イベントレポート

CEATEC JAPANで見た 日本の新技術・謎技術

湖・沼・海底を3Dマップ化する無人船

喜多充成の“虫の眼”レポート #7

千葉・幕張メッセで10月16日から4日間の日程で開催された「CEATEC JAPAN 2018」で興味をそそられた展示物を、この展示会を定点観測してきた筆者が“虫の眼”で回顧する。

 音波つながりでもう1件。電波の届かない水中では、音波にしかできない仕事がある。伊豆・三津浜に研究開発拠点を持つOKIシーテックは、ダムや河川などの水深を計測する「可搬ボート型マルチビーム測深機 CARPHIN V」を出展。

 見た目はラジコン操作の無人船だが、船底に超音波ソナーを備え、反射音をキャッチすることで水深を測る。強みは反射音がどの方向から返ってきたかを聴き分ける「マルチビーム測深」の機能があること。これにより、あたかも水底をスキャンするかのごとく広範囲の測深が可能となる。

OKIシーテックの宮地真さん(事業推進部事業企画課兼営業担当課長)が指差すのが、ボート船底の「マルチビーム測深機」の窓部分

 さらに船上にはGNSSアンテナを複数装備し、位置と方位を把握。加えて動揺センサーで船の姿勢も把握。水面なので船そのものの揺れは避けられないが、正確な座標と傾きの補正を加えることで、スキャンデータから水底の3Dマップを完成させるというスグレモノだ。誰もが必要とするものではないが、ダムをはじめとするインフラ管理の現場の苦労を減らすことで、誰もが恩恵を被ることのできるシステムである。

喜多 充成

1964年石川県生まれ。科学技術ライター。週刊誌のニュースから子ども向けの科学系ウェブサイトまで幅広く手がける。産業技術や先端技術・宇宙開発についての知識をバックグラウンドとし、難解なテーマを面白く解きほぐして伝えることに情熱を燃やす。宇宙航空研究開発機構機関誌「JAXA's」編集委員(2009~2014年)、共著書に『私たちの「はやぶさ」その時管制室で、彼らは何を思い、どう動いたか』(毎日新聞社)ほか。「インターネットマガジン」の創刊から休刊まで見届けたほか、「INTERNET Watch」では、「あるウイルス感染者の告白」「光売りの人々」など短期集中連載。