被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

ネットオークションやフリマサイトでの詐欺パターンを知る

 手持ちの不要品を売ったり、格安で中古品を手に入れるために、ネットオークションサイトやフリマサイトを利用している人は多いだろう。もちろん、サービスを提供している企業は不正が行われないようにさまざまな対策を講じているのだが、それでもネット詐欺行為は行われている。今回はその事例を紹介する。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

ネットオークションやフリマサイトでもネット詐欺は多発している

 よくあるのが、料金を振り込んだのに商品が送られて来ないパターン。到着予定日を過ぎて連絡してみると、住所の記載ミスで戻ってきてしまったとか、こちらの手違いでまだ発送できていないとか、家庭の事情で遅れたがすぐに手配するとか言ってくる。しかし、それでもまだ発送しない。なぜなら、同時多発的に多数の出品者の入金を限界まで集めているから。そして最後には一斉に連絡を絶ってしまうのだ。

 もう少しレベルが落ちると、商品説明と異なるものを送ってくることがある。写真では綺麗に見えていたのにボロボロだったり、写っていない部分にキズがあったりするのだ。返品を要求すると、ノークレーム・ノーリターンと書いてありますよね、と反論してくる。

「ヤフオク!」のヘルプページ。連絡が取れなくなったら、内容証明郵便を送ったり、少額訴訟制度を利用したり、警察へ被害届を出すと言った対処法が紹介されている

 逆に、商品を盗もうとする詐欺も多い。後払いするので先に送ってくれ、というのが最もシンプルなパターン。手が込んでくると、ネットバンクから振り込んだと画面キャプチャを送ってきて、すぐに発送してくれと言ってくることもある。画像は偽造で、送金などしていないのだ。もちろん、商品を送っても、入金されることはない。返品するように言っても無視されるか、全然関係ない商品を返品してくることもあり、泥沼にはまってしまうのだ。

 さらに悪質なパターンとして、商品を受け取り、部品を交換してからクレームを付けて送り返すケースも報告されている。例えば、新古品として出したスマホからバッテリーを取り出し、自分の古いバッテリーと取り替えて送り返すのだ。

 偽ブランド品を売るのも定番だ。あまりに激安ならそもそも疑うべきだが、写真が本物だったり、ちょうど良い値付けだったりすると見抜くのが難しいこともある。

 明らかな詐欺であれば警察に届け出できるし、サービス側の補償サービスも利用できるかもしれない。しかし、これらのトラブルは、先方が「勘違いしていた」「単に送る商品を間違えた」というと即違法行為にはならないという問題がある。被害額が少額の場合、裁判まで行うのも面倒なので、泣き寝入りしてしまう人も多い。

 オークションサイトやフリマサイトを利用する際の完全な防御法はない。リテラシーが高くても、先方がだます気であれば、見破れないことも多々あるのだ。ただし、被害を最小限に抑えるための心構えだけはしておきたい。

 出品されているページや相手の情報、やりとりしている画面のキャプチャは保存しておこう。入金してから発送、受け取り確認してから評価、という王道の流れを変えるのもNG。一部入金で発送するとか、先に評価してくれ、と言ってきたら黄色信号だ。手数料がもったいないので直接取引をするなど、自分から泥沼に片足を突っ込んでいるようなもの。あり得ないほど安い商品には何か理由があると考えるべき。そもそも、相手は企業ではないので、トラブルが起きる可能性は常にあると考えておきたい。

「メルカリ」のヘルプページ。トラブルが解決する前に受け取り評価をしてしまうと手が出せなくなってしまうことがあるので要注意

 トラブルに遭うとみんな言うのが、「今まで何度も取引してきたのに、こんなこと初めて」という台詞。上級者だったのではなく、単にこれまで運が良くトラブルに遭わなかっただけなのだ。心構えもなく何度も取引していれば、いつか必ずトラブルに遭遇する。自分だけが特別などと、絶対思わないで欲しい。

 一度トラブルに遭うと、金銭的だけでなく精神的にも大きな被害を被ってしまう。ちまちま安く済ませていた分などすべて吹き飛んでしまい、全部きちんとしたショップで買っていればよかったと後悔することだろう。

 オークションサイトやフリマサイトを利用するなら、きちんとしたリテラシーを身に付け、ルールに則ってできるだけ安全な取引をして欲しい。

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DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援する団体で、現在、NPO法人の申請中です。今後は、媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行う予定となっています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。