地図と位置情報
360°映像で小笠原の魅力を地図に配信、観光情報発信プラットフォーム「めぐるっと」提供開始
地図開発のゴーガと、リコー「THETA 360.biz」が連携
2019年2月7日 17:00
株式会社ゴーガは、株式会社リコーと連携して、観光情報提供サービス「めぐるっと」をリリースした。実証実験の第1弾として、小笠原の父島と母島の観光情報を配信する。リリースにあたって7日、芝浦埠頭の付近に停泊中の「おがさわら丸」船内にて記者発表会が行われた。
アプリ開発は不要、観光事業者がウェブ画面上で情報を登録可能
「めぐるっと」は、観光事業者から一般旅行者に向けて、スポット情報やクーポン、スタンプラリーなどの観光情報をiOS/Androidアプリで提供するサービスだ。リコーのクラウドサービス「THETA 360.biz」と連携し、現地にいるかのように360°を見渡せるコンテンツ(静止画およびYouTube動画)を配信できる。
観光情報アプリは一般的に独自開発が必要となるが、めぐるっとでは、ウェブ上の入力画面に、スポット情報、クーポン配布、スタンプラリー機能など、文字と画像を登録するだけでアプリに情報が配信される。専用のサーバーは設置不要で、アプリ開発の専門知識も必要なく、文字入力ができる程度のリテラシーがあれば、旅行者に観光情報を提供することができる。
リコー「THETA」の360°画像×Google ストリートビューの有用性とは?
リコーのTHETA 360.bizは、360°全天球カメラ「RICOH THETA」で撮影した360°画像を閲覧できるコンテンツを簡単に作成し、ウェブサイト上での埋め込み表示やURLの共有によりエンドユーザーに提供するクラウドサービスだ。不動産物件紹介や観光地案内、飲食店やレンタルオフィスの紹介など、さまざまな分野で利用されている。
ゴーガによると、同社はかつてGoogle ストリートビュー(インドアビュー)の撮影代行サービスを提供していたこともあり、360°の有用性に着目していたという。通常の静止画やYouTube動画が特定のアングルでしか現地の様子を把握することができないのに対して、360°映像はビーチや海の中、ホテルの部屋などを、まるでその場で見回すように楽しむことができる。
現在、ゴーガは「Google Maps Platform」を活用した開発を行なっており、ストリートビューとTHETAの360°コンテンツを組み合わせれば現地の様子をより直感的に把握できるのではないかと考え、リコーと連携することにした。なお、ストリートビューの閲覧は、リリース当初はAndroid版のみで、iOS版も順次対応予定だ。
地図に特化したUIで、聖地巡礼・ロケ地巡り・商店街の集客にも
ゴーガ代表取締役社長である今関雄人氏は、めぐるっとが従来の観光情報アプリと比べて優れている点として、360°映像が配信可能である点や、情報の登録が容易である点に加えて、アプリのUIが地図に特化しており、観光事業者がユーザーに対して位置情報に紐付けた情報を提供できる点を挙げている。
「めぐるっとは聖地巡礼、ロケ地巡り、商店街の集客など、いろいろな用途に利用できます。ゴーガは地図に特化した会社ですので、観光情報を提供するのにあたって、いかに地図を活用するかが重要であると考えています。めぐるっとを使って旅の途中で地図を見ながら、『時間が余ったから、ここのスポットにちょっと寄ってみよう』といった新しい発見をしてもらえればと思います。」(今関氏)
また、観光事業者に対してユーザーの閲覧履歴やスタンプラリー・クーポンの利用履歴などのデータを提供し、観光事業者がそれらのデータをもとに、提供情報の精度を高いものにしていける点もメリットとして挙げている。
記者発表会には、小笠原村観光局の事務局長を務める根岸康弘氏も出席。「小笠原といえば世界自然遺産ですが、実はほかにも数多くの魅力があり、それを伝えるためにめぐるっとの実証実験に参加することにしました。めぐるっとの360°映像によって小笠原の旅の満足度が向上することを期待しています。アプリを通じて事前に小笠原の歴史などについて知っていただくのにも役立ちますし、ユーザーの利用情報をマーケティングの資料として利用できる点も魅力で、小笠原の新しい観光ツールとして活用していきたいと思います」と語った。
また、リコーSmart Vision事業本部長である大谷渉氏は、「めぐるっとで360°コンテンツを提供することにより、違う時間帯や季節ごとの景色を見比べたり、海上と海中、山の麓と山頂など違う場所を見比べたりと、小笠原というコンテンツを軸に、時空を超えた360°ならではの新しい体験を提供していきたいと思います」と語った。
めぐるっとは基本的にプラットフォームとして提供するため、同アプリの下に複数の自治体の観光情報を掲載するかたちとなるが、自治体ごとに個別アプリを作成するサービスを提供することも検討しているという。ゴーガおよびリコーは2019年内に50自治体への導入を目指している。
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INTERNET Watchでは、2006年10月スタートの長寿連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」に加え、その派生シリーズとなる「地図と位置情報」および「地図とデザイン」という3つの地図専門連載を掲載中。ジオライターの片岡義明氏が、デジタル地図・位置情報関連の最新サービスや製品、測位技術の最新動向や位置情報技術の利活用事例、デジタル地図の図式や表現、グラフィックデザイン/UIデザインなどに関するトピックを逐次お届けしています。