被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
高齢者のネット詐欺被害を撲滅しよう!
都税事務所からSMSでの催告開始、ネット詐欺も遠からず発生するので心構えを!
2019年7月12日 06:00
東京都は6月25日、SMSを利用した納税催告を開始すると発表しました。日中に電話をしたり、自宅を訪ねても連絡が取れない人へ催告するための新たな連絡手段というわけです。
現在は、ほとんどがメールで、次にLINEなどのチャットツールでコミュニケーションしている人が多いのではないでしょうか。SMSは電話回線を利用して送受信するので、利用時に料金が発生することもあり、普段使いには適していません。しかし、2段階認証のコードや宅配便の配達時間などの通知に利用されており、連絡を受けることには違和感がないことでしょう。
SMSで催告するというのは、とても効率的です。本来払うべき税金を払っていない人に膨大な手間と人件費をかけて連絡するのはいろいろと非効率です。SMSでサクッと連絡でき、一定の割合が対応してくれるなら、税金の節約になりますし、まさに働き方改革とも言えるでしょう。しかし、とても大きなリスクが潜んでいることにも注意しなければなりません。
東京都のホームページには「振り込め詐欺にご注意ください」として、3パターンのネット詐欺を紹介しています。「銀行口座への振込みやATMの操作を求めること」「通帳やキャッシュカードを預けるようお願いすること」「個人情報をSMSで送信したり、SMSでお聞きすること」です。
税金を今日中にコンビニのATMから送金しないと裁判するとか、代わりにお手続きするので伺った担当者にカードを渡してくれとか、身元を確認するので氏名と誕生日を教えてくれ、といったネット詐欺が考えられます。これは、もちろん無視しなければなりません。SMSにはURLを記載しないと明言しているので、URLがあったらその時点でネット詐欺確定です。
最も怖いのは折り返しの電話を求められることです。なんと、正規の送信内容として、折り返しのご連絡のお願いがあり得るのです。発表では、「〇〇都税事務所です。お伝えしたいことがあります。お電話ください。【電話】03-xxxx-xxxx(徴収課〇〇班)※送信専用のため返信不可」といった文面イメージが公表されています。
つまり、今後この同じ文面で電話番号だけ変えたネット詐欺が発生する可能性が非常に高いということです。東京都がSMSで納税催告をするというニュースはあちこちのメディアで取り上げられています。上記の文面が来たら、心当たりのある人は、「ああ、ニュースでやっていた催告か。そろそろ払わなきゃな」と考えることでしょう。金銭の振り込みは元からするつもりだったのですから、ネット詐欺としてはとても効率がいいものになるでしょう。
送信元の電話番号の一覧はホームページに表示されています。相手の番号を確認し、都税事務所の電話番号なのか確認し、一致すれば正規の催告と言うことがわかります。ソフトバンクの場合は「0032-06-9000」からメッセージが送信されます。しかし、催告があったらこの一覧を検索しろとユーザーに押し付けるのは無理があります。ほとんどの人は、そのままSMS内の電話番号をクリックして、電話をかけることでしょう。
対策としては、SMSから折り返しの電話は絶対しない、ということです。東京都も、このアプローチだけはなるべく早く削除するべきだと思います。都税事務所の一覧から、徴収課の電話番号を調べて自分からかけると安心です。
納税催告のSMSが詐欺の温床になりかねない、という認識が広まればぐっと被害を抑えることができます。ぜひ、この記事をご両親にシェアしてあげてください。この情報が必要なシニア層は、最新の情報を得るタイミングが遅くなりがちで、そのタイムラグで被害に遭ってしまいかねません。せっかく払ったのに、税金は残ったままなんて、悔しすぎます。SMSの取り組みが始まってしまったのは仕方がないので、ぜひ防御を固めてください。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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