地図と位置情報

地図タイルの新たな選択肢。mapboxに続き、スイス発「MapTiler」も日本上陸!

札幌のMIERUNEと提携して日本向け地図配信サービス提供開始

 札幌を拠点に地理空間情報関連のビジネスを展開するベンチャー企業の株式会社MIERUNEは27日、グローバル向け地図配信サービス「MapTiler」を提供するスイスのKlokan Technologiesと共同で、新たな日本地図の配信サービス「MapTiler.JP」を提供開始した。

「MapTiler.JP」。MapTilerでは、一般的な地図のオープンソースJavaScriptライブラリ、Android/iOSのモバイルSDK、ゲームエンジン、デスクトップGISなどに対応した配信形式で地図タイルを提供。ユーザー企業・組織は、自身のブランドイメージにマッチした地図のカスタマイズ、ウェブサイトやモバイルアプリへの導入、ユーザーの独自プロダクトからの地図の再配信が可能

「OpenStreetMap」をベースに、家形は国土地理院の「基盤地図情報」を使用

 MIERUNEはこれまで「MIERUNE地図(MIERUNE Map)」と呼ばれるクラウドマッピングサービスを日本市場で提供。Google マップなどの地図サービスに代わる自由度の高い地図として、自治体・企業のGIS(地理空間情報システム)や地図コンテンツの背景地図を求めるユーザーのニーズに応えてきた。

これまで提供していた「MIERUNE地図(MIERUNE Map)」

 今回、両社の新たなパートナーシップによってスタートするMapTiler.JPは、MIERUNE地図に代わる新たな地図サービスとして提供開始するものだ。フリーでオープンな地理空間情報を市民の力で作るプロジェクト「OpenStreetMap(OSM)」の地図データをベースに、さまざまなオープンデータを組み合わせて作製した地図タイル「JP MIERUNE」を日本向けに配信する。

 既存のMIERUNE地図との違いは、MIERUNE地図で提供されていたのがラスター形式の地図タイルだけだったのに対して、MapTiler.JPではベクトル形式の地図タイルも提供する点だ。ベクトルタイルのフォーマットはMapbox Vector Tile(MVT)を採用しており、デザインは「Streets」「Gray」「Dark」の3種類を用意する。

 なお、ベクトル地図については、OSMのデータだけでなく、国土地理院の「基盤地図情報」の家形(建物を上から見た形)データを組み合わせている点も特徴だ。

「JP MIERUNE Streets」
ベクトルマップのため3D表示も可能
「JP MIERUNE Gray」
「JP MIERUNE Dark」

 MIERUNEの代表取締役である朝日孝輔氏は、今回、MpaTilerが日本向けのサービスを提供したことについて、以下のように語る。

 「MapTilerは以前からOSMをもとにした地図データ配信サービスを提供してきましたが、昨年からさまざまな国に向けてローカライズしたサービスを提供していく方針となりました。現在はオランダ版と英国版のローカルマップを提供しており、今回、日本での展開は当社が協力することになりました。MapTilerが配信しているグローバル向けの地図に加えて、日本版の地図として情報を加えた、日本のユーザーが使いやすい形にした地図を配信します。」

 「まずはその第1弾として、OSMに基盤地図情報の建物データをプラスしたものを用意しました。これまでMIERUNEはラスタータイルに限ってクラウドで提供してきましたが、今後はMapTilerのプラットフォーム上でベクトルタイルも配信することになります。ベクトルタイルでは、ユーザーはMapTilerに搭載された地図のスタイルを変える機能を使用できます。」

「MapTiler」のグローバル向けの地図
ユーザーは編集ツール「MapTiler EDIT STYLE」を使って地図のスタイルを自由に変更可能。土地の用途(住宅地・商業地・工業地・学校・鉄道など)、植生(森林・草地など)、水部、土地被覆(建物・道路・鉄道・橋・トンネルなど)、POI(バス停留所・ジャンクションなど)、鉄道の駅、背景などの項目について、表示するズームレベルの範囲や色、透明度、注記(地図上の文字)の大きさなどを細かく指定できる

自由度の高い地図タイルを、安価で

 MapTiler.JPの提供開始に伴い、従来のMIERUNE地図はサービスを終了し、これまでMIERUNE地図を使っていたユーザーは全てMapTiler.JPに乗り換えてもらうかたちとなる。ただし、MapTiler.JPのサポートはMIERUNEが行うとともに、JP MIERUNEなど日本向けに提供するタイルの保守やカスタマイズなどもMIERUNEが行う。ちなみに使用料金は、MIERUNE地図よりも安価になるという。

 「MapTilerのローカルマップに対する基本的な方針は、各国でオープンデータとして入手できるものを、その国に詳しい人が集めて、それを地図タイルにして提供することです。Google マップなどの一般的な地図サービスと異なるのは、オープンデータをベースとしたものであり、安価で、スタイル変更など自由度の高い地図タイルを使用できる点です。また、MapTilerには、ユーザーが独自に用意した地図データをアップロードして、ユーザー自らが地図タイルを作成することができる機能もあるので、この点も魅力ですね。」(朝日氏)

株式会社MIERUNE代表取締役の朝日孝輔氏

 地図配信サービスといえば、米mapboxも2019年に日本法人を立ち上げて、日本市場向けにビジネス展開を始めている。mapboxはOSMの地図とは別に、ゼンリンの地図データを使った地図を提供開始している。一方、MapTilerでは、OSMと国土地理院の基盤地図情報を組み合わせた新たなベクトル地図を提供するということで、地図タイルの新たな選択肢として期待される。

 「今は日本エリアのOSMデータから変換した地図を配信していますが、MapTilerという世界に向けて配信する基盤を得たので、世界全域のOSMデータを変換して日本らしいスタイルを付けてグローバル向けに配信したいという思いもあります。」(朝日氏)

 なお、JP MIERUNEのマップスタイリングの作製には、元Appleのカートグラファーで、現在はMIERUNEの社外取締役も務める森亮氏が参加しており、随所で森氏の地図デザインに対するこだわりが反映されている。それについては次回、森氏へのインタビュー記事『元Appleのカートグラファー・森亮氏が語る「MapTiler.JP」の地図のこだわりとは? そもそも“カートグラファー”って何をする職業?』としてお届けするので、本記事とあわせて読んでいただきたい。

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片岡 義明

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。