イベントレポート

CEATEC 2026

富士通の技術で検証する「もしゴジラが街に来襲したら」――大規模災害時の対応策を「ソーシャルデジタルツイン」でリハーサル

「骨格認識AI」でゴジラになりきるモーションキャプチャー体験も

「CEATEC 2026」の富士通ブース

 「CEATEC 2026」の富士通ブースでは、「もしゴジラが街に来襲したら」という大胆なテーマでの展示を行ってみせた。

 東宝の協力を得て、高さ7.5mというゴジラをパネル展示したほか、高さ2.5mのゴジラ像も展示。ブース内では「ゴジラ フジツウ」の文字も目立っていた。

 ブース内では「『もしも』に挑む、確かな力を。」をテーマに、災害時の避難誘導を想定したシナリオを通じて、ソーシャルデジタルツイン技術の体験デモを実施。これにより、人とテクノロジーの連携による安全安心な社会の実現に向けた取り組みを紹介したほか、骨格認識AIを活用した「GODZILLA in Motion」も体験できるようにした。

高さ2.5mのゴジラ像も展示。フォトスポットとしても人気だった
富士通ブースには「ゴジラ フジツウ」の文字

 昨年のCEATECでは、高低差が約1.6mという「東急セブンハンドレッドクラブ 西コース18番ホール」の名物バンカーをリアルサイズで再現して話題を呼んだ富士通ブースであったが、今年もそれに引けをとらない話題性のある展示となった。

ゴジラが来襲、人々を無事避難させるにはどうすればいい?「ソーシャルデジタルツイン」でリハーサル

 展示の1つめが、「ゴジラ来襲」を想定した災害対策を検討するデジタルリハーサルの体験である。

 富士通のソーシャルデジタルツイン技術を活用して、人々の行動や都市の状況、建物や地形、交通機関などをデジタル空間上に再現。さまざまな施策をもとにシミュレーションを何度も繰り返して、より良い意思決定を支援するデジタルリハーサルを体験できる内容とした。

 富士通のソーシャルデジタルツインは、行動経済学などの人文社会科学と、計算機科学を融合したコンバージングテクノロジーの研究をもとに開発したものだ。デジタル空間上で社会の動きを再現する世界初の技術であり、社会への施策を現実世界に適用する前に、デジタル空間で人や社会の動きをシミュレーションできるのが特徴。デジタルリハーサルによって施策の効果や影響を事前に検証し、最適な施策を探索できる。CO2の削減や、混雑や渋滞の緩和、新たな都市設計、施設の統廃合など、さまざまな社会課題の解決に活用できる。人が集団で行動する際にはどんな振る舞いをするのかといったことも反映されているという。

 今回のゴジラ来襲によるデジタルリハーサルは、「災害に着目し、人々の安全を守るための備えと対策を考えるものになる。大規模災害を想定した避難対策を検証する」と位置付けている。

富士通のソーシャルデジタルツインの概要

 デジタルリハーサル体験のシナリオは、次の通りだ。

 突如、神奈川県横浜市に上陸したゴジラは、関係機関の予測では約60分後に、川崎駅周辺に到達することになるという。この情報を得た災害対策サポートチームは、川崎駅周辺にいる人たち全員を無事に避難させる施策を検討することを任された。

 だが、この日は、川崎の街全体が会場となり、音楽や各種文化活動を楽しむことができる都市型フェスティバル「KAWASAKI FESTIVAL」が開催されており、川崎駅周辺には約5万人のフェス来場者が滞在。地域住民や会社員、買い物客などを含めると、避難対象者は25万人規模に上ると推定された。

 災害対策サポートチームは、ゴジラが到達するまでの60分以内に、被害想定エリアとなる直径4kmのエリアから25万人全員を避難させなくてはならないのだ。

 まずは、これまで立案していた避難施策をもとにデジタルリハーサルを実施してみると、25万人全員が避難するには75分かかったという。これを細かく分析してみると、地域住民などの20万人は58分以内で避難が完了したものの、5万人のフェス来場者が全員避難するまでに75分かかるという結果が出た。

 そこでフェス来場者のデータを参照。すると、川崎市外からの来場者が55%、川崎駅を初めて使う人が25%、外国人来場者も20%いることが分かったのだ。

 デジタルリハーサルをもとにフェス来場者の避難を遅らせている要因を抽出したところ、言語の違いによる避難情報の伝達不足、土地勘のないフェス来場者が道に迷い、遠回りをしてしまうといった避難誘導不足、道路や交差点に人が集中したことによる避難ルートの混雑に加え、電車で移動しようと考えて駅へ移動したものの、運休や規制を知り、また引き返すという行動が見られたという。

 これらの課題をもとに、タッチモニターを利用して「多言語対応誘導スタッフ」「DJポリス」「デジタルサイネージ」「駅へ向かう人の抑制」「道路を歩行者専用に開放」の5つの施策のなかから効果があると思われる施策を複数選択する。ここでは各施策にポイントが割り振られ、10ポイントまでを活用できるというエンターテインメント要素も盛り込んでいた。選択できる施策のなかには、実行までに時間を要するが、効果が高いといったものもある。そのあたりも勘案して選択する必要がある。

