イベントレポート

CEATEC 2026

「ロボティクス×生成AI」は日本にとって最大の機会、AWSは黒子として貢献できる――「AIエージェントがロボットを育てる」技術などを披露

「CEATEC 2026」のAWSブース

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)のCEATECへの出展は、2022年以来、4年ぶりとなった。

 今回は、「CEATEC 2026」で新設された「X(Transformation)パーク」にブースを構え、「主役は日本の担い手、AWSは黒子」という姿勢を打ち出しながら、フィジカルAIの社会実装に向けた提案を行った。

アマゾン ウェブ サービス ジャパンの岡本京氏(技術統括本部ストラテジックエンタープライズ本部 本部長)

 ブースで取材に応じてくれたAWSジャパンの岡本京氏(技術統括本部ストラテジックエンタープライズ本部 本部長)は、「クラウドサービスを提供するAWSが、フィジカルAIやロボットとどう連携するのかという点で、私たちが思っている以上に話題を集めた」と笑いながら、「日本はロボティクスで世界をリードしてきた。その強みに生成AIを掛け合わせることが、日本にとって最大の機会になると考えている。フィジカルAIの世界においてAWSは、黒子としてどんな貢献ができるのか――。それを示す展示を目指した」と、今回の出展の狙いを語る。

 AWSは、日本においてフィジカルAI開発支援プログラムを今年1月から開始。51社を採択し、8月には成果発表会を行った。フィジカルAIの社会実装に向けて、日本の企業を支援する仕掛けに取り組んでいるところだ。現在、同プログラムは第2期がスタートしている。CEATEC 2026では、こうした取り組みも含めて、AWSが日本のフィジカルAIに積極的な姿勢で取り組んでいることを訴求する場になったと言える。

クラウド上のAIエージェントがロボットを育てる。AWSジャパンの若手エンジニアが技術開発

 AWSブースでは、3つの展示が行われていた。

 1つめは、AWS自らの展示である。ここでは「AIエージェントがロボットを育てる」をテーマに、クラウド上のAIエージェントにより、ロボットの開発を自律化する取り組みを紹介した。

 フィジカルAIで実現したいタスクを言葉で伝えると、バーチャル研究員の役割を果たすAIエージェントがトライアル環境を構築。どんなデータを集め、どうチューニングするかを判断し、評価指標も自ら考えて開発を進める。完成したものは、実機にダウンロードをして試験的に動作。シミュレーションではうまくいっても実機でうまくいかないといったことも発見し、それをフィードバックして改善を加えるループを自律的に回すことで、開発の精度を高めることができる。

 「AIエージェントが開発と検証を繰り返し、評価基準を満たすまで修正し、合格したものだけを実機に配備することができる」というわけだ。

 1行の指示からAIエージェントが自律化して開発。数百時間かかっていた開発時間を大幅に短縮したり、24時間稼働させた開発も可能になったりという特徴もある。

 AWSジャパンの岡本氏は「フィジカルAIのソリューション開発における課題は、教師データが少なく、ロボットを正しく動作させるためにはその都度教える必要があったり、初めての現場や作業では教え直しが発生したりという点にある。また、フィジカルAIは総合格闘技と同じで、機械工学、電子工学のほか、AI、クラウド、オープンソースといった領域のエンジニアがいないと始められないといった課題も表面化してきた。今回展示した技術は、このようなフィジカルAIの実装におけるボトルネックを解決するツールとなる。フィジカルAIの実装に向けた支援の1つになる」と位置付けた。

 ユニークなのは、この技術を、AWSジャパンの新卒5年目以下の若手エンジニアが6人集まって、通常業務とは別の取り組みとして開発したという点だ。CEATEC 2026への出展を目指して完成度を高め、今回の展示につながっている。今後は一般公開する予定だという。

