単行本や雑誌の新しい流通形態として注目されてきた“電子書籍”。最近では、携帯電話へのマンガ配信サービスなども盛んになりつつある。
パソコンのプラットフォームでは、期待されながらなかなか普及の進まなかった電子書籍だが、常時接続回線の一般化やパソコンの高機能化・大画面化、複数の小額決済方法が用意されるなど環境が整ってきたことで、少しずつではあるが普及の兆しを見せている。
今回はリーダーソフトや無料コンテンツ、電子書籍のダウンロード販売サイトをご紹介する。
●こんなリーダーが必要
ひとくちに電子書籍といっても、その配信形態はさまざま。単純なテキストファイルやJPEG画像から、HTML、PDF、著作権を施した独自形式を採用するタイプまで非常に多彩だ。有料の電子書籍を利用するにあたってどんな専用プラグインやソフトが必要か、代表的なものを見ていこう。なお無料サービスを中心に、Webブラウザだけで閲覧できる電子書籍もある。
■ Adobe Reader
http://www.adobe.com/jp/products/acrobat/readermain.html
電子文書フォーマットとしておなじみのPDF形式ファイルを読むためのリーダー。利用中のパソコンにインストール済という方も多いはずだ。Windows版、Macintosh版、さらにPDA版など、複数のバージョンが用意されている。
■ ブンコビューア
http://books.spacetown.ne.jp/sst/menu/xmdf/viewer.html
シャープが開発した電子文書フォーマット「XMDF」を読み込むためのソフト。Space Town ブックスやBitway-booksなど、複数の電子書籍販売サイトでサポートされている。なおWindows用に加え、Pocket PC用も公開されている。
■ ebi.Book Reader
http://www.ebookjapan.jp/shop/info/ver3/
eBookJapanなどでサポートされている電子書籍リーダー。書籍を閲覧する用途に加え、購入した書籍を書棚に並べる感覚で整理・管理できる機能を備えている。
■ T-Time
http://www.voyager.co.jp/T-Time/
「ドットブック」「TTZ」形式の電子書籍を閲覧できる専用リーダーで、開発はボイジャー。大手サイトでの採用例も多い。基本的に無償のソフトだが1,050円のライセンスキーを別途購入することで、画像化した文面をPSPやデジタルカメラを使って読むための「書き出し」機能が無制限に利用できるようになる。
■ LIBLIe
http://www.sony.jp/products/Consumer/LIBRIE/
ソニーが発売する、携帯用電子書籍リーダーのブランド。現在発売中の「EBR-1000P」は、グレースケール表示に対応した6型ディスプレイを備えた小型機器で、「Timebook Town」で購入した電子書籍を読むことができる。
●まずは無料で試してみよう
電子書籍の魅力といえば、著名作家や専門家が練りに練った質の高い文章を、パソコンで読めること。有料コンテンツを購入する前に、まずは無料のサービスを試して、その便利さを実感してみよう。
■ 青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/
作者の死後50年を経過するなどして、著作権の消滅した作品を無料で公開するサービス。夏目漱石や森鴎外など、著名作家の作品も並ぶ。各作品ともテキストファイル、XHTML形式などでデータを公開。また専用ソフトウェアを要する方式として「エキスパンドブック」に対応する。
■ 国立国会図書館 電子図書館の蔵書
http://www.ndl.go.jp/jp/data/endl.html
国会図書館が収蔵する重要文化財の画像などを公開する。「近代デジタルライブラリー」では明治期に刊行された図書12万冊以上をJPEG形式の画像で保存・公開している。閲覧のためのプラグイン等は不要。
■ デジタルイメージマガジン
http://www.digibook.com/ja/
キヤノン、ニコン、オリンパスなどが発売する一眼レフデジタルカメラの魅力を伝える、無料の電子書籍。写真家によるレビューや作例で構成されており、現在は17機種分のデータが公開されている。閲覧するにはトリワークスの「蔵衛門デジブック」をインストールする必要がある。
■ ホビダスライブラリ
http://www.hobidas.com/library/
ネコ・パブリッシングが発行する、自動車やオートバイなど趣味分野の雑誌を閲覧できる。過去に発行された雑誌創刊号や絶版本などに加え、2006年発行の最新雑誌もラインナップされる。DHTMLとFlashを利用した2種類のリーダーが用意されており、プラグイン等のインストールを特に意識することなく閲覧できる。
■ COMIC SEED!
