イベントレポート
CEATEC 2026
運用総額は950億円に迫る、ソニーグループのCVC投資戦略――医療ロボット、自動運転から“推し活”まで、共創を通じてアイデアを育てる
「Sony Innovation Fund」10年間の実績を紹介
2026年10月16日 17:48
ソニーグループは、「CEATEC 2026」において「Where Ideas Grow Through Co-Creation」をテーマに出展した。
昨年の出展と同様に、イノベーションの創出支援に主軸を置いた展示内容とし、今年は、投資とインキュベーションを通じて事業を共創する「Sony Innovation Fund」の活動を紹介した。
Sony Innovation Fundは、ソニーグループのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)で、次世代を担う革新的なテクノロジーや、ビジネスモデル、サービス、プロダクトを持つスタートアップ企業への投資および社内インキュベーション、事業共創によるビジネス支援を行っている。
「共創を通じて、アイデアが育ち、新たな事業や価値へと発展」
CEATEC 2026のソニーグループブースの展示では、2016年の設立以降、Sony Innovation Fundが投資してきた10年間の実績や活動などを紹介。投資した企業によるプロダクトやサービスの一部を展示した。
ソニーベンチャーズの古川圭佑氏(シニアインベストメントダイレクター)は「ソニーグループは、社内からのイノベーション創出だけでなく、グループ以外の企業との連携により、多様なアイデアや技術、人材をつなぎ、その可能性を育てることに取り組んでいる。CEATEC 2026では、その取り組みを見せたいと考えた。共創を通じて、アイデアが育ち、新たな事業や価値へと発展していく取り組みを紹介している」と語る。
ソニーベンチャーズは、ソニーグループのファンド運営を事業として推進するため、100%子会社として2021年に設立した企業で、同社の投資専門チームがSony Innovation Fundによる投資活動や投資先の成長支援を行っている。Sony Innovation Fundは、ソニーグループ以外からの出資も募り、運用している点が特徴的なCVCで、運用総額は950億円に迫る。
投資分野は、Deep Tech、Climate Tech、Enterprise Techによる「テクノロジー」と、FintechおよびDLT(Distributed Ledger Technology)、Entertainment(ゲーム、音楽、映画、スポーツなど)、LBE(Location-Based Entertainment)による「エンターテインメント」の2つの領域にフォーカス。2019年の「Innovation Growth Fund」、2022年の「Sony Innovation Fund 3」によって、上場企業から設立間もない企業までのあらゆるステージにおいて、成長が期待できるスタートアップ企業への投資活動を推進。さらに2020年には、地球環境問題へ取り組む企業を支援する「Sony Innovation Fund:Environment」、2023年にはアフリカにおけるエンターテインメント事業の育成を支援する「Sony Innovation Fund:Africa」の運用を開始している。
また、2026年4月には、新規投資ファンドとして「Sony Innovation Fund 4」をスタート。ソニーグループの各事業と、より親和性が高い領域に投資を厳選し、ソニーグループ内のリソースをフル活用することで、投資先企業の成長支援を加速させるという。同ファンドには三菱UFJ銀行、日本政策投資銀行、三井住友銀行、ソニー銀行およびソニーグループがリミテッドパートナーとして参画している。
Sony Innovation Fundは、過去10年間で、3万9000社を対象にスクリーニングを行い、1万3000社以上にインタビューを実施。約220社に投資し、約170社への支援を継続している。すでに、29社がEXIT(投資回収)している。
「Sony Innovation Fundは、全世界5拠点から投資活動を行っており、マネジメントのコミットメントに加えて、ソニーの事業部門との連携による新たな価値を創造すること、ソニーのグローバルフットプリントを活かせること、ソニーの戦略投資実行および新規事業のインキュベーションを行うことが特徴となっており、ソニーグループとの協業を推進している投資先の比率は40%に達している。さらに、Sony Innovation Fundの活動を通じて培った知見および経験を活かし、ソニーグループ自らの戦略的投資活動やM&A実行支援、新規事業のインキュベーションを行うことで、ソニーグループとスタートアップ企業によるエコシステムの発展に貢献していくことになる」とした。
ソニーグループの展示では、「Sony Acceleration Platform」についても紹介。ソニー内外のイノベーション創出を支援し、多様なパートナーとの連携や協働を実現した事例を示した。Sony Acceleration Platformは昨年のソニーグループの出展の中心的なテーマであったが、今年の展示では、Sony Innovation Fundの投資機能との融合により、Sony Acceleration Platformの事業開発ノウハウを活かしたイノベーションを加速できることを訴求していた。
スマートウォッチ、医療ロボット、半導体からエンタメまで多彩な分野でスタートアップ支援の実績
さらに、Sony Innovation Fundによって支援したスタートアップ企業の展示も行った。
augment AI
10年間にわたってソニーのスマートウォッチ事業をリードしてきた開発チームが、ソニーグループから商標および特許を継承して2025年7月に独立した企業。クラウドファンディングで約6億円を集めた新型スマートウォッチ「wena X(ウェナ クロス)」を展示した。「腕時計に取り付けられるスマートウォッチ」という独自コンセプトにより、お気に入りの腕時計の美しさを損なうことなく、スマートウォッチの利便性を拡張するプロダクトだ。
クオリィ
ソニーグループの医療ロボット研究で培われた技術の一部を継承。マイクロサージャリー支援ロボットや、関連製品の開発、製造、販売、サポートを行っている。マイクロサージャリーとは、顕微鏡下で、細い血管や神経、リンパ管などの微細組織を扱う外科手術手法の一種を指している。ロボットを遠隔で操作し、手術を行うことも可能だ。
YOAKE entertainment
Sony Block Solutions Labs Pte. Ltdが開発したブロックチェーン「Soneium」上で、「IRC APP」を展開し、新しいファン体験を創出する企業。エンターテインメント領域におけるグローバルなファンコミュニティをつなぐ取り組みや、新たな「推し活」体験を紹介していた。
Pictoria
AIを主軸としたテクノロジーと、エンターテインメントを掛け合わせ、IPおよびコンテンツを創出する企業だ。AIキャラクターの民主化に取り組んでいる企業であり、AI VTuber「紡ネン」などで実績があるほか、AIキャラクターによる案内サービスでの導入実績もある。AIキャラクター対話デジタルサイネージ「Picto STAND」を展示した。
リトプラ
次世代型テーマパーク「リトルプラネット」をはじめとして、キッズおよびファミリー向けの体験型エンターテインメント施設を国内外に展開する企業。LBE(Location-Based Entertainment)領域におけるソニーとの協業などを紹介した。オンラインを含めて、エンターテインメントの新たな空間づくりに挑んでおり、ソニーグループとしてもLBE領域への投資を加速する考えを示している。
LENZO
次世代計算インフラの構築を目指す半導体スタートアップ企業。ソニーの高性能CMOSイメージセンサーと、LENZO独自のCGLAアーキテクチャを採用した超低消費電力AI半導体を組み合わせて、エッジでの高速・リアルタイムな認識や解析の実現を目指している。ソニー・コンピュータエンタテインメント出身の藤原健真氏が創業した企業だ。
ティアフォー
自動運転用オープンソースソフトウェア「Autoware」の開発に取り組むディープテック企業。すでに上場している企業だが、Sony Innovation Fundの投資対象でもあり、全国39都道府県の127地域で自動運転の実証および実装の実績がある。展示では、ソニーのCMOSイメージセンサーを搭載したカメラを自動運転レベル4に最適化し、「Autoware」との適合性を高めた協業事例を紹介した。
ソニーグループは昨年に続き、国内外のスタートアップ企業や大学・研究機関、大企業の新規事業部門、支援者が出展する「ネクストジェネレーションパーク」エリアへ出展した。
ソニーベンチャーズの古川氏は「昨年の出展では、Sony Acceleration Platformを前面に打ち出した展示とし、さまざまな企業と連携するきっかけができた。今年はSony Innovation Fundにより、ソニーグループの投資戦略を紹介するとともに、これまでの成果も展示した。また、イノベーション創出に取り組む企業との話し合いのきっかけを作り、スタートアップ企業との連携も探りたい。そうした狙いからも、ネクストジェネレーションパークへの出展を決定した」と語った。
「CEATEC 2026」イベントレポート
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