イベントレポート

CEATEC JAPANで見た 日本の新技術・謎技術

全自動お片付けロボットシステムの“説明力”

喜多充成の“虫の眼”レポート #12

千葉・幕張メッセで10月16日から4日間の日程で開催された「CEATEC JAPAN 2018」で興味をそそられた展示物を、この展示会を定点観測してきた筆者が“虫の眼”で回顧する。

 ロボティクス業界の風雲児、Preferred Networksは、家庭のリビングを模したブースで、散らかったおもちゃを自動的にお片付けするロボットのデモを行った。iRobotのルンバに代表される全自動おそうじロボットはすっかり普及し、それなりにインテリジェントなものであると一般に認識されている。そこで、さらに複雑な「お片付け」というミッションがこなせるロボットを動かし、異次元のインテリジェンスを実感してもらおう――。そうしたデモの狙いは成功していたと思う。ロボットそのものの動作もさることながら、特に好感が持てたのは、会場脇に並べられたiPadを使ったARシステム。これをかざしてリビング内を見ると、床の上に散らばるおもちゃのひとつひとつにアノテーション(注釈)が表示され、お片付けロボットが事物や環境をどう認識しているかひと目で明らかになる。

 ロボットが生活に入ってくるときに重要なのが、相互のコミュニケーション。人間の意図や意思を受け止めるロボットの「認識力」とともに、ロボット自身が何を見て、どう認識し、どうしようとしているかを分かりやすく人間に伝える「説明力」が欠かせない。そのデモとしてだけ見ても、ハイレベルなもののように思えた。

「全自動お片付けロボットシステム」は、「CEATEC AWARD 2018」インダストリ/マーケット部門準グランプリを受賞。「従来のシステムでは困難だったタスクを実用レベルの精度で達成」したことなどが評価された

喜多 充成

1964年石川県生まれ。科学技術ライター。週刊誌のニュースから子ども向けの科学系ウェブサイトまで幅広く手がける。産業技術や先端技術・宇宙開発についての知識をバックグラウンドとし、難解なテーマを面白く解きほぐして伝えることに情熱を燃やす。宇宙航空研究開発機構機関誌「JAXA's」編集委員(2009~2014年)、共著書に『私たちの「はやぶさ」その時管制室で、彼らは何を思い、どう動いたか』(毎日新聞社)ほか。「インターネットマガジン」の創刊から休刊まで見届けたほか、「INTERNET Watch」では、「あるウイルス感染者の告白」「光売りの人々」など短期集中連載。