被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
騙されないように注意!
異様に迫力ある“性的脅迫詐欺”のメールにたじろぐ、日本語も自然で「アダルトサイト閲覧中のあなたを録画した」
2020年9月25日 06:00
先日、「遺憾ながら残念なお知らせがあります」というメールが届きました。すぐにネット詐欺メールだとは気が付きましたが、読み進めていくうちに驚きました。日本語が進化しているのです。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
脅迫メールをばらまいて、騙された人からお金を奪うネット詐欺にはさまざまなパターンがあります。「アダルトサイトの使用料が支払われていないので訴える」という架空請求詐欺のほか、殺し屋だという者から「金銭を支払えば見逃してやる」と連絡が来るヒットマン詐欺といったものまであります。中でも定番な上、被害が大きいのが「セクストーション詐欺」です。
セクストーションとは、「sex(性的な)」と「extortion(脅迫)」を組み合わせた造語で、「性的脅迫」の意味になります。ユーザーのPCもしくはアダルトサイト側にマルウェアを仕込んで閲覧している動画とユーザーの姿を録画した、と脅してきます。どのようにして動画を撮ったのかを技術的に解説した上で「ばらまかれたくないならビットコインを支払え」と言ってくるのです。
以前は英語が中心で、その後、翻訳サイトを利用した直訳の日本語メールが出回りました。あまりにも日本語が変なので、そもそも意味が通じないこともあり、そこまで怖くはなかったのですが、最近の文面はレベルが上がっていました。
まず、文面が「ですます」調になっています。従来は、「だ・である」調もしくは混在が多かったのです。書き出しも、「親愛なる○○」などではなく「お世話になっております」から始まっています。「遺憾ながら、残念なお知らせがあります」なんて、日本語を知っていなければ書けないのではないでしょうか。
「アダルトサイトへの定期的な訪問に関して、責任があるのはあなたの方だと私は確認しております」とも書かれています。他にもぐいぐいとまともな日本語で脅迫してくるので、たじろいでしまいます。
その上で「閲覧動画とそれを見ているあなたの様子を録画した」と脅してきます。PC内のSNSやチャット、連絡先のデータも盗んでおり、その動画をばらまかれたくなければ、1500ドル相当のビットコイン(仮想通貨)を犯人のウォレットに送信するように指示してきます。
「この手紙について誰かに話したことを私が感知すると、ビデオはすぐに共有され、貴方のお知り合いが最初にビデオを見ることになるでしょう。その上、ビデオはウェブ上にも投稿されます!」と強烈なダメ押しもあります。
動画を撮影された、ということを信じてしまうと、恐怖でしかないでしょう。今回は、筆者のメールアドレスのみが漏えいしていたようですが、以前、メールアドレスに加えて住所や氏名、電話番号まで記載されたセクストーション詐欺メールが届いたこともあります。それでも、この手の内容はネット詐欺だということを覚えておいてください。
対処法は無視するだけです。メールを削除して、終わりです。ビットコインを支払うどころか、返信もしてはいけません。
実は、いよいよ日本人がセクストーション詐欺に手を染めたのかと思いきや、まだ外国人の手によるもののようです。メールの件名が「商業オファー」と意味不明ですし、「48時間以内にご返答を」と言っているのに、直後に「私に返信しても意味はありません」と書いていて、変だなと気付ける部分はあります。
しかし、最後の「ご幸運を祈ります! 今回はただ不運なだけだったので、次回はもっと気をつけてくださいね」という文を見るに、やはり人の手は入っているように思えます。
日本人相手だと、ビットコインで支払え、というのはハードルが高いのも被害が拡大しない原因です。実際、犯人のビットコインアドレスを検索したところ、今のところ被害はゼロでした。
ただし、今後さらに日本語がブラッシュアップされ、クレジットカードで支払えるようになると、被害が拡大しかねません。まだクオリティが低いうちに、デジタルリテラシーを高め、ネット詐欺を見抜けるようにしておきましょう。
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