INTERNET Watch 30周年
【2016年のINTERNET Watch】Googleの囲碁AI「AlphaGo」が初めてプロに勝利、検索アルゴリズムに大きな影響を及ぼした「WELQ騒動」も
2026年6月22日 06:30
2016年の出来事
2016年(平成28年)2月、待機児童問題を訴えた「保育園落ちた日本死ね!!!」と題する記事がはてな匿名ダイアリーに公開され、国会でも取り上げられるなど話題に。4月、熊本地震が発生。震度7を観測し、大きな被害をもたらした。5月にG7伊勢志摩サミット開催。閉幕後、米オバマ大統領が現職の大統領として初めて被爆地・広島を訪問した。
7月の東京都知事選では小池百合子氏が当選し、初の女性都知事に。8月にリオデジャネイロ五輪開催。閉会式では、次回2020年の開催地である東京の小池知事に五輪旗が引き継がれるとともに、マリオに扮した安倍晋三首相も登場した。米国では11月、大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利。
この年、映画「シン・ゴジラ」「君の名は。」が大ヒット。ピコ太郎の楽曲「PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)」の動画が8月にYouTubeで公開されると、ジャスティン・ビーバーに紹介されたことによって拡散、世界的な大ヒットとなる。7月にリリースされたスマートフォンの位置情報ゲーム「ポケモンGO」も大ヒットし、社会現象・社会問題にもなった。
なお、2016年は「INTERNET Watch」が20周年だったタイミングだ。同じく20周年を迎えた企業やサービスなどを集めたリンク集の記事を掲載している。インターネット業界では、Yahoo! JAPAN、OCN、さくらインターネット、Internet Weekなどが“同期”。
2026年2月に30周年を迎えたINTERNET Watchは、1996年2月に有料メールマガジンとして創刊し、1997年1月にウェブサイトを開設した。ここでは2026年の視点から2016年の記事を10本取り上げ、当時を振り返る。(1996年からの振り返り一覧)
1.2016年に「AI」の話題と言えば……
▶Googleのディープラーニングシステムによって、人工知能が初めて囲碁のプロ棋士に勝利
2016年当時、AIの話題は「機械学習(マシンラーニング)」や「深層学習(ディープラーニング)」がメインであり、とりわけこの年に注目を集めていたのが「囲碁」のAIだ。それまでのAIでは人間に通用しないとされていたのが、深層学習技術などを活用してGoogleが開発した「AlphaGo」によって、AIが初めて囲碁のプロ棋士に勝利したことを報じている。
日本では、ドワンゴが日本発の囲碁AIを開発する「DeepZenGoプロジェクト」を3月に発表。その日本発の囲碁AI「DeepZenGo」の進捗状況が11月に発表され、「プロ棋士と互先で対局できるレベル」まで到達したことなどを伝えている。
2. インターネットの「IANA機能」監督権限を米国政府が手放す
▶米国政府がルートDNSや、IPアドレス管理などの“IANA機能”監督権限を手放す
IANA(Internet Assigned Numbers Authority)とは、ドメイン名やIPアドレス、AS番号、プロトコル番号といった、インターネット資源を大元で管理・配分をする機能のこと(もともとは南カリフォルニア大学のジョン・ポステル氏を中心としたプロジェクトグループの名称だ)。その役割が2000年2月、米国商務省電気通信情報局(NTIA)との委託契約のもとで非営利組織のICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)へと引き継がれたが、その後もNTIAがIANA機能の監督権限を保持するかたちになっていた。インターネットは米国防総省高等研究計画局(ARPA)の資金提供を受けたネットワークとして誕生し、米国の研究者らを中心として成長してきた経緯があるためだ。
しかし、インターネットがグローバルな社会基盤へと成長していく中で、その重要な資源の管理機能が1つの国の政府の影響下にあることに批判も上がるようになった。
2016年10月1日、NTIAはICANNとの委託契約を延長せずに失効。IANA機能の監督権限を米国政府が手放すこととなった。これによりIANA機能は、特定の国の政府や企業などではなく、世界中の技術者や企業、政府、一般ユーザーなど、多様な関係者からなるコミュニティの合意形成のもとで運用される、マルチステークホルダー体制に移行することになった。
これを受けて日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)は「完全に民間主導のグローバルコミュニティによって重要資源の監督がされることになったことは、象徴的で歴史的な第一歩」とのコメントを発表。一般紙でも「米政府が監督権、手放す ネットの自主管理、始動」(朝日新聞、2016年11月8日)といった見出しで報じられた。
3.「阿部寛のホームページ」無事移転
▶あの「阿部寛のホームページ」が移転、デザインはそのままでネットユーザーは一安心
2016年秋にニフティのホームページサービス「@homepage」が終了するのに伴い、同サービス上で開設されていた「阿部寛のホームページ」はどうなってしまうのか――。ネットユーザーの心配をよそに、シンプルなデザインもそのままに、後継のホームぺージサービス上に移転したことを伝えた「やじうまWatch」コーナーの記事。
それから9年。ホーページサービスを提供していた各社が相次いで撤退していった一方で、ニフティは2025年8月、個人ホームぺージの文化を守り続けるとして、ホーページサービス継続のスタンスを表明。これに伴い、それまで同社ホームページサービスの課題だったSSL/TLS対応(HTTPS化)も行われた。現在、「阿部寛のホームページ」もHTTPS化されている。
やじうまWatchではその後も、爆速ホームページ対決の結果やIPv6対応、マインクラフト内での閲覧チャレンジ動画、ホームぺージに対する阿部さんご本人のコメントと、「阿部寛のホームページ」の話題を取り上げている。
4.大規模災害時の無料Wi-Fi「00000JAPAN」、熊本地震で初運用
▶熊本県内で無料Wi-Fi「00000JAPAN」、携帯3キャリアがアクセスポイント無料開放
大規模災害の被災地において、誰でも無料で利用できる公衆Wi-Fiを提供するための取り組みが「00000JAPAN(ファイブセロジャパン)」だ。普段は携帯キャリア各社がそれぞれ加入者向けに運用しているWi-Fiスポットにおいて、災害時用の統一SSID「00000JAPAN」を設定し、加入者以外にも広く解放する。無線LANビジネス推進連絡会が2014年5月に発表していたが、平成28年熊本地震のときに初めての運用となった。
避難所にも臨時の無料Wi-Fiアクセスポイントが整備され、その設置場所のマップも公開。ヤフーが提供するスマートフォンの地図アプリでは、無料充電スポットなどの情報の検索・表示に対応した。
2011年の東日本大震災から5年。被災地における情報取得手段としてのインターネットの重要性が認識されるようになり、災害発生時の通信インフラ確保が迅速に行える体制が整備されていった結果とも言える。
5. 「Kindle Unlimited」日本上陸。対抗各社の定額電子雑誌サービスも増える
▶電子書籍読み放題サービス「Kindle Unlimited」、月額980円で国内提供開始
Amazonの電子書籍読み放題サービス「Kindle Unlimited」は、海外で2014年にスタート。日本では2016年8月にサービスが提供開始となり、読み放題の対象となる書籍は、和書12万冊以上、雑誌240タイトル以上、洋書120万冊以上とされていた(ちなみに現在、同サービスのページでは「500万冊の電子書籍が読み放題」とアピールしている)。
一方、電子雑誌の定額読み放題サービスとしては、2014年提供開始の「dマガジン」などがあったが、2016年には「楽天マガジン」や「マガジン☆WALKER」も参入。変わったところでは“生き物図鑑”が読み放題の「図鑑.jp」というサービスも12月に発表された(実際のサービス開始は翌2017年1月から)。
INTERNET Watchではこの年、大きく注目されるようになった電子雑誌・書籍の定額制サービスについてリンク集としてまとめたほか、「電子書籍ビジネス調査報告書2016」からの抜粋記事として電子雑誌の動向や定額制読み放題と今後の展望についての解説記事、『書籍読み放題「Kindle Unlimited」で作家の稼ぎ方はどう変わるのか? 鈴木みそ氏らが日本独立作家同盟のイベントで討論』と題したイベントレポート記事を掲載している。
6.「WELQ騒動」が起こる。検索アルゴリズム側の課題も浮き彫りに
▶DeNA、キュレーションサイトのデタラメ/パクリ記事問題で経緯説明・謝罪会見
肩こりの原因が「幽霊が原因のことも?」――ディー・エヌ・エー(DeNA)が展開していたキュレーションメディアの1つ、ヘルスケア情報を扱うサイト「WELQ(ウェルク)」において、医療関連情報として問題のある記事の存在が指摘されたことに端を発し、専門家の監修やチェックを経ない不適切な内容の記事や、コンテンツの盗用が疑われる記事が掲載されていたことが判明。同社が謝罪するとともに、キュレーションメディア10サイトの全記事を非公開にし、第三者委員会による原因究明などの調査が行われた。その報告は翌2017年3月に発表され、DeNAはガバナンス強化やキュレーションメディア事業の見直しなどを余儀なくされた。
背景にあったのは、行き過ぎたSEO重視の考えだ。検索結果で上位に表示されることを目的に、キーワードを詰め込んだ記事を量産していたとされ、情報の正確性・信頼性がないがしろにされていたかたちだ。
同時にこれは、DeNAの不祥事というだけでなく、そうした低品質な記事を検索結果の上位に表示してしまっていた検索アルゴリズム側の課題も浮き彫りにした。「WELQ騒動」は、Googleが検索アルゴリズムを大きく見直す契機になったと言われている。
まずGoogleは2017年2月、日本語検索を対象に、検索結果上位の獲得だけを目的にしたような低品質コンテンツの順位を下げ、利用者にとって有用で信頼できる情報が上位に表示されるようアルゴリズムをアップデート。さらに同年12月には、医療・健康に関連する検索結果について、医療従事者や専門家、医療機関などが提供する「信頼性が高く有益な情報」を上位に表示されやすくするようアップデートした。現在の、信頼性や専門性をより重視するアルゴリズムへとつながっていくことになる。
7. 産業界を挙げて「IoT」――CEATEC JAPANが“CPS/IoTの技術展”になる
▶家電見本市であることをやめた「CEATEC JAPAN 2016」10月4日~7日開催、これからは“CPS/IoT”の総合展
IoT(Internet of Things、モノのインターネット)というワードは2015年になって大きく注目されるようになったが、そうした流れの中で2016年に特に印象的だったのが、先進技術の展示会イベント「CEATEC JAPAN」の大きな方向転換だ。
それまで“家電見本市”のイメージが強かった同イベントが、この年の「CEATEC JAPAN 2016」では「CPS/IoT(Cyber Physical System/Internet of Things)」をテーマに据え、「IoTの全てが一堂にそろう展示会となる」というスタンスが示された。CEATEC JAPANを主催する電子情報技術産業協会(JEITA)が翌2017年に発表した調査結果によると、CPS/IoTの市場規模は、2016年に世界で194.0兆円・日本で11.1兆円で、これが2030年には世界で404.4兆円・日本で19.7兆円に成長すると予想している。各種機器のIoT化率が8割を超える見込みであることが、市場拡大の背景にあるのだという。
2016年の国内のIoT事情がリンク集の記事としてまとめられている。また、INTERNET Watchではこの年、IoTを“ゆるく”考えていく「俺たちのIoT」なる新連載をスタートしている。
なお、IoTマルウェアの「Mirai」が登場したとされるのも2016年だった。セキュリティの不十分なIoT機器に感染するマルウェアによる攻撃が2015年から急増していたが、MiraiによってDNSサービス「Dyn」をダウンさせる規模のDDoS攻撃が行われるなど、世界的に猛威を振るった。翌2017年、日本でも猛威を振るうことになる。
8. 「ジオ展」が6社でスタート。地図・位置情報に特化した展示会イベント
▶東京・渋谷で「ジオ展」初開催、地図/位置情報関連のソリューションを提供する6社が集結
地図・位置情報関連のプロダクトを手掛ける企業の共同展示会イベント「ジオ展」が2016年11月、初めて開催された。その開催趣旨や展示内容を伝えた、連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」の記事。出展企業はゴーガ、インクリメントP、NTT空間情報、ESRIジャパン、ナイトレイ、ヴァル研究所の6社。会場もゴーガのオフィス内という、小規模なものだった。
それが2026年4月に開催された「ジオ展2026」では、72の企業・団体が出展するまでに拡大。当初はビジネス向け展示会の色合いが強かったが、それに加えて現在は業界団体、大学の研究室や学会、NPO、大学・社会人のサークルなども集うイベントに発展した。
9. 「ポケモンGO」が登場。「AbemaTV」「スノー SNOW」も人気
▶2016年新作スマートフォンアプリの上位は「Pokémon GO」「AbemaTV」「スノー SNOW」
ニールセンがとりまとめた、スマートフォンアプリの利用状況についての調査結果を報じたニュース。これによると、2016年の新作スマートフォンアプリの平均月間利用者数は、1位が「ポケモンGO」で1630万人、2位が「AbemaTV」で358万人、3位が「スノー SNOW」で182万人となっている。
「ポケモンGO」は、その人気に便乗するアプリも出回り、サービス開始の翌日にはマルウェアを仕込んだ偽アプリが発見されていたという。正規版を不正改造した“リパック版”や、アドウェアや迷惑アプリなどの“便乗アプリ”についても注意が呼び掛けられた。
「スノー SNOW」は、顔認識や写真加工、スタンプ機能を備えたカメラアプリだ。翌2017年3月にニールセンデジタルが発表した調査結果では、利用者における18~34歳の女性が54%を占めているという。このユーザー層の構成は、同じく18~34歳の女性の割合が高く、後に大きく成長した「Instagram」の2年前の時点(2015年1月)の状況と類似しているとの興味深い指摘もなされている。
10.“バルス離れ”が始まる? 秒間ツイート数の記録更新はならず
▶Twitterユーザーの“バルス離れ”か? 秒間バルスツイート数の記録更新ならず、前回から半減
Twitter上での「バルス祭り」が本格化したのは2009年の放映時あたりからと言われており、回を重ねるごとに企業の公式Twitterアカウントなども参戦するなど加熱していった。
2016年1月15日夜の「天空のラピュタ」テレビ放送時は、バルスツイート全量を計測していたNTTデータによると、秒間ツイート数のピークは23時23分14秒の約5万5000件。前回2013年8月2日の放送時、23時21分50秒に記録した秒間10万6338件から半減したという。過熱気味だったこの祭りに対して、逆にネットユーザーが醒めてしまった可能性も考えられる(ただし、23時23分の1分間では34万5397件ものツイートがあったとしており、わずかに前後にタイミングがずれてしまった人が多かった可能性も考えられる)。
Twitter社も以前はバルス祭りにおける秒間ツイート数の記録を公式発表したり、自社カンファレンスの講演で言及するなどしていたが、「瞬間風速を計るということがあまりTwitter本来の趣旨と合わないのでは」とのことで、この年のバルス祭は計測しなかったという。

