被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
それってセクストーション詐欺ですよ!
「私は言いたい、あなたは超変態です!」という脅迫メールが届いた
2019年11月1日 06:00
昨年、この連載で紹介したネット詐欺の1つが、最近になってまた猛威を振るっているので警鐘を鳴らしておきたいと思います。『自分の個人情報をごっそり持っている相手に、AVを見ている姿を録画された!』で取り上げたように、PCをハッキングして個人情報を盗むだけでなく、アダルトサイトを見ている様子を録画したと脅してくるのです。このように性的な脅しをちらつかせてだましに来る行為のことを“セクストーション(性的脅迫)詐欺”と言います。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
昨年流行してから、しばらく見かけなかったのですが、最近いきなり増え始めました。精度の高いものは、こちらのメールアドレスはもちろん、名前から電話番号まで押さえた上でネット詐欺にひっかけようとしてきたので、とても危険でした。これに対して最近出回っているのは、メールアドレスのみで仕掛けてきているので、危険度は低めです。しかし、すでに被害は発生しているので油断はできません。
セクストーション詐欺はインパクトが絶大です。例えば、9月に来たメールの内容を紹介しましょう。「2019年11月6日にOSをハッキングして、筆者のメールにフルアクセスした」というのです。未来の日付になっているので説得力ががた落ちですが、読み進めます。
「このマルウェアはパスワードを傍受している」「あなたの使っているルーターの脆弱性を突いて、トロイの木馬を仕込みました」「あなたのアドレス帳や閲覧履歴などの情報を全て取得しました」などと、IT単語を並べてそれらしい雰囲気を醸し出します。
そして、こう続きます。「私は言いたい、あなたは超変態です!(I want to say - you are a big pervert. )」。
どうでしょうか。万一、このメールをネット詐欺と分からずに読み進めた場合、ひやりとする人もいるのではないでしょうか。
そしてトドメが「あなたが楽しんでいるウェブサイトのスクリーンショット(何のことか分かりますよね?)と、あなたが楽しんでいるところを録画しました(あなたのPCのカメラを使いました)」と来ます。カッコで注釈を入れてきているのに、イラッとしますね。
このスクリーンショットや動画をアドレス帳に載っている人たちにばらまかれたくないなら、700~1000ドル程度をビットコインで送るように脅してきます。ビットコインの補充方法が分からない人のために、検索キーワードまでご丁寧に記載しています。
試しに指示されているビットコインのアドレスを確認してみました。すると、数件の入金があり、すでに全額が他のアドレスに送金されていました。被害者の可能性は高いでしょう。
ビットコインアドレスの情報を共有するウェブサイトには、このアドレスについて79件ものレポートが寄せられていました。ほとんどがセクストーション詐欺に使われているという警告でした。
念のため説明しておきますが、これはネット詐欺です。ネットに漏えいしたメールアドレスを入手し、嘘のメールをばらまいているだけです。PCに不正アクセスしていませんし、ウェブの閲覧履歴もスクリーンショットも楽しんでいる動画も取得されていません。自分のメールアドレスから届いたように見えるのは簡単な偽装操作で実現できるもので、恐れるに値しません。
ただし、だまされるときは、ころっとだまされてしまうものです。この手の詐欺は、信じるか信じないかの2択なので、対策が限られます。詐欺の手法を知り、見破って無視すること。
もしくは、よく分からない場合、誰かに相談しましょう。家族や知人に相談できない場合、全国の消費者センターやサイバー犯罪相談窓口に連絡してもよいでしょう。NPO法人デジタルリテラシー向上機構のメールにスクリーンショットと状況をお送りいただければ、アドバイスできるかもしれません。
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NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。