被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー
だまされないように注意!
Instagramでモデルに勧誘。でも仕事はなく、毎月「マネジメント料」を支払わされた
2024年1月26日 07:35
今回は、筆者が所属するNPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)に寄せられた相談をご紹介します。ここでは相談者の女性をAさんとし、細部はぼやかしています。
2023年夏、AさんのInstagramアカウントにモデル管理会社の社長を名乗る人物からメッセージが届きました。Aさんは会社員として働きながら、モデルの仕事も時々していました。将来はモデル業を中心にしようと考え、InstagramなどのSNSで写真を公開していたのです。届いたメッセージは、モデルとして本格的に活動するように勧誘するものでした。面接はあるものの、契約できれば1件5万~30万円程度のギャランティの仕事を発注できるというのです。
しかも、その会社は社長が日本人女性ではあるものの、フランスで活動しており、本社もフランスにあるという説明を受けました。日本だけでなく、フランスでの仕事も請けることができるというのです。その際は、交通費やホテル代も経費で持つと言われました。
Aさんとしては、モデルの仕事が増えるのは嬉しいですし、海外旅行に行けることにも魅力を感じて、興味を持ちました。話を進めると、マネジメント料金として月額2万円を求められました。3年契約の中で発生した仕事のギャランティが、マネジメント料金よりも低い場合は全額返金するというのです。
仕事の話は来ない状態。問い合わせると「勧誘メッセージの送信」を促された
ビデオ会議ツール「Zoom」で面接が行われましたが、熱意のある社長だったのでAさんはマネジメント契約を行い、クレジットカードで月額2万円を払うことにしました。しかし、何カ月経っても一向に仕事の話は来ません。問い合わせると、会社のホームページに写真を掲載して露出を増やさないか、と提案されましたが、それにも数万円の手数料がかかると言われました。
仕事が欲しいと食い下がったところ、このモデル事務所の勧誘メッセージを50人に送信すれば、1万円支払うと持ち掛けられました。ここで、何かおかしいと感じて、Aさんは弁護士や我々に相談することになったのです。
話を聞くだけで、怪しく感じます。モデルの仕事がないことだけでなく、掲載料でお金をだまし取り、お金がだめなら労働力を搾取しようとしています。このモデル事務所のホームページを見たところ、フリー素材と無料ソフトで作ったものでした。英語と日本語の表記があり、海外の会社という雰囲気を出そうとしています。一方で会社情報の詳細は一切書いてありません。
しかし、この時点でネット詐欺と断ずることは難しく、警察への被害届を出そうとしても対応してくれない可能性があります。実は、この手のトラブルは他にもたくさん起きているのです。
例えば、タレントになりたい人が、SNSの広告などからオーディションやタレント養成スクールに連絡し、詐欺に遭うケースがあります。もちろん、今回の事例と同じく、「あなたのSNSアカウントを見た」というメッセージが届き、勧誘されるケースもあります。そして、会費や月謝、CD作成代といったさまざまな名目で、お金を支払わせようとしてきます。女性の場合、アダルト動画への出演も持ち掛けられることがあります。もちろん、レッスンを受けたからといって、仕事を紹介してくれるわけではありません。
消費生活センターに寄せられたこの手の相談のうち、73%が20代以下で、68%が女性とのことで、若い女性がタレントやモデルにあこがれる心理を狙った手口と言えるでしょう。
勧誘を受けて不安になったなら、まずは家族や消費生活センターに相談してください。消費者ホットラインへの問い合わせは「188(いやや!)」番です。アダルト動画への出演を強要された場合は、警察相談専用電話「#9110」番に連絡しましょう。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
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※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
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