みんなの在宅ワーク
第100回:コロナ禍とともに歩んだ在宅ワークを振り返る
連載100回記念。改めて在宅ワークについて考えてみる
2023年5月30日 06:55
百人いれば百通り。さまざまな在宅のワークスタイルを紹介するこの連載も、2020年5月の第1回から3年が経ち、今回で100回を迎えることになりました。今回は100回を記念して、これまでの連載を振り返りながら改めて在宅ワークについて考えてみたいと思います。
コロナ禍の変化に伴い在宅ワークも「実用系」から「ライフバランス系」へ
この連載の企画がスタートしたのは、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい始めた2020年4月のこと。元々は本誌の別連載「Work From ____」で、新しい働き方を取り入れているオフィスやコワーキングスペースなど、従来とは異なる新たな働き方を切り口に連載を進めていく予定でしたが、コロナ禍を受けて取材どころかオフィスで働く人も少なくなったという背景を踏まえ、半ば強制的に導入され始めていた在宅ワークに関する先駆者のTipsを紹介していく連載として企画がスタートしました。
そのコンセプトの通り、連載の初期は在宅ワークで利用するパソコンやディスプレイ、オーディオ機器などを紹介する実用的な記事が多く、記事の人気もこうした実用系が中心でした。記事のサムネイルに写っているディスプレイの数が多いとPVも多い……という相関関係も観測されたほどです。
モバイル回線を駆使して在宅ワークをこなすハック力の高い記事
「使い放題の携帯回線」で乗り切る、孤独の在宅ワーカー
第7回:Yusuke Sakakura(ブログメディア「携帯総合研究所」主宰)の在宅ワークスタイル(2020/6/19)
コワーキングスペースに住んでいるような在宅ワーク向きのシェアハウス
まるで「住むコワーキングスペース」――巨大シェアハウスで在宅ワーク
第13回:ミニサイト作り職人 和田亜希子の在宅ワークスタイル(2020/7/15)
一方、コロナ禍が良くも悪くも日常生活に馴染み始めた2022年後半ごろは、機材を中心とした実用系の記事はもちろん、どんなエリアで在宅ワークをしているのか、仕事とプライベートをどう棲み分けているのかというライフスタイル記事にも注目が集まるようになりました。
日本酒の瓶が並ぶオフィスには注目が集まりました
デスクには酒瓶、仕事はクラウド。「酒蔵DX」を推進する楯の川酒造のフルリモート広報担当
第86回:たかなしあんなの在宅ワークスタイル(2022/10/18)
観光ガイドという働き方は在宅ワークだけでなく現地調査も大事
作業場は自宅のお座敷と行きつけの酒場、青森県弘前市の「かだれ横丁」で調査活動も
第91回:路地裏観光ガイド/フリーランスライター 新橋の在宅ワークスタイル(2023/1/24)
サーフィンと仕事を両立するというワークバランス
午前はサーフィン、午後は仕事。「週一リゾートワークを化粧ポーチで最適化する方法」を紹介
第96回:akiyanのリモートワークスタイル(2023/3/28)
連載当初のころは執筆いただく方はもちろん、読者の方々も「快適な在宅ワークはどうあるべきか」を試行錯誤していたのに対し、コロナ禍が2年も続くことで在宅ワークが定着し、機材という在宅ワークの要はもちろんのこと、在宅ワーク時代のライフスタイルはどうあるべきか、という意識が高まってきたのかもしれません。
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第93回:南(富士ソフト株式会社)の在宅ワークスタイル(2023/2/14)
※年の途中のため上位3記事まで
完全在宅ワークからオフィス出社の流れが強まるワークスタイル
連載開始から3年が経ち、在宅ワークにも変化が生まれつつあります。マスク着用が個人の判断に委ねられることになり、5月からは新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したという流れの中、在宅ワークが当たり前だったこの数年に比べて、少しずつオフィス出社の流れが高まってきました。
筆者が先日取材したオカムラの新オフィス発表会では、2022年には完全リモートワークから原則として週3日出社へ運用が切り替わったとの説明がありました。筆者の周りでも、これまで完全リモートワークだったが週3日・週5日出社に切り替わっているという話をよく耳にします。
オカムラが新オフィス「We Labo」公開。求められる“仕事以外のコミュニケーション”を促す場所
(2022/12/15)
「リモートワークか、出社か」というテーマについては、筆者の連載「Work From ____」で、リモートワークする従業員としては自由な働き方ができるという魅力の一方、会社組織として見たときに社員間のコミュニケーションが取りにくいという課題について言及しました。
2年間の経験と取材で見えてきた「リモートワークの課題と期待」~ 筆者自身の考えをまとめてみた
甲斐祐樹の Work From ____ :第10回(2022/3/18)
実際に、出社を促す会社の多くはやはり社員間のコミュニケーションが大きな課題のようです。筆者の知人でも、従業員の立場ではリモートワークを希望する一方、管理職や経営者の立場からはやはり出社してほしい、と立場で大きく意見が分かれています。
会社という組織が利益を上げることが目的である以上、利益を上げるためには社員間のコミュニケーションが必要ということを考えると、この数年には当たり前だった完全リモートワーク環境は終わりを告げ、少しずつ出社の流れが高まっていくのかもしれません。
在宅ワークの定着で、着実に変化したワークスタイル
一方で、在宅ワークが完全になくなるわけではありません。出社を促す企業が増えてはいるものの、出社日が週3日として残りの日や申請があれば在宅ワークを併用している企業も多く見られます。また、コロナ禍を機に物理的なオフィスを廃してリモートワークに特化する企業もあり、こうした企業ではリモートワークこそが従来の働き方になるでしょう。
また、リモートワーク最大のメリットは場所を問わず働けることです。他の企業との打ち合わせや遠方の企業とのやり取りについては、移動時間をかけることなく打ち合わせができるようになりました。怪我などの理由で出勤は難しいが仕事はできる、という場合も、無理に外出せず自宅で作業をこなすことができるようになったのは、出社のみのワークスタイルに比べると柔軟な働き方になってきたと言えるでしょう。
企業としては、遠方に住む人を採用できるというメリットもあります。出社型の場合、どうしても公共交通機関などで通勤できる人しか採用できませんでしたが、リモートワーク前提の働き方であれば居住する地域にかかわらず採用できます。コミュニケーションの課題はあれど、それ以上に、より多くの人材を採用できる点にメリットを感じる企業も多いのではないでしょうか。
もちろん、前述のコミュニケーションの課題は残りますが、リモートワークに特化した働き方の場合は、数カ月に1回程度の頻度で集まる機会を作り、対面でのコミュニケーションを図るようにしている企業も多いようです。
コロナ禍という思わぬ理由で急速に根付いた在宅ワークですが、決してこの働き方は一過性ではなく、その一方で課題も多く完全な働き方でもありません。ただ、確実に今までにはない新しい働き方で、新しい価値を生み出すことができているのは確かでしょう。コロナ禍が落ち着きつつある中、リモートワークは対面とのバランスを取りながらより新しい働き方を考える時代が来たのかもしれません。