地図とデザイン
夏休みの自由研究にうってつけの地図サイトが国土地理院から登場! 自分で地図をデザインできる「地理院地図Vector(仮称)」試験公開
2019年8月15日 06:00
国土地理院は、ベクトル形式の地図データを採用したウェブ地図サービス「地理院地図Vector(仮称)」を試験公開した。
「ベクトルタイル」地図データを採用、色の変更や表示情報の選択が可能に
このサービスは、「ベクトルタイル」と呼ばれる形式の地図データを採用したウェブ地図サービス。従来より国土地理院が提供している「地理院地図」はラスター画像の地図データを採用しているため、地図デザインを自由に変更することができない。これに対して地理院地図Vectorでは、ベクトルの地図データを採用することにより、サイトの利用者が目的に応じて色を変えたり、表示する情報を取捨選択することが可能となる。
例えば、白地図にして県境を分かりやすく表示したり、写真に地名のみを重ねたりと、さまざまな表現が可能となる。国土地理院では、特に学校の授業や夏休みの自由研究、防災分野での活用を提唱している。
地理院地図Vectorにアクセスすると、従来の地理院地図と似た「標準地図」が表示される。左側のメニューには、おすすめの地図として、「淡色地図」「白地図」「写真」「写真+注記」「大きい地図」「標準地図②」「淡色地図②」「白地図②」など、異なる地図デザインが並んでいる。このうち「②」が付いている地図は、道路の立体交差を表現したもので、どのように道路が重なっているの分かりりやすい。ただし、初期表示速度は通常の地図に比べて少し遅くなる。
「おすすめの地図」の下にある「表示中の地図」の「編集」をクリックすると、注記や地図記号、境界、道路、鉄道、航路、建物、交通構造物、海岸線、河川、湖池、水域、標高、等高線・等深線、地形など、編集可能な項目のリストが表示される。各項目で、表示のON/OFFやサイズ、色などを細かく変更することで、さまざまなデザインの地図を作ることができる。作成した地図を「スタイル」として保存することも可能だ。
さらに、「地図や写真を追加」を選択することで、地理院地図で提供されている「色別標高図」や「デジタル標高地形図」「陰影起伏図」「傾斜量図」「アナグリフ」「赤色立体図」など、さまざまな地図を重ねることができる。
従来の「地理院地図」と異なる点としては、ベクトルデータの採用により、地図画面の回転や鳥瞰表示が可能となっている点だ。Ctrlキーを押しながら(または右クリックしながら)ドラッグすることで自在に回転させることが可能。注記や道路番号などの向きは変わらずに、背景地図だけを回転させることができる。
現在は関東のみ(一部エリア除く)、今年度中に全国公開を目指す
試験公開で提供されるエリアは、20万分の1地勢図の「宇都宮」「水戸」「甲府」「東京」「千葉」の範囲で、縮尺によってはその周辺エリアも提供する。提供エリアは今後、順次拡大する予定で、国土地理院情報普及課の佐藤壮紀氏によると、今年度中をめどに全国エリアの公開を目指しているという。今後はエリア拡大はもちろん、さらなる表示速度の向上と機能強化にも期待したい。
“地図好き”なら読んでおきたい、片岡義明氏の地図・位置情報界隈オススメ記事
- 人々はなぜ「位置情報エンジニア」を目指すのだろうか――その仕事の魅力とキャリア形成を賭けた理由
- ゼンリン、都道府県の形をしたピンバッジ全47個セットを発売。フレーム入り
- 「一億総伊能化」を掲げる 青山学院大学・古橋大地教授の授業がレジリエントだった。
- 大学の「地理学科」ってどんなところ? “駒澤地理”の中の人に聞いてみた
- 高校の「地理総合」必修化で、地理教員の有志らがGoogleスライドで教材を共有
- 地理空間情報の最新トレンドを札幌で俯瞰してきた。「MIERUNE MEETUP 2024」レポート
- 「チーム安野」は都内1万4000カ所の都知事選ポスター掲示板をどう攻略していったのか?
- まるで現代の伊能忠敬――その極みにはAIもまだ辿り着けてない!? 地図データ整備の最前線を盛岡で見た
- 「れきちず」が3D表示に対応 地図データをベクトルタイル化。「江戸切絵図」から町家領域の抽出も
- 「れきちず」が話題、開発者の@chizutodesignさんが“地図とデザイン”の魅力を語る
- これはいつまでも眺めてしまいそう! 全国の流域を網羅した「YAMAP 流域地図」公開
- 神戸市さん、データ利活用しすぎ……無料で誰でも使える「統計ダッシュボード」拡充
- 「登記所備付地図」の電子データを法務省が無償公開→有志による「変換ツール」や「地番を調べられる地図サイト」など続々登場
- スマホ位置情報の精度が向上、“高さ”特定可能に。日本で10月より「垂直測位サービス」
- 電波強度がGPSの10万倍、GNSSの弱点を補う「MBS」とは?
- スマホの「北」は「真北」「磁北」どっち? 8月11日「山の日」を前に考えてみよう
- Googleマップも未踏の領域!? 海の地図アプリ「ニューペックスマート」が本気すぎる
- 海岸線3万2000kmを測量、日本の“浅海域”を航空レーザー測深で詳細な地形図に
INTERNET Watchでは、2006年10月スタートの長寿連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」に加え、その派生シリーズとなる「地図と位置情報」および「地図とデザイン」という3つの地図専門連載を掲載中。ジオライターの片岡義明氏が、デジタル地図・位置情報関連の最新サービスや製品、測位技術の最新動向や位置情報技術の利活用事例、デジタル地図の図式や表現、グラフィックデザイン/UIデザインなどに関するトピックを逐次お届けしています。