハードも自社開発が、サポート体制でも強みに

 ファームウェアのアップデートといったサポート期限については、特に決まった期限は設けていないという。同社の製品はラインアップが非常に多いため、すべての製品が対象となるわけではないが、脆弱性発見後になるべく早くファームウェアをリリースすることが可能なうえ、セキュリティ被害の影響が広範囲にわたる場合は、生産終了後もアップデートを実施する体制が整っている。

 これは、単に長期的な利用ができることを訴えるだけのものではない。同社は、設計やソフトウェア開発を自社で手掛けるメーカーだ。このため、協力会社などとの関係にとらわれることなく、自社でサポート期限などをコントロールできることになる。

 なお、具体的としては、同社が日本市場に参入した初年度に発売した2016年発売のモデルのファームウェアのアップデートを2023年に提供した実績もあるとのこと。

ファームウェアの更新はアプリにも通知

 ファームウェアの更新タイミングも、月に1度といった定期的なタイミングは設けられていない。脆弱性などが見つかれば時期を待たずに速やかにアップデートが行なわれる。脆弱性などのセキュリティ被害の影響が広範囲にわたるような状況であれば、生産終了後もファームウェアのアップデートを提供するとしている。

 自動ファームウェアのアップデート機能は、既存の多くの機種で実装されているが、モデルが多いため順次対応している状況となる。ただし、Wi-Fi 6世代であれば、ほぼ対応している状況とのこと。

 また、自動更新がオフの場合でも、設定用のTetherアプリやDecoアプリにファームウェアアップデートの案内が表示され、ユーザーの簡単な操作でアップデートできる仕組みも用意されている。

ファームウェアの自動更新がオフでもアプリにアップデートの通知が届く
新しい端末から接続があった場合なども、アプリに通知が届く

パスワードは自分で設定、でも脆弱な文字列には警告

 Wi-Fi接続や管理画面のパスワードについては、初期設定のタイミングで自分で設定する方式となっている。設定の際に、安全性が低い文字列を使用しようとすると警告が表示される。

パスワードによって強度を表示。数字だけやアルファベットだけのような推測されやすいものだと警告される

 WPA3に関しても2023年12月時点で生産・販売されているWi-Fi 6以降に対応した製品は、すべて対応しているとのこと。

 なお、古い時代に発売された製品の中には、管理画面へのアクセスが「admin」「admin」という機種もあるが、こうした機種に対してもファームウェアの更新を実施し、次回接続時にパスワードを変更するようにうながすなどの工夫をしていると言う。

セキュリティ機能はIPoE IPv6環境にも順次対応

 ミドルレンジ以上のモデルには「Home Shield」と呼ばれるセキュリティ機能を提供している。無料プランの場合でも、Wi-Fiルーターのセキュリティチェックなどが可能なため、基本的な対策に役立てることができる。

「Home Shield」でできること
「Home Shield」の画面。セキュリティリスクに対するアドバイスが表示される

 また、メーカーによってはIPoE IPv6環境で無効化されてしまうケースがあるが、TP-Linkでは、すでに一部機種(Archer AX3000など)でIPoE IPv6環境でも利用可能になっており、今後、順次対応機種を増やす予定とのこと。

 なお、実際のサポート情報はメーカーのウェブサイトで確認できる。関連ページ(主要Wi-Fiルーターメーカーのサポートコンテンツリンク集)でメーカーごとのサポートページを紹介しているので、アクセスしてみることをおすすめする。

おすすめの買い替え時はいつ?

 TP-Linkは、自社生産ならではの長期的かつ充実したセキュリティ対策体制が特徴となっている。このため、どちらかというと長くうことも厭わないメーカーと言えそうだ。実際、Wi-Fi 5世代の製品に対しても、WPA3のサポートを新ファームで展開するなど、旧機種の機能強化にも積極的だ。

 このため、セキュリティ視点で買い替えるというよりは、Wi-Fiの規格など変更など、性能や機能を重視した買い替えを推奨する立場と言える。性能や機能が物足りなく感じたときが買い替え時ということになりそうだ。

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