http://www.comicseed.jp/
電子書籍の新たな潮流になっていきそうなのが、Webを使った漫画の配信だ。こちらは双葉社が発行する無料のWebコミック誌。月刊で、毎月末に最新号を公開していく。プラグインをインストールしなくても読めるのも嬉しい。なおバックナンバーは2号分のみの公開となっている。
■ Webブラッド
http://web.comicblood.jp/web/
月刊雑誌、パソコン向け電子版、携帯電話向け電子版の3種類から構成される少年コミック誌。Webブラッドはパソコン向けのサイトで、ストーリー漫画から4コマギャグ漫画など多彩なジャンルの作品を掲載している。閲覧には専用プラグイン「FLIPPER」をインストールする必要がある。
■ ただ読み.net
http://www.tadayomi.net/
電子書籍の販売サイトで公開される無料サンプルなどをまとめたリンク集。青空文庫提供による過去の名作全文などもラインナップされる。必要なプラグインは作品によって異なるので、事前にチェックしよう。
●電子書籍を探す、買う
では、電子書籍の販売サイトを見ていこう。話題の作品も数多くラインナップされているので、興味のある人はあちこち見てみると良いだろう。また「立ち読み版」などの名称で、無料サンプルを公開するケースも多いので、上手に活用してほしい。
■ eBookJapan
http://www.ebookjapan.jp/shop/
漫画や雑誌の電子版が豊富。週刊現代に掲載された内容を記事単位で購入することもできる。書籍の閲覧には、前述の「ebi.BookReader」を利用する。冒頭数ページが無料で読める「立ち読み」も一部のコンテンツで可能。
■ eBookJapan
http://www.ebookjapan.jp/shop/
漫画や雑誌の電子版が豊富。週刊現代に掲載された内容を記事単位で購入することもできる。書籍の閲覧には、前述の「ebi.BookReader」を利用する。冒頭数ページが無料で読める「立ち読み」も一部のコンテンツで可能。
■ dex-one.com
http://www.dex-one.com/
PDF形式に対応した電子書籍の販売サイト。ノウハウ伝授本からフィクションまで、幅広いジャンルのオリジナル書籍を揃える。複数の決済手段を用意しており、郵便局や銀行への振込以外に、電子書店パピレスやビットウェイブックスを通じて購入することもできる。
■ 電子書店パピレス
http://www.papy.co.jp/
和書、洋書から漫画に同人誌まで、幅広いジャンルをフォローする総合電子書店。電子書籍の形式はKeyring PDF、XMDF、ドットブックなど7種類におよぶ。購入作品に応じて対応ソフトをインストールしよう。なお無料サンプルが豊富なのも特徴だ。
■ ビットウェイブックス
http://books.bitway.ne.jp/
各種有料コンテンツの販売を手がけるビットウェイによる電子書籍サイト。Keyring PDF、XMDF、ドットブックなど複数の電子書籍フォーマットをサポートする。パソコン向けのほか、PDA版の電子書籍も揃えている。
■ e-NOVELS
http://www.so-net.ne.jp/e-novels/
小説家が生み出した作品をみずから直接販売するWebサイト。綾辻行人、京極夏彦、宮部みゆきら著名作家の作品も名を連ねている。電子書籍の形式はおもにPDF、ドットブックの2種類。なおe-NOVELS設立委員会の一員でもある我孫子武丸氏のコラムも「読み物」のページから無料で閲覧できる。
■ Space Town ブックス
http://books.spacetown.ne.jp/sst/
シャープが運営する電子書籍の販売サイト。大手出版社の文庫ラインナップなどが非常に豊富。XMDF形式のコンテンツを販売しており、Windows、Pocket PCなどに対応したソフト「ブンコビューア」を使って閲覧できる。
■ 電子文庫パブリ
http://www.paburi.com/paburi/
小学館、講談社、集英社など大手出版社が参画する電子文庫出版社会による電子書籍販売サイト。無料サンプルの立ち読みも可能。ファイル形式としてXMDF、ドットブック、テキストの3種類をサポートする。
■ 紀伊國屋書店BookWeb 電子書籍
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/indexp.html
全国にチェーン展開する紀伊國屋書店の通販サイト。製本された一般書籍に加え、電子書籍のオンライン販売も積極的に手がけている。PDF、XMDF、ドットブックなど各種の電子書籍フォーマットをサポートする。
■ PDAbook.jp
http://pdabook.jp/
モバイルブック・ジェーピーが運営する。サービス名称のとおりPDAでの閲覧に配慮しており、専用TOPページを設けるほか、PDAからのコンテンツ直接購入もできるという。XMDF、ドットブックなど6種類の電子書籍フォーマットをサポートする。
■ 楽天ダウンロード
http://dl.rakuten.co.jp/shop/rt/book/
楽天によるコンテンツのダウンロード販売サイト。パソコン向けソフトウェアのほか、電子書籍も取り扱われている。ファイル形式はXMDF、ドットブックなど作品によって異なる。なお購入にあたっては「楽天ダウンローダ」をインストールしなければならない。
