被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

ウェブ閲覧中に突然「ウイルス感染」の警告画面、表示されても焦って電話しないで

 ウェブページを閲覧しているときに、いきなり警告画面が表示され、同時に「ウイルスに感染しています」と音声が流れることがあります。これは「サポート詐欺」と呼ばれるネット詐欺のひとつです。実際にはウイルスには感染していなくても、偽の警告画面を表示することで焦らせ、結果的にウイルス除去のためなどとして、コンビニなどで電子マネーを購入してカード番号を送るように指示してくるのが主な特徴です。

 国民生活センターの情報によると、全国の消費者センターに寄せられるサポート詐欺に関する相談件数は2018年度がピークで7211件でしたが、近年は5500件前後とやや減っています。しかし、被害金額の平均は、2018年度の3万9235円だったのが2021年度は14万1665円と大幅に大きくなっています。

ウェブ閲覧中にいきなり警告画面が表示されます

 サポート詐欺で表示される警告画面のメッセージには、トロイの木馬に感染し、メールや銀行のパスワード、写真などが漏えいしたようなことが書かれています。そして、マイクロソフトをかたり、問い合わせ先として050から始まる電話番号が記載されています。画面をクリックすると全画面表示になり、警告メッセージは再生され続けます。

 音声は音声合成で「このコンピュータはトロイの木馬ウイルスに感染しています。このウイルスはクレジットカード、社会保障番号、ID、電子メールアドレスなどの個人情報を追跡する監視ソフトです。あなたの情報はハッカーや第三者に送信され、ウイルスを送信し、コンピュータに損害を与える可能性があります。マイクロソフトエンジニアの品川東京からのサポートについてはフリーダイヤルに電話してください」という内容が繰り返し流れます。

 電話をかけると人が対応し、「遠隔操作でウイルスを除去するので、サポート料金を支払ってください」と言ってくるのです。支払方法として、クレジットカード決済を指定されることもあるのですが、現在の主流はコンビニで購入できる電子マネーです。数千円から数万円を要求してきますが、ケースによっては年間サポートをするという名目で10万円以上を要求することもあります。

画面をクリックすると全画面表示になり、電話をかけるように誘導します

尾木ママも被害に、指示に従ってAmazonギフト券を購入

 2018年、教育評論家の尾木ママさんがこのサポート詐欺の被害に遭い、その特集の番組に筆者も出演しました。実際に、尾木ママさんの自宅に伺い、被害にあったPCを拝見したことがあります。

 尾木ママさんのケースでは、けたたましい警告音が鳴ったそうです。夜間だったため、周りへの迷惑にもなるし、画面上には「アドレス帳に登録している知人にもウイルスがばらまかれて迷惑をかける可能性がある」などと書かれていて、焦ってしまいました。

 このときのオペレーターはたどたどしい日本語を話す女性だったそうです。そして、コンビニを回り、2万8000円分のAmazonギフトカードを購入し、番号を教えてしまいました。その際、ウイルス駆除のためとして、犯人に指示された遠隔操作ソフトをインストールしましたが、それは誰でも無料でインストールできる定番のフリーソフトだったそうです。ビジネスでも利用されており、オフィスから自宅PCにアクセスしてファイルを送る、といったことが可能なものです。

警告画面が出ても焦らず従わないこと

 このように、サポート詐欺はユーザーを焦らせたり、信用させるような文言を散りばめます。マイクロソフトやセキュリティ企業をかたるケースが多く、「トロイの木馬」や「マルウェア」などセキュリティ用語を連発しています。

 国民生活センターによると、60歳以上の被害者が増加しているとのことで、シニア層を狙っていることが分かります。そのため、被害金額も大きくなっていると考えられます。

 国民生活センターでは、「警告は偽物ではないか?」とまずは疑い電話しないこと、あわてず自分でPCの状態を確認する、判断できない場合は周りの人に相談する、といった対策を挙げています。

 また、警視庁のウェブサイトでは、サポート詐欺の対応方法を3つ挙げています。具体的には、警告画面が出ても安易に従わないこと。そして、記載されている電話番号に電話したり、犯人が要求するソフトをインストールしないこと。また、警告画面が消せない場合は、ウェブブラウザーを強制終了するかPCを再起動すること、です。強制終了の方法については過去記事『ウェブサイトを見ていたら「感染」警告画面、消せなくなったときの対処方法は?』をご参照ください。

 Windowsのセキュリティ機能である「Windowsセキュリティ」の警告であれば対応する必要がありますが、ウェブページ内に突然表示されるウイルス感染の警告はネット詐欺の可能性が高いと考えられます。電話をかけたりせず、ウェブブラウザーをすぐに閉じてしまいましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと