イベントレポート
CEATEC 2026
シャープが示す「半歩先」の価値とは? 災害時にも役立つ循環型洗濯システムなどの技術を展示
2026年10月15日 14:45
CEATEC 2026のシャープブースでは、社会レジリエンスの向上に貢献する「半歩先」の技術およびソリューションを、7つのカテゴリーで展示。防災・減災や、インフラの維持、エネルギー活用といった分野にフォーカスしていたのが特徴だ。
自然災害などの社会課題に対して「半歩先」の価値を提案
シャープでは、2025年9月に、コーポレートスローガンとして「ひとの願いの、半歩先。」を制定。これをもとに、人々の日常を見つめ、暮らしや仕事の中にある声や願いに耳を傾けながら、その「半歩先」にある価値を創出することで、強くしなやかな社会の実現を目指している。
シャープの河村哲治社長(代表取締役 社長執行役員CEO)は、「新たなコーポレートスローガンとして、『半歩先』を打ち出してから約1年が経過した。だが、半歩先の製品が出揃うのは、もう少し先になるだろう。しかし、シャープが目指す『半歩先』の一例を、CEATEC 2026では示すことができた。シャープは、レジリエンスの領域においても、『半歩先』から人に寄り添い、『シャープの提供価値はここにある』ということを見せることができた」と手応えを示す。
実際、今回のCEATEC 2026では、気候変動に伴う自然災害の激甚化や、社会インフラの老朽化といった、社会課題に対して、「半歩先」の展示を行っている。
河村社長は、「すべての展示が『半歩先』の提案といえるが、とくに、家電連携の展示では、災害発生時にはいま使っている家電から避難情報を伝えたり、家電が稼働していないことから被害を想定し、自治体などが迅速に対応できたりといった利用を可能にすることを示した。日常的に使用している家電が、災害時にも利用者に寄り添うことができる。個人的には、最も『半歩先』らしい展示の1つだと思っている」と述べた。
防災・減災などに貢献する7つの技術やソリューションを展示
洗濯水を繰り返し再利用できる「トリプルフリーランドリー」
ブース展示で注目を集めたのは、CEATEC AWARD 2026で、「優秀賞」を受賞した排水レス循環型洗濯システム「トリプルフリーランドリー」だ。
洗濯水を繰り返し再利用できる洗濯システムで、洗濯に使用した水を、即時にろ過および浄化し、洗濯に適した状態に再生。繰り返し利用することで、大幅な節水が可能になる。
2023年11月に開催した同社初の大規模技術展示イベント「SHARP Tech-Day」で初公開した技術で、システムを小型化したことにより、運搬や移設がしやすく、給排水設備を持たない様々な場所にも設置が可能となる。災害時の避難所など給排水設備の確保が困難な環境、水資源が限られる地域においても、衛生環境の維持や向上に貢献できるという。
河村社長は「災害時の水は非常に貴重である。フィルターでろ過しながら、水を繰り返し利用することで、災害時の洗濯の課題解決につなげることができる」と語った。
「トリプルフリーランドリー」の名称は、フェーズフリー、ロケーションフリー、ボーダーフリーの3つのフリーに由来しているという。
すでに、地方自治体などからの引き合いがあり、シャープでは、2026年度下期には、市場投入する予定を明らかにしている。
電源投入ですぐに通信環境を構築できる「Instant 5G Network」
「Instant 5G Network」は、ローカル5G基地局とコア装置を小型キャリーケースに一体収納した可搬型システムのプロトタイプであり、電源を投入すると、すぐに高速で、高セキュリティな無線通信環境を構築できる。衛星通信システムとの連携によって、災害現場や山間部など通信インフラの利用が難しい場所でも安定したデータ通信環境を提供できるようになる。これも、SHARP Tech-Dayで公開されていたものだ。
非静止衛星を高精度に追跡する衛星通信ユーザーターミナル「MEO/LEO」
開発中の衛星通信ユーザーターミナル「MEO/LEO」も展示した。独自のビーム制御技術により、MEO/LEOの非静止衛星を高精度に追跡。揺れの大きい船舶などでも、安定した通信の実現を可能にするという。シャープが、スマホの開発で培った小型化や軽量化の技術を活用している。今後は、船舶、自動車、建機、農機、ドローンなどへの搭載を想定しているという。
家電をIoT機器として活用する「暮らしの機器で実現する防災DX」
「暮らしの機器で実現する防災DX」として展示したのが、家電をIoT機器として活用した取り組みだ。河村社長が「最も半歩先らしい展示の1つ」と評したのがこれだ。
家庭や企業、公共施設などに設置しているテレビや空気清浄機などを、防災および減災にも活用。自治体などが、家電データをもとに、地域の異常を把握し、防災情報を家電から音声で伝える。具体的には、テレビからは避難先を自動表示することで避難行動を促し、避難所ではプロジェクターなどで避難所生活に役立つ情報を共有。日常で使用している身近な製品が、発災直後から避難所での生活までを切れ目なく支える「フェーズフリー」な防災DXを提供できるとしている。
低コスト・大容量・高い安全性を実現した「フロー型亜鉛空気電池」
「フロー型亜鉛空気電池」は、長時間エネルギー貯蔵技術であり、低コスト、大容量、高い安全性を実現しているのが特徴だ。再生可能エネルギーの有効活用を通じて、脱炭素社会の実現に貢献するとともに、非常時にも必要な電力を確保できる。
水道管の漏水位置を推定する「上水道漏水検知システム」
「上水道漏水検知システム」は、水道管の漏水を検知し、その位置を推定することができる。高感度振動センサーを搭載したIoTデバイスと、LPWAによる高精度な時刻同期技術、独自の振動解析技術を組み合わせることで、地下に埋設された水道管の微小な漏水を早期に発見して、水道インフラの効率的な維持管理と事故リスクの低減に貢献するという。
「いつも」のメリットと、災害時の「もしも」のメリットを訴求
シャープは、ブースづくりにも工夫を凝らした。
今回の展示では、7つのカテゴリーで、技術やソリューションを展示しており、それぞれに、災害が発生した際の利用者の疑問点を表示。そして、「いつも」のメリットとともに、「もしも」の時の貢献についてもパネルで示している。
たとえば、排水レス循環型洗濯システム「トリプルフリーランドリー」では、「避難生活で、洗濯ってどうするの?」という疑問を提示。それに対して、いつもは、「水資源が限られたエリアでの洗濯支援で人々のQOLの向上に貢献」していることを示す一方、もしものときには、「断水など、水が限られる環境でも衛生環境の維持を支援できる」というメリットを訴求する。
実は、ここにもコーポレートスローガンである「ひとの願いの、半歩先。」を、具現化する狙いがある。
ブランド戦略本部 ブランド戦略推進部の萬正博部長は、「シャープは、1990年代に『目の付けどころが、シャープでしょ。』を打ち出し、モノづくり起点でのメッセージを発信した。それに対して、新たに制定した『ひとの願いの、半歩先。』は、ひと(人)起点でのメッセージであり、ひとを見つめて、新たな価値を提供していくことになる。お客様の願いを聞いて、そのまま返すだけではなく、ちょっとでも良くして返すというところに『半歩先』の意味がある」と前置きし、「今回の展示では、『いつも』の平時だけでなく、『もしも』の有事のときにも、シャープはどんな価値を届けることができるのかを示した」とする。
シャープは、朝起きてから、夜寝るまでのあらゆる時間帯で、人に寄り添っている企業だと、萬部長は語る。
「スマホで目覚め、冷蔵庫を開けて、調理をする。空気清浄機が稼働している電車で通勤し、駅の大型ディスプレイで広告を見て、コンビニでは複合機を使ってサービスを受け、会社ではパソコンを使っている。家に帰ればテレビを見て過ごす。こうして見ると、1日を過ごす、あらゆるところにシャープの製品が使われている。ステークホルダーの1日に寄り添っているのがシャープである。では、これらの個々のシャープ製品が、非常時においても、なにができ、どんな半歩先の提案が行えるか。それを示した展示になっている。人のレジリエンスを追求することで、社会レジリエンスを向上できる」と語る。
ブース全体の構造にもシャープの「半歩先」の姿勢が
また、シャープブース全体のデザインにもこだわりがある。
今年のブースでは、全体に暖色系の照明を使用。社会とのつながりを示すように、壁を設けずに、ブースの中と外を行き来しやすく、通りがかっても中が見やすい構造を採用したという。
ブースで使用している資材の57%に循環型材料を使用。展示会終了後は98%をリユースおよびリサイクルするほか、残り2%もサーマルリカバリーとしてすべて有効活用する。また、接着が必要な部分には、海藻由来のLOOPGLUEを使用し、使い終わったあとは水できれいに剥がすことができる。
ブースのデザインの象徴となるのは、天井からぶら下がり、壁の代わりを果たしている30×30cmの木材だ。通常は木工の壁面パネルや、什器の見えない部分に使用しているものだという。今回は、これをブースデザインの主役とし、「見せる主材」として活用。仕上げ材を使用しないデザインとしている。
「シャープブースは、周りのブースに比べても高さが低くなっている。高さの設計のベースになったのは、トラックに積載できる木材の長さである。それ以上の長さにすると、木材の輸送効率が悪くなり、環境負荷を高める要因になる。高くすることで、ブースを目立たせたいという気持ちもあったが、半歩先のブースづくりとして、今回の高さに決めた」とする。
このように、シャープブースの端々にも、「半歩先」の考え方が、ふんだんに取り入れられている。
「シャープという言葉には鋭い、切れ味がいいという意味とともに、音の高さを半音上げることを示す音楽記号の意味がある。半歩先の価値を提供することで、お客様の気持ちが半音上がる世界を実現する企業でありたい。そうした思いをブースづくりに込めた」と語る。
展示される技術やソリューションだけでなく、ブース全体の構造を含めて、シャープの「半歩先」の姿勢を発信しているというわけだ。