■ DMM.com ブック
http://www.dmm.com/digital/book/
小説や漫画、アイドルの写真集など幅広いジャンルの電子書籍を販売する。作品ごとに対応するフォーマットは異なるが、プラグイン不要で閲覧できるものも多い。ソフトウェアのインストールをともなう形式としてはKeyring PDF、XMDFなどが挙げられる。
■ ウェブの書斎
http://www.shosai.ne.jp/
大日本印刷が運営するパソコン、PDA向けの電子書籍販売サイト。PDF、ドットブック形式のコンテンツを取り扱う。また注文に応じて紙の書籍を印刷・製本してくれるオンデマンドサービスも提供する。
■ Timebook Town
http://www.timebooktown.jp/
ソニー、講談社、新潮社などが出資するパブリッシングリンクによる。ソニーが発売する携帯用電子書籍リーダー「LIBLIe」やWindows用の独自ソフトウェアに対応したコンテンツを販売する。購入後60日間のみ閲覧できる安価なコースも用意されている。
■ ΣBook.jp
https://www.sigmabook.jp/
ΣBook(BKE-AW-N7)はパナソニックが2005年10月まで出荷していた、携帯用電子書籍リーダー。ΣBook.jpでは同端末で閲覧できる専用コンテンツを販売している。
■ Yahoo!コミック
http://comics.yahoo.co.jp/
ポータル最大手、Yahoo! JAPANによる。著作権保護の施されたデータをユーザー側のパソコンに保存するのではなく、サーバー上からストリーミング配信するというサービス。閲覧にあたっては専用プラグインが必要となる。また、無料立ち読みキャンペーンとして50~100ページ程度無料で読める作品を複数公開中。
■ Webコミック GENZO
http://www.gentosha-comics.net/genzo/
幻冬舎による連載漫画の配信サービス。「日本一安い本格漫画配信サイト」を謳っており、「スピカ」「幻蔵」「MAGNA」の3誌分を210円で読める。収録作品は合計20タイトル以上。毎月28日発行。
■ TezukaOsamu@Book
http://book.tezuka.jp/
手塚治虫によるコミック作品を電子書籍として販売するサイト。手塚の代表作である「ブラック・ジャック」や「火の鳥」などもラインナップされる。ebookjapanのシステムを利用して配信されており、閲覧には「ebi.Book Reader」が必要。
■ hon.jp
電子書籍専門の検索エンジン。大手の電子書籍販売サイトを横断的に検索できる。検索結果からは、コンテンツの販売ページへ直接遷移することが可能。携帯電話向けコンテンツの取得用にQRコードを表示する機能もある。
●電子書籍のアレコレを知る
最後に、ここまでの項目で紹介しきれなかった電子書籍関連サイトを見ていこう。おもに、業界団体や携帯電話向けの電子書籍販売サイト、書評に関するWebサイトをまとめた。
■ 日本電子出版協会
http://www.jepa.or.jp/
電子出版の普及を目指して活動する団体。会員各社向けにセミナーなどを開催している。一般のユーザーでも「JEPAニュース」のコーナーから関連する最新ニュースやコラムなどを閲覧できる。リンク集のページも便利。
■ いまよむ
http://imayomu.269g.net/
iモードやEZwebなどの携帯電話向けに提供中の電子書籍販売サービス。こちらのWebサイトでは、提供コンテンツの検索が可能。また作品紹介ページに掲載されるQRコードを利用することで、販売ページを携帯電話上で直接開くことができる。
■ ちょく読み
http://www.kadokawa-mobile.co.jp/yomi/
角川モバイルによる携帯電話向けの電子書籍販売サイト。角川スニーカー文庫、富士見ファンタジア文庫の作品などがラインナップされている。ちなみに、ページ中ほどに配信作品一覧表ページへのリンクが設けられている。「携帯電話のパケット代を少しでも節約したい」という人は前もってチェックしておくと良いだろう。
■ デジタル読書トレンドWatch!
http://book.asahi.com/trendwatch/
朝日新聞社のWebサイト内で連載中の“電子書籍版書評”。電子化された著名本の紹介とともに、どの販売サイトを通じて配信されるかといった業界事情的なことにも言及しているのがポイント。「どの電子書籍から読もうか」と思っている人にもオススメだ。
■ 復刊ドットコム 電子ブック化復刊リクエスト
http://www.fukkan.com/ebook/
書籍の復刊依頼を一般ユーザーから広く受け付ける「復刊ドットコム」による。通常書籍として復刊依頼に加え、こちらでは電子書籍化の依頼を募っている。
■ Google ブック検索
http://www.books.google.co.jp/
検索サービス最大手、Googleが2006年内の開始を目指して準備中の新サービス。出版社から提供された書籍をデジタル化し、全文検索できるようにするという。著作権の消滅した作品については書籍全体の閲覧も可能とのこと。今後の動向に注目しておきたい。
(2006/9/15)
[森田秀一]
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