被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

遠隔操作アプリを使った副業詐欺に注意、「簡単に稼げる」に惑わされないで

 国民生活センターは6月7日、遠隔操作アプリに関する注意喚起情報を公開しました。副業詐欺と遠隔操作のコンボで大金を奪われる被害が相次いでいるためです。

 相談事例によると、この詐欺では「1日15分」「驚くほど簡単に稼げる」などと謳い、最初に数千円の情報商材を購入させるところから始まります。ネット詐欺師が狙うのはこの数千円だけではありません。このような投稿に引っ掛かるカモから、さらに多い金額をだまし取ることが目的です。

 ターゲットを見つけると、「手っ取り早く儲かるためのサポートプランがお勧め」などと言ってきます。しかし、その金額は100万円とか200万円と高額です。お金がないことを伝えると、「貸金業者で借金する方法を教えるのでスマートフォンに遠隔操作アプリを入れるように」と案内されます。指示されるままインストールすると、複数の消費者金融のウェブサイトで申し込みをして、その金額を指定された個人名義の口座に振り込むよう言われます。ネット詐欺なのですから、後で返金を申し出ても返してもらえるわけがありません。

遠隔操作アプリを悪用した副業詐欺の流れ。画像は国民生活センターの資料より

情報商材に関する相談件数は20代が最多

 情報商材に関する相談件数は2022年では前年より少なくなっていますが、支払い時に消費者金融から借金させたり、クレジット契約を組ませる手口の割合は倍増しています。手元にお金がなくても、言うとおりにすれば、もっと稼げると誘導され、だまされてしまうのです。

 情報商材を借金して購入した人のうち、なんと68.7%が20歳代です。20歳未満も3.5%います。50歳以上は8.2%と少なく、シニアよりも若年層がターゲットになっていることが分かります。30代は11.6%、40代は7.1%ですが、特に若い世代にこの手の詐欺を回避する方法を周知する必要があります。

情報商材の相談のうち借金させる手口が年々増えています。画像は国民生活センターの資料より

別のネット詐欺にも悪用される遠隔操作の危険性

 この手口は、ネット詐欺師が被害者自身で遠隔操作アプリをインストールさせ、起動後に接続を許可するための接続番号を共有させるよう指示します。その番号をネット詐欺師側の端末に入力し、被害者が接続を承諾することで遠隔操作できるようになります。

 遠隔操作アプリは自分のPCの画面がそのまま遠隔操作する相手にも見え、操作も自由にできるようにするアプリです。ネット詐欺師の操作を受け入れることは、自分の家にネット詐欺師を上げてしまうようなもので、画面上の情報は全て見られてしまいますし、被害者の代わりに消費者金融に勝手に申し込んだり、口座にお金を振り込むこともできます。お金を振り込む際、送金金額を増やすことも可能です。

 また、遠隔操作は偽の警告画面で偽のサポート窓口へ連絡を促すような「サポート詐欺」と組み合わさることもよくあります。ウイルスに感染したから直してあげます、などと言って遠隔操作アプリをインストールさせるのです

 この被害を避けるにはどうすればいいでしょうか。筆者の所属するNPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)にも数は少ないですが、遠隔操作アプリを悪用したネット詐欺に関する相談が寄せられます。ただ、ほとんどの方が自分では遠隔操作アプリなどインストールしていない、と言います。実際にPCを見せてもらうと、有名な遠隔操作アプリがインストールされていました。

 これは想像になりますが、ネット詐欺師はインストールと言う言葉を使わず、「そこをクリック」「OKをクリック」など、最低限の指示だけでインストールさせているのかもしれません。

 やはり、ネット詐欺を回避するためのデジタルリテラシーを身に付け、総合的な防御力を上げるしかありません。おいしい話は怪しいと副業詐欺に近づかず、万一、手を出してしまっても遠隔操作アプリは絶対にインストールしないようにしましょう。詐欺の手口を知っていれば、少々パターンが変わっても被害に遭わずに済みます。ご両親や自分の端末を持っているお子様などにも、ぜひ情報を共有してください。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

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高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと