イベントレポート
CEATEC JAPANで見た 日本の新技術・謎技術
呼べば答え、歩き出すとついてくる「Bons-Ai」
喜多充成の“虫の眼”レポート #2
2018年12月6日 12:00
千葉・幕張メッセで10月16日から4日間の日程で開催された「CEATEC JAPAN 2018」で興味をそそられた展示物を、この展示会を定点観測してきた筆者が“虫の眼”で回顧する。
1970年に大阪・吹田で開催された日本万国博覧会には、いまも同時代人の記憶に残るブッ飛んだ遺産モニュメントや展示品が多く存在している。「太陽の塔」や「月の石」にも匹敵するインパクトを当時小学生だった筆者に残したのは、今はなき三洋電機の「人間洗濯機」。ハリボテの巨大キノコのようなバスタブに、タイトスキンのコンパニオンさんが搭乗する不思議な展示だった。生で見たのか写真かは曖昧ながら、コンセプトの振り切れ加減がものすごかった。
そんな記憶を呼び覚ましてくれたのが、TDKのコンセプト展示「Bons-Ai」、しゃべる盆栽である。鉢の内部に同社が得意とする多種多様なセンサーを仕込み、スマートスピーカーの機能も持たせた。紹介ビデオでは、石庭の縁側を歩く僧侶に少し遅れてしずしず移動する姿が何ともいじらしかった。
一方、ある意味でコンセプトより気になったのが、「Bons-Aiが、どういう社内検討を経て実現したのか?」だ。この提案にどんな異論やツッコミがあり、それをどう跳ね返して予算を獲得し実現にこぎつけたのか。そのパワーに敬意を表したい。さらに余談だが、モノによって数億円の値がつくこともある盆栽は、栽培植物であると同時にアート作品でもある。価値ある盆栽をガードする、セキュリティ機能を備えたインテリジェントな鉢ならば、すぐにビジネス化も可能だったりしないだろうか?
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喜多 充成
1964年石川県生まれ。科学技術ライター。週刊誌のニュースから子ども向けの科学系ウェブサイトまで幅広く手がける。産業技術や先端技術・宇宙開発についての知識をバックグラウンドとし、難解なテーマを面白く解きほぐして伝えることに情熱を燃やす。宇宙航空研究開発機構機関誌「JAXA's」編集委員(2009~2014年)、共著書に『私たちの「はやぶさ」その時管制室で、彼らは何を思い、どう動いたか』(毎日新聞社)ほか。「インターネットマガジン」の創刊から休刊まで見届けたほか、「INTERNET Watch」では、「あるウイルス感染者の告白」「光売りの人々」など短期集中連載。