被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

サイト閲覧中にウイルスに感染警告、サポートセンターから電子マネーを買うように指示されたけど大丈夫?

 2021年11月25日、兵庫県警西脇署に「現金約60万円を騙し取られた」との届け出があり、詐欺事件として調べが始まりました。被害者の70代の男性は、自宅でPCを閲覧中に「ウイルスに感染しました」という警告画面が表示され、記載されている電話番号に電話したところ「元に戻すには保証契約が必要」と促されたそうです。結局、プリペイドの電子マネーを9回にわたって購入し、カード番号を教えてしまいました。

 これは「偽警告詐欺」「セキュリティサポート詐欺」というネット詐欺の1つです。ウェブブラウザーに嘘の警告画面を表示し、直すためにはセキュリティツールやサポートの料金を支払うように要求してくるのです。

 とても被害者の多いネット詐欺で、11月だけでもニュースになった事件がいくつもあります。冒頭の事例のほか、11月22日には島根県出雲市の男性が6万5000円分の電子マネーを騙し取られました。こちらも、「ウイルスに感染しています」と表示され、電話をかけると「ウイルス除去のための費用」を要求されました。

 11月9日にも北海道上川地方の70代男性が2軒のコンビニで合計27万5000円分の電子マネーを購入しました。しかし、2軒目のコンビニで店員が不審に思って警察に通報。電子マネーの番号を犯人に伝える前だったので、全額払い戻しができました。

「システムが壊れている」として、偽プログラムを販売しようとする詐欺サイトの例

 偽警告詐欺は、怪しいウェブサイトを閲覧中、ネット広告の仕組みを利用していきなり表示されることが多いです。ウェブブラウザーの設定によっては別ウィンドウで開いたり、全画面で表示されます。「ビーッ」という音を鳴らすこともあります。「閉じる」ボタンや「戻る」ボタンも表示されているのですが、クリックできないようになっており、ユーザーを焦らせようとします。

 電話をかけてしまうと、片言の日本語を話す外国人につながります。片言の日本語も、グローバル企業のサポートセンターならそんなこともあるかな、と思ってしまうのが怖いところです。そして、ウイルスをリモート除去するためには保証プランに入る必要があるなどと言って、最終的に金銭を騙し取ろうとします。

 数万円から数十万円まで被害金額はまちまちで、もちろん犯人は取れるだけ取ってきます。お金は主にコンビニで購入できるプリペイドの電子マネーを利用します。購入したら、番号を伝えるように言われるのですが、これは現金を渡しているのと同じことです。電子マネーカードが手元にあっても、番号を渡してしまったらすぐに使われてしまいます。

ウイルスに感染していると脅し、記載の電話番号に電話させようとする詐欺サイトの例

 セキュリティサポート詐欺の犯人は、たとえ警察でも捕まえるのは難しい状況です。ほとんどが海外から詐欺を仕掛けてきているうえ、利用している電話番号は自分の名義ではありません。

 騙し取った電子マネーの番号は記録されているので捕まえられそうなものですが、こちらからも足が付きません。騙し取った電子マネーはまた別の人物に売って現金化しているケースもあります。

 もちろん、騙し取った電子マネーを買い取るのも犯罪です。11月26日には、特殊詐欺グループが騙し取った電子マネー460万円分を不正に買い取ったとして、横浜市の男性2人が組織犯罪処罰法違反で起訴されています。

 被害を回避するにはまずこの手の詐欺が流行っていることを知ることです。警告画面が出てもウェブページを閉じてしまいましょう。画面が消せない場合は、関連記事「ウェブサイトを見ていたら「感染」警告画面、消せなくなったときの対処方法は?」を参考にしてください。

 また、信じてしまいそうになっても、警告画面に表示された電話番号をGoogle検索してみてください。詐欺に使われている番号であれば、何らかの情報がヒットする場合があります。

電話番号をGoogleで検索すれば、詐欺サイトだということが分かる場合があります

 スマートフォンを使っている場合でも同様の手口を見かけます。「ウイルスに感染している」という警告が表示され、有料のVPNアプリを購入するように勧めてくる事例も確認されています。このVPNアプリですが、まともな機能を備えていないのに、料金がとても高く設定されているのです。この詐欺については「スマホで激増、サブスクリプション型VPNへ誘導するセキュリティ詐欺」で詳しく紹介しています。

スマートフォンのセキュリティサポート詐欺では、サブスクリプションアプリを契約させようとする事例が確認されています

 本連載で個別の事例を学び、未知のネット詐欺に遭遇した場合でも被害に遭わないよう、デジタルリテラシーを向上させましょう。ウェブサイト閲覧中に警告ページが表示されたら、無視して閉じる、と覚えておきましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと