被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー

それってネット詐欺ですよ!

ウェブサイト閲覧中の警告画面に従うと危険! 高校で7000人の個人情報が流出した事例も

 長野県東信地域の高校でサポート詐欺の被害が発生し、生徒の成績など7000人の個人情報が流出した可能性があるとの報道がありました。

 9月10日、高校の教諭がPCでニュースサイトを見ていると、ウイルスに感染したことを示す警告画面が表示されました。表示されている電話番号に連絡したところ、外国人とみられる男が対応し、ウイルス除去のサポートとして遠隔操作アプリをインストールするように指示してきました。教諭が指示に従った結果、PCが不正アクセスされてしまい、そのPCに保存されていた生徒と職員あわせて7000人あまりの個人情報が流出したおそれがあるとのことです。8月にも別の高校で同様の被害が発生しており、1700人の個人情報が流出した可能性があるそうです。

 サポート詐欺はウェブサイト閲覧中に「ウイルスに感染している」と警告画面を表示し、詐欺師がウイルス除去という名目で手数料やツールの料金をだまし取ったりマルウェアに感染させるネット詐欺です。以前からある手口ですが、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)への年間相談件数は2022年で過去最高となりました(過去記事「サポート詐欺の相談件数は2022年で過去最高に。『感染しています』と警告画面が出ても連絡しないで」を参照)。

 この詐欺は画面全体に偽の警告画面を表示するほか、警告音を鳴らして被害者を焦らせます。画面には、マイクロソフトや実在するセキュリティ企業のロゴが表示され、あたかも本物の警告のように見せかけており、電話してしまう人が後を絶ちません。外国から詐欺を仕掛けられていることが多く、相手の日本語はたどたどしいのですが、グローバル企業だからと勝手に納得してしまう人も多いようです。

 電話がつながると、遠隔操作アプリをインストールするように求められます。しかし、遠隔操作を許可してしまうと、詐欺師は何でもできてしまいます。OSの設定を変えることも、マルウェアに感染させることも、個人情報を盗み出すのも簡単です。なお、インストールを求められる遠隔操作アプリはビジネスでも利用されている無料アプリを使うケースが多いようです。

このような画面が表示されても、あわてないでください

警告画面が表示されても無視して閉じること

 ウェブサイト閲覧中にウェブブラウザーに大きくウイルス感染の警告が出たら、問答無用で閉じてしまいましょう。閉じるためのボタンが隠されているなら、「Alt+F4」キーを同時押しすると、表示しているウィンドウを閉じることができます。

 それでもうまくいかない場合は、「Ctrl+Shift+Esc」キーを押して、タスクマネージャーを起動します。タブの「プロセス」→「アプリ」のところに表示されているウェブブラウザーを選択し、「タスクを終了する」をクリックすれば強制終了できます。

 遠隔操作アプリをインストールしてしまった場合は、アンインストールしましょう。インストールしたのかどうか自分で分からない場合、Windows 11なら「設定」の「アプリ」から「インストールされているアプリ」を開き、並び替えのところで「インストール日付」にすると、新しくインストールしたアプリが上に表示されます。見覚えのないアプリがあるならアンインストールしましょう。

タスクマネージャーからウェブブラウザーを強制終了できます
インストールされたアプリを日付順で並べ替えて確認できます

 筆者が所属するNPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)にもサポート詐欺関連の相談があります。「何もしていないのにPCを乗っ取られた」というケースでも、よく話を聞くと遠隔操作アプリを自分でインストールしてしまっていることがあります。被害を回避するには、警告画面が表示されても無視すること、また、他人の指示で遠隔操作アプリをインストールしないことが重要です。

 Windowsにも「クイックアシスト」という遠隔操作機能が搭載されています。アプリを起動し、共有相手から教えてもらったコードを入力すると、遠隔操作を許可できるのです。例えば、実家の両親がPCの設定が分からない、という場合に遠隔サポートしてあげる時などに活用できます。今のところ、クイックアシストを利用した遠隔操作による不正アクセスの事例は耳にしていませんが、できることは同じですので覚えておきましょう。

 サポート詐欺の事例を知っていれば、被害に遭わずに済みます。ぜひ、職場やご両親、シニア層の知人などで情報を共有し、デジタルリテラシーを高めて自衛してください。

Windows 11に搭載されているクイックアシストの画面です

あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。

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高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと