イベントレポート

CEATEC JAPANで見た 日本の新技術・謎技術

HMDで電波が見えるシステム(金沢大学)

喜多充成の“虫の眼”レポート #5

千葉・幕張メッセで10月16日から4日間の日程で開催された「CEATEC JAPAN 2018」で興味をそそられた展示物を、この展示会を定点観測してきた筆者が“虫の眼”で回顧する。

 大企業とスタートアップやベンチャー企業、さらには大学の研究室などがブースを連ねるのがCEATEC JAPANの面白さのひとつ。大学・ベンチャーが集積するコーナーで、金沢大学の「その場の電波環境がみえるシステム」に足が止まった。

 このシステムのカギとなるのは「電波可視化シート」と呼ばれる緑色のボード。LPレコードジャケットよりひと回りほど大きなボードの裏面に配線がびっしり、表面にはセンサーが格子状に配置されている。「その場の電波環境を可視化する」ためにやっているのは、これらのセンサーで電波の強弱を読み取り、空間の電波の強さを立体的に再現し、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)でカメラ映像に重ねて表示させる、ということ。重要なのは、センサーはあくまで黒子となり、自分のところに来た電波をしっかりキャッチして漏らさず、他のセンサーの邪魔をしないようにすること。こうしたシステムがあれば、アンテナの性能評価やEMC(不要な漏れ電波)計測が圧倒的に容易になるはずだ。

その場の電波強度をHMDで可視化する

 せっかくなので、アンテナ関連の電波技術ということで、前項で紹介した京セラの平松信樹氏を誘い金沢大学ブースを訪ねてみた。いったん話し出すと、学生さんたちとの間で専門用語の飛び交う意見交換が止まらない。あたかも卓球選手の高速ラリーを見ているよう。学生さんたちは、プロ中のプロに会えて感激し、平松氏も「よかったらインターン応募してね」とお互いに満足げ。さまざまなステークホルダーが集う展示会の意義を、象徴するシーンだったかもしれない。

真剣に聞き入る学生さんたち。早口の意見交換は、さながら「高速ラリー」

喜多 充成

1964年石川県生まれ。科学技術ライター。週刊誌のニュースから子ども向けの科学系ウェブサイトまで幅広く手がける。産業技術や先端技術・宇宙開発についての知識をバックグラウンドとし、難解なテーマを面白く解きほぐして伝えることに情熱を燃やす。宇宙航空研究開発機構機関誌「JAXA's」編集委員(2009~2014年)、共著書に『私たちの「はやぶさ」その時管制室で、彼らは何を思い、どう動いたか』(毎日新聞社)ほか。「インターネットマガジン」の創刊から休刊まで見届けたほか、「INTERNET Watch」では、「あるウイルス感染者の告白」「光売りの人々」など短期集中連載。