被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

突然「Googleをお使いのあなた! iPad Air 2の当選者に選ばれました」と表示された

 ウェブを閲覧していると、あるとき突然に新規タブが開き、「おめでとうございます! Googleをお使いのあなた! <製品名>の当選者に選ばれました。OKをクリックして景品をお受け取りください」と表示される。このポップアップは「OK」をクリックするしかないのが小憎らしい誘導の1歩目。ギフトは、Googleユーザーに対して感謝の印だという――。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

 3問の質問に回答すると、商品を受け取れるという。ここで個人情報を聞いてきたらアウトなのは分かっている。しかし、質問は「Googleの創立者は?」となっている。しかも、下のコメント欄には、iPad Air 2が届いたという感謝の投稿が並んでいる。このリワードは無作為に選ばれた10人に送られ、あと1分30秒で他の人に移行するとカウントダウンが進んでいる。

特に怪しいサイトを見ていないのに新規ページが開いて、当選したと表示される
まずはクイズをする。下のコメントはいかにもサクラっぽい

 この時点では問題ないか……と回答をクリック。すると、「Googleの本拠地はどこ?」「Googleが創立された年は?」と質問が続き、回答すると全問正解となる。あえて全問外しても、全問正解となるのがネット詐欺っぽいところ。

 そして、商品を選択できるようになる。しかし、iPad Air 2や他のスマホは在庫切れ。「Movie Card Streaming」のみ選択できるようになる。クリックすると、オンライン動画サービスの入会画面のようなものが開き、「無料で登録!」と表示される。

全問外しても全問正解になる
商品の選択画面が開くが、iPad Air 2などは在庫なしになっている

 これは当選詐欺の1つ。ただ、ちょっと手の込んだ本格的なものだ。「Googleユーザーのあなた」とか「Googleメンバーシップ・リワード」と言っているが、Googleからとは一言も断言していないところ。ギフトを進呈するのはスポンサーとなっている。そして、「MOVIEFLIX」という「NETFLIX」のようなアカウント作成画面からのクレジットカード登録画面が開き、そこには「0.00ドル」でアカウントの確認を行うと書いてあること。そのサービス名はMOVIEFLIXとなっていないところ。要は、ネット詐欺として即アウト!ということにならないように、ギリギリの線を攻めているつもりなのだ。

 ちなみに、このクレジットカード登録画面で「隠された料金が発生することは決してありません」の下にある目立たない「契約条件」リンクを開くと、英文の規約が表示される。そこには「5 day trial, which Renews to a 1 month Premium Download membership at $49.95 USD/month if not cancelled prior to the end date.」と書いてある。5日間のトライアルのあとは月49.95ドルずつ課金されますよ、ということだ。

動画サービスを無料で使えるかのように見える登録画面が開く
クレジットカードの登録画面が開く
「契約条件」を開くと、課金内容が明記されている

 あり得ないほど美味しい話はあり得ない、という原則以外では、この詐欺を見破るのは少し難しい。クイズ画面はGoogle風のデザインになっているし、日本語もそこそこきちんとしている。何度も無料ということを繰り返すし、初回のクレジットカード情報入力も口座チェックにしか使わないと説明する念の入れよう。

 何よりこの詐欺画面は怪しいサイトを見ていなくても出てくる可能性があるのが怖い。これは、マルウェアではなく、広告ネットワークを介して表示されている可能性がある。つまり、普通のサイトを見ていても表示されるため、危険察知のアンテナが働きにくくなってしまうのだ。

 あえて言うなら、入力時間を制限して焦らせるのは詐欺の典型例だとか、表示されたウェブページのURLがGoogleと関係ないとか、そのURLのドメイン名でアクセスしてもホームページが表示されないとかヒントはある。そもそも、クレジットカード情報を入力する際に、規約を読まないのも被害に遭う可能性が高くなってしまうのでお勧めできない。

 今回のケースの対処法は、即、画面を閉じること。この事例を知っていれば、もちろん防げるのでご両親などにはこの記事を転送して読んでもらって欲しい。「おめでとうございます!」と表示されて、「お、もしかしたら!?」なんて思う人がターゲットにされているのだ。次に、怪しいと思ったら、そのURLをGoogleで検索してみること。今回も、この事例についての情報が大量に拡散しており、すぐに気が付くはず。判断の自信が無い高齢者なら、何はともあれ家族などに相談すること。

 今回のケースは毎月約5000円の引き落としが発生し続けるので、気が付かないと金額が大きくなってしまう。あり得ないほど美味しいことはあり得ないので、欲にごまかされないように注意して欲しい。

DLIS(デジタルリテラシー向上機構)

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援する団体で、現在、NPO法人の申請中です。今後は、媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行う予定となっています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。