 なお、この展示は「CEATEC AWARD 2026」のトランスフォーメーション賞を受賞している。

「AIエージェントがロボットを育てる」をテーマに展示
開発と検証を繰り返して、合格したものだけを実機に配備する
実際に実機で動かしてみて、不具合があれば改善する

「未来の八百屋」のフィジカルAIを実演。安川電機と共同展示

 2つめは、安川電機との共同展示となる。

 ここでは「未来の八百屋」をコンセプトにしたフィジカルAIの実演を行ってみせた。

 安川電機のフィジカルAIロボット「MOTOMAN NEXT」を利用。音声で指示をすると、カメラ画像をもとにその場でAIが判断し、ロボットが動作する。

 タイトル通りに「未来の八百屋」を想定。マイクの前で作りたい料理や夕飯に食べたい料理を指定すると、そこから判断して、必要な野菜を選び、人に確認。「じゃがいもを3個用意しますね」などといった対話をもとに、MOTOMAN NEXTが安全な軌道で動き、野菜を3Dビジョンで判断しながら、必要な野菜を買い物かごに入れる。さまざまな形の野菜を確実に判断し、AIロボットが掴むことができる。AIは必要な野菜がそろうまで、考えながら作業を繰り返すことになる。AIは「秋の味覚としてさつまいもがお薦めです」といった提案もしてくれる。

 AIモデルはエッジで処理する一方、アルゴリズム開発はクラウドを利用。ロボットの動きはクラウドのシミュレーターで再現した。判断部分にはAmazon Bedrock、動作データはAWS IoT Core、エッジの管理やログはAWS IoT Greengrass、さらにAmazon EC2も利用している。

 「一般的なフィジカルAIはVLA(Vision-Language-Actionモデル)によって現場で判断するが、今回のデモンストレーションではクラウド側で曖昧な質問を解釈して、必要な野菜と必要な数を判断。AIロボットによる物体認識、軌道の計算などはロボットの工学技術によって実現している」とし、「AIロボットが、工場などのB2Bの現場だけでなく、小売店舗や医療現場でも利用でき、遠隔地から指示し、高い保守性を実現できる点を訴求した。野菜のようにひとつひとつの形が異なり、ロボットにとっては初見となるものでも確実に判断し、掴むことができる。AIロボットのユースケースの裾野を広げる一歩につなげたい」とした。

 AWSと安川電機がフィジカルAIの領域で共同展示をするのは、今回が初めてだという。

安川電機との共同展示。「未来の八百屋」をコンセプトにしたフィジカルAIの実演を行った。安川電機のフィジカルAIロボット「MOTOMAN NEXT」を利用
マイクで作りたい料理を指定する
指定された料理に必要な野菜を判断し、初見の形でも的確に掴む
掴んだ野菜は買い物かごに入れる
対話によってAIロボットに指示が出せる。野菜をうまく掴めなかったときにはそれを報告し、もう一度繰り返す
ハンドにカメラを搭載し、画像で認識する
デジタルツイン上にロボットの動きを再現している

AWSのGPUで、モデルの学習やデータ収集・管理を効率化。スタートアップ3社と共同展示

 そして3つめが、スタートアップ企業3社との共同展示だ。

 Highlanders、パナソニック アドバンストテクノロジー、FastLabelの3社が日替わりで展示を行った。

 Highlandersは、東京大学発のロボティクススタートアップ企業で、2足歩行する国産ヒューマノイドロボットを出展。これを実際に動作させてみせた。ロボット本体からAIまでを自社で開発しており、ロボット基盤モデルをAWSのGPUで学習させているという。AWSが進めているフィジカルAI開発支援プログラムの成果発表会でもこのロボットを展示していた。

 パナソニック アドバンストテクノロジーでは、ごみ収集をテーマに展示。自律型ロボットの社会実装を提案した。AWSが支援している「中之島ロボットチャレンジ」との連動企画とも位置付けていた。

 また、FastLabelでは、フィジカルAIの実現に向けたデータ収集や管理の効率化を提案。AWSのGPUを活用し、データを拡張し、作業の成功率を平均14.2%向上させている成果などを紹介した。

Highlandersは、2足歩行する国産ヒューマノイドロボットを出展

 AWSジャパンの岡本氏は、CEATEC 2026への出展を通じて、「CEATECは日本の産業界を代表する展示会であり、来場者の数が多く、裾野が広い。日本のフィジカルAIを盛り上げるためにAWSは何ができるのかを展示することで、日本の企業を支える姿を見てもらいたいと考えた。期待した以上に多くのエンジニアが来場しており、AWSとの接点が強いクラウドエンジニアだけでなく、ロボットをはじめとしたハードウェアに強いエンジニアにも見てもらうことができた。課題を抱えるエンジニアとの対話を通じて、解決策を示すこともできた。得意分野が異なるエンジニア同士の共創のきっかけにつながっている」と手応えを示した。

「CEATEC 2026」イベントレポート