 施策を選択すると、いよいよデジタルリハーサルの実行である。施策によってフェス来場者が行動を変え、60分以内に全員が避難できるかを検証して体験は終了する。

 ブース内に設けられたステージ上で体験してみると、3面のスクリーンにゴジラの来襲に関するデータなどが表示される一方、ゴジラのテーマ曲が流れ、ゴジラの足音や鳴き声とともに足元には振動が伝わってくる仕掛けとなっており、緊迫感を高める演出を行っていた。

デジタルリハーサルの体験エリア
ゴジラが富士通のロゴであるインフィニティマークに噛みつく特別なコンテンツも表示
参加者は、災害対策サポートチームの一員となって施策を検討する
施策検討のテーマは、なんと「ゴジラ来襲」である
ゴジラが川崎エリアに到達する時間は60分と予想
この日は都市型フェスティバル「KAWASAKI FESTIVAL」を開催していた
想定される避難対象者は合計で25万人だ
ゴジラが来襲するまでの60分以内に、直径4kmのエリアから全員を避難させることが目標だ
従来の施策でデジタルリハーサルを行ったところ、フェス来場者に避難の遅れが出るという
フェス来場者のデータを分析してみると、川崎市外からの来場者が多いことなどが分かった
デジタルリハーサルをもとにフェス来場者の避難の遅れを課題として抽出
参加者はフェス来場者の遅れを解決する施策を検討する
効果があると思われる施策を選択して、デジタルリハーサルで実行する
与えられた10ポイントを使って3つの施策を選択した
いよいよゴジラが川崎駅周辺にやってきた
川崎駅周辺の人たちが避難行動を開始した
3面のスクリーンにはさまざまな情報が表示される
それぞれの施策の効果を確認。避難行動がうまくいっていることが分かる
残り20分を切ったところで残り5000人程度が避難できていない
いよいよゴジラが川崎エリアに侵入。果たして避難は完了できるのか
結果は、フェス来場者を含めて全員が60分以内に避難できた

ゴジラになりきって街を破壊!?「骨格認識AI」でマーカー不要のモーションキャプチャー

 もう1つは、「GODZILLA in Motion」である。

 富士通が持つ骨格認識AIを活用し、人の動きをリアルタイムにデータ化。体験者は、ゴジラとなって街を破壊することができる没入型デモだ。今年2月にスペイン・バルセロナで開催された「MWC Barcelona 2026」の富士通ブースや、7月に都内で開催した同社プライベートイベント「Fujitsu Experience Day 2026」でもデモンストレーションを行っていた。

 「ゴジラなりきり体験」としているように、ゴジラとなって15秒間にわたり、渋谷の街を破壊。その破壊の様子を、映像で見ることができる。

 富士通のAI技術が、現実世界の動きをどのようにデジタル空間へ再現するのかを、迫力ある映像演出とともに体感することができるという展示だ。

 富士通の事業モデル「Uvance」のオファリング「AI Technologies and Solutions」として提供している骨格認識AI(Human Motion Analytics)を活用して、人の動きをデータ化。Human Motion Analyticsでは、特別な装置やマーカーを身体に装着することがなく、4カ所に設置したカメラで動きをキャプチャーできるのが特徴だ。また、短時間でデータ解析ができる点も見逃せない。データをもとに、ゴジラとして動く映像の生成は約40秒で完了する。

 さらに、複雑な動作を正確に分析し、高い精度で再現できる。こうした特徴を活かして、体操競技の採点で利用されたり、フィギュアスケートのトレーニングに利用されたりといった実績もある。ゴルフのスイング、野球の投球、テニスのサーブなど、身体の各部位が三次元空間でどのように連動しているかを正確に把握することも可能だ。

 参加者は、ステージの中央の位置に立ち、全身を使って大暴れすればいい。床に示された黒い部分には、破壊対象物となる建物があると想定しており、暴れ方によって採点結果が変わることになる。

富士通ブースの「GODZILLA in Motion」
参加者の動きをゴジラの動きとして再現する。床の黒い部分にビルがあると想定して動く
参加者はステージのなかで大暴れすればいい。マーカーなどを身体に装着する必要はない
上部に設置した4台のカメラを使ってキャプチャーする
動きをキャプチャーするためのカメラ
骨格の動きを捉えて、ゴジラの動きとして再現している
参加者の動きを再現したゴジラが渋谷の街で暴れる
採点結果は暴れ方によって異なる

 富士通は、CEATEC 2026の出展を通じて、ゴジラを題材にしながらも、自然災害をはじめとするさまざまなリスクへの対応を、信頼できるデータとAIによって解決。見えない未来をシミュレーションすることで、備えに対する一歩を踏み出させることを示したというわけだ。

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