被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

「サポート詐欺」で49万円詐取、遠隔操作で手数料振り込み中に“ゼロを足す”斬新な手口

サポート詐欺は電話で遠隔操作や支払いの指示をしてきます。

 神戸新聞NEXTが2月24日、偽の警告画面で偽のサポート窓口へ連絡を促す「サポート詐欺」に関連する事件について報じたのですが、ネット詐欺師によるお金の盗み方が斬新な手口でしたので紹介します。

 1月29日、兵庫県伊丹市に住む80代男性がPCを使用中に「ウイルスに感染」との警告画面が表示されました。男性はその警告を信じ、表示された欄に自分の電話番号を入力すると、ソフトウェア会社を騙るネット詐欺師から電話がかかってきました。

 ネット詐欺師の指示に従って開いたウェブページで6桁のコードを入力したのですが、実はこのときに男性のPCには遠隔操作ソフトがダウンロードされていたのです。作業が終わったあとにサポート代金の1万円と手数料の490円をネットバンキングで振り込むことになったのですが、男性が目を離した隙にネット詐欺師によって手数料の桁にゼロを3つ遠隔操作で付け足されてしまったのです。結果的に、49万円を送金してしまうことになりました。同様の手口で、1月30日には洲本市の50代女性も被害に遭って、250万円を騙し取られています。

 今回のサポート詐欺のケースで特徴的なのは、ネット詐欺師の電話番号を警告画面に載せて電話をかけさせるのではなく、被害者に自分の電話番号を入力させている点です。ネット詐欺師が電話の対応をしなくても、ネット詐欺に騙されやすい人物の電話番号を入手できるので、この先の詐欺が成功するにせよ失敗するにせよ、ネット詐欺師に損はありません。ここで入手した電話番号はリスト化され、ダークウェブなどで販売されることになるでしょう。

 また、遠隔操作中にネットバンキングで振り込ませる段階まで誘導している点も特徴的です。これによって入力する金額をネット詐欺師側で変更できる隙ができるのです。

偽の警告画面が出たらウェブブラウザーの画面を閉じること

 今回の被害者が入金額を変更されたことに気付かなかったのは、想像ではありますが、画面から目を離す切っ掛けとなる会話があったからではないでしょうか。画面には49万円を振り込むと出ていたはずですが、確認せずにうっかり振り込んでしまうことが考えられます。

 このようなサポート詐欺に遭わないためには、やはり事例を学ぶことが重要です。ウェブサイトの閲覧中、「ウイルスに感染しました」などと表示されても画面を閉じて無視しましょう。

 次に、遠隔操作を受け入れないことが重要です。サポート詐欺で電話の指示に従い、自ら遠隔操作ソフトをインストールしてネット詐欺師の操作を受け入れるのは他人を自宅に上げているようなものです。ウイルス除去の名目でサポート代金をその場でネットバンキングから送金させたり、電子マネーの番号を送らせて支払わせようとするのもネット詐欺の手口です。絶対に言うことを聞いてはいけません。

 サポート詐欺の画面を見慣れている人であれば、無視するのが当たり前かもしれません。しかし、最近になってからPCを使い始めたシニア層だと、偽の警告画面を見て焦ってしまうかもしれません。

 本連載の記事を参考に、未知のネット詐欺に遭遇した場合でも被害に遭わないデジタルリテラシーを身に付けましょう。家族や知人に高齢者がいる方は、大金を失う前に、偽の警告画面が出たらウェブブラウザーの画面を閉じればいいとか、不安なことがあれば自分に相談してくれ、などと声を掛けてあげましょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと