イベントレポート

CEATEC 2026

NECのAXで人類に力を――メンバー全員が「AI社員」の新設部門で業務時間7分の1に削減、「AI自律型組織」が衝撃

次世代サイバーセキュリティ「CyIOC」でも自律型への転換を促す

CEATEC 2026のNECブース

 「CEATEC 2026」に出展したNECは、2030年に向けた社会価値創造Visionとして打ち出している「Empower Humanity 世界に革新と安心を届ける」をそのまま展示のコンセプトに掲げ、AX(AI Transformation)やセキュリティの最新の取り組みを公開した。

 「Empower Humanity」を実現する「革新」の観点では「AX」、「安心」への取り組みでは「セキュリティ」にフォーカスした展示内容となった。

次世代セキュリティ「CyIOC」に来場者が高い関心。「ランサムウェアから会社を救えるか?」体験アプリも

 NECブースを訪れた来場者から高い関心を集めていたのが、「CyIOC(サイオック)」である。

 CyIOCは、NEC独自の脅威インテリジェンスとAI技術を融合した次世代サイバーセキュリティサービスである。サイバー攻撃の予兆把握からプロアクティブな防御、地政学的なサイバー脅威の分析、グローバルな攻撃トレンドに基づいた情報提供および報告支援、インシデント対応支援まで包括的に対応する。

 NECでは今回の展示を通じて、攻撃の予兆を捉えて被害を未然に防ぐことができるCyIOCによるリアルタイム監視や、AIがシステムの弱点を見つけて事前の予防対策を行う「cotomi Security for Industry」などを紹介し、AI時代において自律型サイバーセキュリティへと転換する重要性を訴求していた。

次世代サイバーセキュリティサービス「CyIOC」を展示。NECは「.JP(日本のサイバー空間)を守る」をスローガンにセキュリティ事業を展開
AI時代における自律型サイバーセキュリティへの転換を促した

 また、NECでは、CyIOCで提供しているサービスなどをベースに、CEATEC 2026向け体験アプリとして「あなたは会社をランサムウェアから救えるか?」を開発。来場者が体験できるようにした。

 体験アプリでは、ある日突然、ランサムウェアによる被害の可能性が検知されたとき、被害を最小限に抑え、企業の信頼を維持するために、初動対応として最適な意思決定を下すことができるかどうかを検証できる内容となっている。

 来場者は、従業員規模などを選択したうえで、いくつかの質問に答える。例えば、連携体制については「経営陣の判断を仰ぐ」「現場判断を重視し、情報システム部門で対応する」「関係者で対策本部を設置する」などから選択。感染拡大の防止に向けてどこまでネットワークを止めるか、感染端末をどう扱うか、公表するタイミングはどうするかといったことも選択する。いずれも制限時間内に判断し、回答する必要がある。

 それらの設問に答えると、結果が出る。企業規模から逆算した推定被害額を算出するほか、ワーストケースでの被害額も表示する。

 「IT資産の管理がしっかりとできていないため、該当する特定部門のネットワークだけを止めることができずに、全社ネットワークを止めなくてはならないといった事態になる場合もある。また、セキュリティ対策を重視するものの、外部への公表方法やタイミングなどを事前に想定できていない企業が多く、その重要性にも気付きを持ってもらえる内容としている。初動判断の意思決定には、情報の可視化と事前の備えが必要である。体験アプリを通じて、来場者にセキュリティ対策の基本について理解を深めてもらう狙いがある」という。

体験アプリ「あなたは会社をランサムウェアから救えるか?」
どんな体制で対応するのかを4つの回答から選択する
左下のクライアントPCの感染が疑われている。どこまでネットワークを止めるべきか
感染端末をどう扱うかを迅速に判断する
外部への公表についての設問も用意。事前準備としては見過ごしがちな項目だ
適切な初動判断ができると「GOLD」が表示される。被害額も推定して表示する

 NECでは今回の展示を通じて、高度化するサイバー攻撃への対応に向けて、迅速な判断には状況の可視化が欠かせないこと、意思決定の体制と権限を事前に決めておくこと、自社だけで抱え込まずに早期に外部のセキュリティ専門企業に相談すること、平時から準備することが大切であり、一度導入したら終わりではなく、常にチェックを繰り返す重要性などを訴求していた。

 昨今、サイバー攻撃による情報漏えいが相次いでいることもあり、体験アプリへの反響は想定以上に大きかったという。情報システム部門やセキュリティ部門の責任者だけでなく、現場部門の責任者などもCyIOCの展示には高い関心を寄せていた。

人間は戦略策定と変革実行に集中。「AI自律型組織」で業務に必要な「AI社員」をその都度生成

 注目を集めたのが、大手企業初のAI自律型組織「コーポレートAI・Workforce部門」の紹介である。

 同組織は、今年8月からNEC社内で稼働した新組織で、全てをAI社員で構成。AI部門長、AIボード(CxO機能)、AIマネージャー、AI社員の4階層とし、AIが経営分析やリスク予兆、組織改善を自律実行する。業務時間を約7分の1に削減した成果が出ているという。また、業務はAIが遂行する一方で、最終的な評価および意思決定、品質やガバナンスの統制は人が担う仕組みとしており、人は戦略策定と変革実行に集中。AIとの連携によって企業経営を進化できるという。

 さらに、業務ニーズに応じて、AIマネージャーが必要なAI社員をその都度生成し、役割を任命。生成されたAI社員は、NECの行動基準である「Code of Values」や、NECグループのパーパス、社内規定などの業務遂行の前提となる知識および判断基準を組み込み、このルールに基づいて業務を遂行する。

 なお、AI社員には業務にちなんだ名前が付いており、全体を統括する部門長は「全体 統」さんとしているほか、戦略担当の「戦略 司」さん、経営分析を担う「勘定 実」さん、コスト管理を行う「倹田 効」さんなどが在籍している。

 NECではこの取り組みを、AIネイティブカンパニーへの取り組みの1つと位置付けている。

AI自律型組織「コーポレートAI・Workforce部門」の概要
「コーポレートAI・Workforce部門」に在籍するAI社員一覧
CEATEC 2026会期初日には、NECの新野隆会長(左)の案内で、トヨタ自動車の佐藤恒治副会長兼CIO(右)が、AI自律型組織について説明を受けた(10月14日付関連記事参照)

人間は確認するだけ。面倒な出張申請や見積作成を「NEC cotomi Agent」で自動化

 「NEC cotomi Agent」は、ITシステム業務を、AIで“誰でもできる”に変革するサービスであり、個人の実行能力を組織の実行力にするAIエージェントと位置付けている。誰もが一定品質で業務を遂行し、より価値の高い仕事へ、組織全体の生産性を向上。現場業務のITシステム増加で高まる熟練者への依存と隠れコストを軽減する。

 展示では、出張申請の自動化をデモンストレーションしていた。

 上司から顧客対応のために出張依頼のメールが届くと、それをもとに、NEC cotomi Agentが出張申請に必要な情報をそろえてくれる。出張申請ボタンを押すと、行き先・訪問日などの情報をメールから読み取り、申請に必要な各項目を記載。さらに、新幹線などの交通機関や宿泊するホテルの予約も、社内規約に則って行う。出張申請に必要な全ての項目がそろうと、人に最終確認を促し、申請のメールを人が送信する。また、出張依頼があった上司に対して、出張申請が完了したことを報告するメールをNEC cotomi Agentが自動的に作成してくれるので、これを送信すればいい。

 また、顧客から商品100台の見積の依頼があった場合に、NEC cotomi Agentが対応する様子もデモンストレーションした。メールから依頼内容を読み取るとともに、受発注システムと連動し、在庫情報を確認しながら納期日を回答。50台ずつ分納することなどを記載して見積を作成してみせた。これまでの取引履歴から顧客の要望を想定し、見積を作成するといったことも可能だ。見積ができ、顧客向けに送信する際のメールもNEC cotomi Agentが作成し、それを最後に人が確認したうえで送信する。

 「出張申請や見積、メールはNEC cotomi Agentが自動で作成するが、最後に人が必ず確認する仕組みを前提にしている」という。

上司からの出張依頼メールをもとに「NEC cotomi Agent」が出張申請を準備する
出張申請ボタンを押せば自動的に作業を進めてくれる
出張申請に必要な項目を自動的に登録していく
交通手段やホテルの予約なども行う
最後に人が確認して申請を行えばいい
こちらは取引先からのメールをもとに見積を作成する様子
見積作成のボタンを押すだけで作業を開始する
在庫の関係で50台ずつ分納することを自動的に提案した

熟練技をVR空間で継承。バーチャルトレーニングセンターに「AI講師」導入

 体験型の展示としていたのが「バーチャルトレーニングセンター」だ。

 NECの現場導入の知見とともに、対話型AI、データ分析技術、VRを組み合わせて、人材不足や技能継承の課題に応えることができる。具体的には、受講者がVRゴーグルを装着してコンテンツを操作しながら、保守作業のトレーニングを行える。仮想空間でトレーニングを実施できることから、訓練回数を増やしたり、トレーニングのための設備コストを削減したり、技能のナレッジ化ができるといったメリットがある。また、実績データの可視化や分析、業務システムとの連携によって、資格証明書を発行することも可能だ。

 すでにダイキン工業がバーチャルトレーニングセンターを活用し、空調機の点検や診断が行える仮想空間を構築して、国内2000人のサービスエンジニアを対象に現場に近い環境での体験型研修を行っている。これまで5年かかっていた研修期間を3年に短縮する成果があるという。

 また、NECファシリティーズでは、半導体工場のインフラ設備の施設管理を行う人員育成のために、千葉県我孫子市に半導体工場の設備や作業を再現した研修施設「FM-Base」を開設しているが、全国の拠点から繰り返し参加するための移動コストや時間の制約が大きいため、バーチャルトレーニングセンターを導入したという。

 今回の展示では、新たにAI対応したことで大きく進化したことをアピールした。

 従来は、VRゴーグルを装着してトレーニングしている際に、疑問点などがあると受講者は講師にその場で質問していたため、講師への負担がかかっていた。バーチャルトレーニングセンターに「AI講師」を新たに用意することで、受講者がその場でAI講師に音声で質問すれば的確な回答を得られるようにした。

 受講者が音声で質問すると、質問内容を文字起こししてFAQやマニュアルを参照して回答を特定。テキストおよび音声で回答する仕組みだ。AI講師はキーワードと意味を組み合わせて、それをもとにした検索を行い、参照結果を回答する。回答に一貫性を持たせるため、根拠に基づいた回答になることを重視しており、参照結果以外は回答しない。また、受講者からの質問を蓄積し、これをもとに参照情報を継続的に改善することができる。

VRゴーグルを装着して「バーチャルトレーニングセンター」を体験しているところ
仮想空間でドライバーを取り出して保守作業のトレーニングを開始する
不明点があれば、音声で質問すればAI講師が回答してくれる
「バーチャルトレーニングセンター」の概要
「AI講師」を導入することで「バーチャルトレーニングセンター」を大幅に進化させた
新たに提供する「AI講師」の仕組み
ダイキン工業の導入事例
NECファシリティーズの導入事例
受講者は合否の確認だけでなく、得意や苦手部分をスコアカードで確認できる

「顔認証改札」から「準天頂衛星」や「海底ケーブル」にまでNECの技術は広がっている

 NECブースでは、上越新幹線新潟駅で今年3月まで実証実験を行った「顔認証ウォークスルー改札」の模型の展示や、準天頂衛星システム「みちびき」において、NECが貢献している領域を紹介したほか、NECが世界で約25%のシェアを持つ光海底ケーブルについても紹介。ブースの装飾やデザインにも光海底ケーブルの未使用廃棄線材を使用するというユニークな展示も行ってみせた。ここで使用した未使用廃棄線材は、光海底ケーブルの製造過程で品質確認のために発生したものだという。

上越新幹線新潟駅で実証実験を実施した「顔認証ウォークスルー改札」の模型
準天頂衛星システム「みちびき」におけるNECの貢献について説明
光海底ケーブルの実物大モデルを展示した
天井からぶら下がっているのは、光海底ケーブルの未使用廃棄線材
NECブース内の展示台にも光海底ケーブルの未使用廃棄線材を輪切りにして埋め込んでいた

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