イベントレポート

CEATEC 2026

製造・鉄道・物流など“止められない現場”を支えてきた日立製作所、その実践知がAIと融合

ソリューション群「HMAX by Hitachi」で社会インフラの課題解決に挑む

「CEATEC 2026」の日立製作所のブース

 「CEATEC 2026」に出展した日立製作所のブースでは、「AIが現実世界へ~HMAXが拓く、進化する社会インフラ~」をテーマに、フィジカルAIの社会実装を通じて日立が目指す未来について紹介。「CEATEC AWARD 2026」でデジタル大臣賞を受賞した次世代AIソリューション群「HMAX by Hitachi」をはじめ、データとAIを活用して社会インフラの進化を目指す同社の取り組みを、実機や映像、パネルを交えて展示した。

 日立では創業以来、製造・エネルギー・鉄道・金融・公共・物流といった、社会の「止められない現場」を支えてきた知見を持つ。これに、フィジカルAIによる新たなアプローチを組み合わせることで、人が介在しなくても、運用を改善し、進化することができるデジタルインフラの構築を目指している。そして、これを実現するのがHMAXと位置付けている。CEATEC 2026の展示は、HMAXを中心に、日立が実現するフィジカルAIの考え方を示すものとなった。

 なお、展示内容の多くは、同社が9月に開催した日立グループ最大規模の年次イベント「Hitachi Social Innovation Forum 2026 JAPAN(HSIF 2026 JAPAN)」で展示したものとなっている。

日立が培ってきたドメインナレッジ×AIによるソリューション群「HMAX by Hitachi」で社会インフラの課題解決へ

 CEATEC AWARD 2026のデジタル大臣賞を受賞した「HMAX by Hitachi」は、AIとデータに、日立が長年培ってきたドメインナレッジを掛け合わせることで、社会インフラが抱える複雑な課題の解決に挑み、企業と社会に最大の成果を提供する次世代AIソリューション群と位置付けている。

「CEATEC AWARD 2026」で、デジタル大臣賞を受賞した次世代AIソリューション群「HMAX by Hitachi」

 ドメイン対応型ソリューションとして、「HMAX Mobility」「HMAX Energy」「HMAX Industry」「HMAX Finance」を提供するとともに、「HMAX Data Center」を新たに提供。また、共通ソリューション群として、高度化するサイバー攻撃から顧客のシステムを守り、事業継続を支援するオペレーショナルレジリエンスサービス「HMAX Cyber」のほか、暗黙知をAIが理解および活用できる知識資産として蓄積・共有するデータ基盤「HMAX Data Fabric」、高度なセキュリティ監視などにより、AIの安全な自律運用を支える「HMAX AI Operations」をラインアップ。同社では、「HMAXを通じて、モビリティ・電力・産業などの領域を横断的につなぎ、AIによる社会インフラの革新を加速するとともに、社会インフラ全体の自律的な制御・最適化を担うOSへとHMAXを進化させていく」との方針を示している。

HMAXの概要説明
HMAXに至るまでの日立の歴史を紹介

HMAX Industry

 「HMAX Industry」の展示では、「あらゆる変化に即応する、自律進化型ファクトリー&サプライチェーン」として、需要予測から発注、製造、物流までをAIでつなぎ、人とAIが協働する次世代ものづくりの実現イメージを紹介した。

 部材の供給遅れや急激な需要変化に対して、AIが状況を自律的に捉え、AIアバターを通じて複数の対応案を提案。デジタル上でシミュレーションを行い、人がそれらをもとにリスクの最小化、コストの抑制などを踏まえた判断ができる。

 フィジカルAIの具体的な事例としては、製造・物流・小売の3つの現場での取り組みを紹介した。

 製造現場では、ケーブルやワイヤーのような柔らかいものを扱える日立独自のロボットや設備点検にも利用できる監視ロボットも展示したほか、生産設備の動きをデジタル上で再現。課題解決につなげることができる様子を紹介した。例えば、生産計画を担うAIエージェントが、1000個の需要があるのに対して500個の生産しかできないことが分かると、それを別のAIエージェントに伝えて最善の対策を立案することになるという。

 物流現場では、メーカーや役割が異なるロボットを連携。荷物を運び、受け取る作業において、それぞれのタイミングを同期させ、流れを止めない状況を実現できるという。

 また、小売の現場では、AIが売れ行きを予測し、それに伴う発注・倉庫・配送・製造へとつなげる様子を紹介。小売店における販売見通しをベースにサプライチェーン全体を結び、人やトラックを手配しやすくするなど、需要に合わせた適切な販売計画の立案が可能になる。

 さらに「統括エージェンティックAI」も展示。業務や部門ごとにデータを収集した業務AIエージェントとの自律的な対話によって、システム全体をオーケストレーションすることができ、戦略立案や経営判断を迅速化できるという。

 「統括エージェンティックAIは、調達・営業・物流など、工場の外の状況を調整するコーディネーターの役割を果たす。日立が培ってきたドメインナレッジと数理最適化技術を組み合わせて、膨大な条件を掛け合わせることが可能であり、現場をまたいで全体を俯瞰し、最適な打ち手を提案することができる。変化を捉えて打ち手を示すのがAI、選ぶのは人という世界を実現する」という。

「自律進化型ファクトリー&サプライチェーン」では、AIアバターが複数の対応案を提案する
ワイヤーなどの柔らかいものを扱える日立独自のロボット
設備点検にも利用できる監視ロボットも展示
メーカーや役割が異なるロボットを連携した活用が可能になる
小売を起点とした需要予測型自動発注
予測データ連携により、自動発注率は95%以上を実現したという
統括エージェンティックAIも展示した

HMAX Mobility

 「One Hitachiで実現する鉄道オペレーション&メンテナンス」として紹介したのが、「HMAX Mobility」である。

 HMAXとして最初に登場したソリューションがHMAX Mobilityであり、日々走行する鉄道車両にセンサーやカメラを搭載し、車両や線路、架線の状態をデータで捉え、AIがリアルタイムで分析し、運行と保守の最適化を図ることができる。すでに全世界で約2500編成の車両に導入。保守コストおよびエネルギーコストを15%削減した実績がある。

 ブースでは、車両に取り付ける振動センサーを展示。走行中の揺れから、車両と線路の状態を読み取ることができる。

 また、鉄道分野向けソリューションとして展示をしていたのが、駅業務アプリケーションスイートである。HMAX Mobilityの国内向けソリューションの1つに位置付けており、設備のデータを活用した状態基準保全や予兆検知の取り組みに加え、現場ナレッジを統合できるメリットがあるという。土台となるスーパーアプリに業務ごとのミニアプリを組み込んでおり、今後はAIを活用する基盤も取り入れるという。この仕組みを用いて、電力・航空・公共サービスなどの分野にも展開していく考えも示した。

車両に取り付ける振動センサーを展示した
センサーはこのようなイメージで鉄道の車輪部分に搭載する
駅業務アプリケーションスイート

HMAX Cyber

 サイバー攻撃による情報漏えいが急増するなか、注目を集めた展示の1つが「HMAX Cyber」である。日立では、AI時代の事業継続を支援するオペレーショナルレジリエンスサービスと位置付けてパネル展示を行った。

 ITだけでなく、現場の設備を含めて安全を守ることができるサービスで、設計から運用までを一貫して提供できる点を訴求。単なる防御ではなく、攻撃を受けても事業を止めないことを重視し、フロンティアAIを活用しながら、企業の事業継続を支えることができるとしている。

注目を集めた「HMAX Cyber」のパネル展示

「人が足りない、ベテランがいなくなる、設備が古い」社会インフラの課題に日立のソリューションが挑む

 「現場で動くフィジカルAI」ゾーンでは、日立自身のフィジカルAIの活用について触れた。

 音声対話型フィジカルAIアームは、「青いキューブを2個取って」と音声で伝えると、カメラで対象の色や数、位置を確認。対象が見つからないときには声で知らせるほか、音声で作業を停止させることもできる。声の聞き取りには、カーナビやゲームに使用している日立の音声認識ソフトウェアを活用しており、英語で指示をすることも可能だ。

 「雑音の多い現場や、画面やキーボードの操作がしにくい現場でも声で指示ができる」という。

 また、2足歩行ロボットも展示した。カメラの映像をAIが読み取り、周囲の状況を自ら判断して、目的の場所まで2足歩行で移動。決められたルートをたどるのではなく、自律的に動き、対象を確認することを紹介していた。

 日立ビルシステムの水戸事業所では、2足歩行ロボットを、台車運搬や通路の安全確認、設備の巡回点検、感電リスクを伴う受電盤点検などに活用しているという。

音声対話型フィジカルAIアームをデモンストレーションした
2足歩行ロボットも展示。日立ビルシステムの水戸事業所で活用しているという

 「老朽化・人手不足に挑む! 日立が描く『社会インフラDX』」と題したパネル展示も行った。

 道路や橋、トンネル、上下水道、電力などのインフラの老朽化が進み、2040年には多くのインフラが耐用年数を迎える一方で、2040年には日本全体で1100万人の労働力が不足するとされ、社会インフラの点検や保守を担う人材の不足が指摘されている。

 日立ではドローンなどで集めたデータをAIで解析し、点検のやり方を大きく転換。ドローンの飛行ルートを生成AIが自動で作成し、判定に利用するAIは、顧客の点検基準に合わせて構築。熟練者の経験だけに頼らず、判断のばらつきも抑えられるという。さらに、災害発生時には、撮影した画像をもとにAIが被害状況を把握し、初動に必要な情報を届けるという。

 なお、日立では、さまざまな社会インフラ向けに40以上のソリューションを用意。全国において、約450の現場で使用されている実績があるという。

 「人が足りない、ベテランがいなくなる、設備が古いといった課題を解決するのが日立のソリューションである。点検を担う人が減っても、社会インフラの安全は落とさない現場づくりに貢献していく」としている。

「老朽化・人手不足に挑む!日立が描く社会インフラDX」と題したパネル展示

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