被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

だまされないように注意!

SNSで見かける「ライブチケットを譲ります」に注意、アイドルファンも被害に遭った詐欺の危険性

 警視庁駒込署は9月29日、ジャニーズのアイドルグループ「Snow Man」のライブチケットを譲渡するという嘘の内容をTwitterに投稿し、現金を騙し取った男を詐欺容疑で逮捕したと発表しました。警視庁は男が85人から合計1000万円以上をだまし取ったとみて関連性を調査しています。

 同アイドルグループに限らず、人気グループのライブチケットは争奪戦になりやすく、すぐに完売してしまいます。この人気に目を付けて、詐欺師や転売して儲けようとする「転売ヤー(転売屋)」も集ってきます。詐欺師はチケットのレア度に応じて10倍20倍もの高値を付けるのですが、チケットを入手できなかったファンが購入してしまうことがあります。儲かることが分かれば、さらに多くの詐欺師や転売ヤーが殺到することになります。

 興行主はチケットの転売を禁止していることがあります。また、チケットの高額転売は法律で禁止されています。通称「チケット不正転売禁止法」(特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)が2019年6月14日に施行されており、業者だけでなく個人でもあっても、興行主の販売価格(定価)を超えて転売するのは罰則の対象になります。

違反したときの罰則として、定価を超えて転売すると1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその両方が科せられます。画像は政府広報オンラインより

 これは、興行主と消費者を守るための法律です。本来、チケットやグッズの代金として興行主に渡るはずのお金が、詐欺師や転売ヤーに流れてしまう可能性があります。そうすれば、潜在的に興行主が金銭的な被害を受けていることになります。

 消費者側も、転売チケットでは入場できない可能性がありますし、万が一公演が中止になった場合も、興行主が転売を禁止していた場合、転売チケットを買った人には返金されないこともあります。

 そして、今回起きた事件のように、ネット詐欺に遭う可能性もあります。興行主などによるチケット転売仲介サイトやリセールサイトを利用する場合は、適正な価格で転売チケットを購入できることもあります。しかし、TwitterやLINEなどでやり取りするのはリスクが高すぎます。お金を支払ったあとに連絡が途絶えたら目も当てられません。

SNSで見かける「チケット譲ります」に注意

 Twitterで少し検索するだけで、「チケット譲ります」「チケット譲ってください」といった投稿が見つかります。そこに「詐欺」というキーワードを付けて検索すると、ネット詐欺に巻き込まれた人たちの投稿が大量に出てきます。

 ルール違反は分かった上で手を出している人もいるようですが、注意が足りないと言えます。被害に遭った人たちのツイートを見ると、数日前に作ったばかりのTwitterアカウントとやり取りされていることが多いです。詐欺師は詐欺用に捨てアカウントを使っている可能性が高いので、関わらないようにしましょう。

 チケットを譲られる保証もないのに、お金を先に渡すのはNGです。こうした詐欺師と金銭のやり取りする際は、銀行振り込みやPayPay、LINE Payで支払わせるほか、コンビニで電子マネーを購入させたり、詐欺師所有のプリペイドカードにチャージさせる方法もあるようです。

 LINEでのやり取りを晒し、「拡散希望です!」と注意喚起を呼び掛けるツイートも多いのですが、詐欺師はアカウントを消して逃走するだけなので痛くもかゆくもありません。やり取りを見ると、詐欺師はファンを装い、とても自然に会話しています。被害者は全く疑いもせず、お金を支払っていました。中には、チケットがもらえなかった場合に備えて、転売側に個人情報を求める人もいますが、詐欺師はのらりくらりとかわすことが多いようです。

高額転売チケットに手を出すのは避けましょう

 チケットがどうしても欲しい! という気持ちは分かります。しかし、その抑えがたい気持に付け込む詐欺師が多いのが現実です。定価以上での転売がそもそも違法であり、詐欺師や転売ヤーを利することになってしまうことは覚えておいてください。

 本来であれば、政府広報や国民生活センターで啓もうしているように、チケットは公式のチケット販売サイトからのみ購入し、不正転売チケットには手を出さないようにすべきです。みんなが買わなくなれば、チケット販売においてネット詐欺師や転売ヤーもいなくなり、ファンが適正価格で購入できる可能性が高まるでしょう。

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと