趣味のインターネット地図ウォッチ

iOS 12でスマホカーナビがますます便利、「CarPlay」で「Google マップ」が利用可能に

 iPhone XS/XS Max/XRの発売とあわせてリリースされた「iOS 12」。さまざまな新機能の追加や機能強化が図られているが、地図好きにとって気になるのが、「Apple CarPlay」対応ナビアプリの拡大だ。iOS標準マップアプリに加えて、他社製のナビアプリが利用可能になったのだ。9月23日現在、「Google マップ」が利用できる。

車載端末とiPhoneを連携

「Apple CarPlay」とは?

 「Apple CarPlay」とは、iPhoneやiPadと車載端末とを連携させるシステムのこと。iOSデバイスと車載ディスプレイを有線または無線で接続することにより、車載ディスプレイ上でiPhoneの電話や音声認識、音楽再生、メッセージ通知やナビアプリなどが利用可能となる。また、車載ディスプレイのタッチスクリーンやハンドルに搭載されたボタンなどで、アプリの操作やSiriの音声コントロールの起動なども行える。

 アプリの音声も車載スピーカーから再生されるので、iPhoneを単体で使うよりも、通話や音楽、ナビゲーションなどが聞き取りやすくなる。ナビゲーションの画面についても、iPhoneよりも大きな画面で見ることが可能となり、視認性や操作性が向上する。

iOS標準マップは、ナビアプリとしてもの足りない部分がある!?

 CarPlayでは従来、ナビゲーション機能はiOSの標準マップアプリしか使用することができなかった。iOSマップアプリはリリース当初は地図の間違いが多く不評だったが、現在はそのような間違いもなくなり、UIも進化し、Siriとの連携も可能で、かなり使いやすくなっている。ただし、日本ではリアルタイムの渋滞情報が表示できないことや、地図の好みなどを理由に、「Google マップ」や「Yahoo!カーナビ」などの他社製ナビアプリを使用している人は少なくない。

 こうした状況の中、今回の「iOS 12」では、ついにCarPlay上で他社製ナビアプリが利用可能となった。利用できるナビアプリは、日本ではまだGoogle マップのみだが、これによりCarPlayという機能に興味を持った人もいるのではないだろうか。

「CarPlay」では、地図の“注記”少なくシンプル表示

 iOS 12にアップデートし、Google マップも最新版に更新した状態でCarPlayを利用すると、ホーム画面上にGoogle マップのアイコンが表示されるので、これをタップするとGoogle マップが起動する。

 CarPlay上で見るGoogle マップは、iPhone上で動くGoogle マップに比べて注記が少なく、シンプルな地図になるが、道路は混雑状況に応じて色分けされている。なお、この地図はアプリのGoogle マップと同様に、航空写真にも切り替えられる。

「Apple CarPlay」のホーム画面。「Google マップ」のアイコンが表示される
混雑状況によって道路が色分けされている
航空写真に切り替え可能

車載UIで「Google マップ」快適操作、iPhoneの小さな画面には戻れない!?

 画面の左下にある音声入力マークをタップすると、「どこに行きたいですか?」と表示される。車載マイクに話し掛けることで目的地を設定し、検索できる。複数の経路が提示され、「同時到着予定」「5分増」などと、所要時間の差が表示されるのもアプリと同じだ。

音声入力の画面
目的地の設定画面
ルート探索の設定画面
ルート探索では複数の候補が示される

ヘディングアップではバードビュー表示、ノースアップでは2D表示

 案内中の地図画面は、ヘディングアップ(進行方向が常に上になる表示スタイル)の場合はバードビューに、ノースアップ(常に北が上になる表示スタイル)の場合は2D表示となる。右左折や交差点名の表示などは右上に大きめに表示され、iPhoneの小さな画面で見るよりも格段に見やすく、案内音声も車載スピーカーから聞こえるので聞き取りやすい。これに慣れると、iPhoneの小さな画面には戻りたくなくなる。

ヘディングアップではバードビューになる
ノースアップにすると2D表示となる

ヘッドランプのオン/オフ→地図の日中/夜間表示モード切り替え連動も

 また、地味に便利なのが、ヘッドランプのオン/オフに連動して地図画面の日中表示と夜間表示が切り替わること。日中でもトンネルに入ってヘッドランプを点けると夜画面になるので実に見やすい。ただし、この機能がすべてのCarPlay対応端末で使用できるかどうかは不明だ。

ヘッドランプを点灯させると夜画面に切り替わる

「Yahoo!カーナビ」でも検討中、「CarPlay」対応ナビアプリ拡大に期待

 CarPlayや「Android Auto」は現在、さまざまな自動車メーカーの純正ナビで採用されているほか、アフターマーケット製品でも対応カーナビが増えている。また、カーナビ機能を持たない“ディスプレイオーディオ”と呼ばれるディスプレイ一体型カーオーディオでも、CarPlay/Android Autoに対応した製品が増えつつある。

「Android Auto」の「Google マップ」

 今後気になるのは、Google マップ以外のナビアプリがCarPlayに対応するかどうかという点だ。この件についてヤフー株式会社の広報部に問い合わせたところ、Yahoo!カーナビのCarPlay対応は「検討中」とのコメントが得られた。

 CarPlayで使えるナビアプリの選択肢が増えていけば、カーナビ専用機ではなく、CarPlay/Android Auto対応の安価なディスプレイオーディオを選ぶ人が増える可能性もあり、ナビアプリ提供各社のCarPlayへの対応が今後、どのように進んでいくか注目される。

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INTERNET Watchでは、2006年10月スタートの長寿連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」に加え、その派生シリーズとなる「地図と位置情報」および「地図とデザイン」という3つの地図専門連載を掲載中。ジオライターの片岡義明氏が、デジタル地図・位置情報関連の最新サービスや製品、測位技術の最新動向や位置情報技術の利活用事例、デジタル地図の図式や表現、グラフィックデザイン/UIデザインなどに関するトピックを逐次お届けしています。

片岡 義明

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。