地図と位置情報
地理・地図好きな学生は必見! ジオな人々が集結する、年に一度の展示会「ジオ展」4月21日に開催
企業、大学の研究室、趣味のサークルなど42社・組織が出展。入場無料
2023年4月12日 08:00
地理空間情報に関連した企業や団体が集結する展示会「ジオ展2023」が4月21日、WeWork城山トラストタワー(東京都港区虎ノ門)にて開催される。
同イベントには大手企業やベンチャー企業のほか、大学やNPO法人、趣味のサークルなど幅広く出展する。各社が提供する製品・サービスや、研究・取り組みなど、日本のジオ業界の現状を知ることができるだけでなく、ジオ業界への就職・転職を考えている人にも最適だ。入場料は無料(事前に来場登録が必要)で、誰でも参加できるので、ジオ業界に関心のある人はぜひ会場を訪れてみてほしい。主催はマップボックス・ジャパン合同会社、株式会社MIERUNE。
ジオ展は2016年から年に1回のペースで開催されているが、2020年からはコロナ禍のためオンライン開催が続いていた。今年は4年ぶりにリアル会場での開催となる。
企業だけでなく、大学の研究室やエンジニア個人も出展。過去最多の42社・組織
一口に“ジオ”の関連企業と言っても、扱っている製品やサービスは、地図データやGIS(地理情報システム)、位置情報ビッグデータの分析・解析サービス、地図アプリ/サービス開発プラットフォームなど多岐にわたる。
ジオ展にはそのような幅広いジャンルの企業が集まっており、出展企業はソフトバンク株式会社やソニーグループ株式会社などの大手企業をはじめ、ジオテクノロジーズ株式会社や株式会社マップルなど地図データの提供会社、株式会社ゴーガやマルティスープ株式会社など法人向けの地図・位置情報ソリューションの提供会社、マップボックス・ジャパンやMIERUNE、MpaTilerなど地図開発プラットフォームの提供会社、位置情報データプラットフォームの提供会社である株式会社ブログウォッチャーなど多彩な顔ぶれだ。
企業だけでなく、大学の研究室や、研究者/エンジニアによるコミュニティ、趣味のサークルなどによる出展があるのも、同イベントならではの魅力である。自由でオープンな地図を草の根の力で作る世界的プロジェクト「OpenStreetMap」を使った教育に取り組む青山学院大学・古橋研究室、オープンソースの古地図ビューアーライブラリ「Maplat」の開発者である大塚恒平氏が取り組んでいる「Code for History」、お茶の水女子大学の準公認団体で地理をテーマにさまざまな活動を展開している「地理×女子」、地図・地理・地形が好きな人たちの集まり「地図ラーの会」なども参加する。
ジオ展の第1回は2016年11月開催で、このときはわずか6社だったが、8回目となる今年は過去最多となる42社・組織が出展する。
今回、主に大学・教育関連の出展者に、ジオ展への参加を決めた理由や出展内容などについて聞いたので紹介しよう。
青山学院大学 古橋大地教授
「最先端の地理空間情報技術を学ぶには、その最前線で活躍する方々と直接コミュニケーションをとることが一番だと感じています。ジオ展はそういった意味で、学生から見ても教科書にはないリアルな現状を体験し、質問を直接ぶつけることができる貴重な機会です。逆に我々も地理空間情報を大学で教えている立場から、普段のハッカソンや卒業研究での成果を皆さんに見てもらい、数年後に社会に飛び出していく学生たちの今の実力を知っていただく場になると考え、今年も出展いたします。
今年度はガチャガチャにジオな要素をどこまで盛り込めるのか、地理空間情報を鍵としたデジタルとアナログの融合『ジオガチャ』にチャレンジしてみます。地理空間情報がデジタルに移行しても、我々人間はリアルな空間を生きています。デジタルとアナログは対立するものではなく、地理空間情報を介して、実体験をより豊かにするための技術やアイデアがたくさん産まれている、そんな未来を見たい人にその一端を伝えたいと思っています。」
立正大学 後藤真太郎教授
「立正大学地球環境科学部では、環境データサイエンスとして2年生からGISやリモートセンシングの演習があるにもかかわらず、熊谷キャンパスであるがゆえに他大学や会社での利用状況を知る機会が少なく、ジオ展でGISをソーシャルに利用しているユーザーや開発者との接点を持つことで化学反応が起きることを期待しています。
展示では、GISやドローンを用いた生物多様性管理や環境保全型農業への適用事例などについて、大学のカリキュラムで環境データサイエンスの一貫での利用事例とともに紹介したいです。GISは地図データの見える化の手法ですが、データサイエンスの一貫として捉えることで社会課題に対応できる空間的思考の道具になるポテンシャルがあります。GISエンジニアの道具としてだけでなく、データの使用方法を理解してGISの裾野を拡げてほしいと考えています。」
地理×女子 二俣陽香さん
「普段は学内での活動が主となっている地理×女子ですが、ジオ展への出展を通して地理×女子の活動を外部に向けて発信する機会を持つことができると思い、出展を決めました。定例会で多く話題に挙がった『アニメや漫画、ドラマなどの舞台になった場所』についての展示を計画しています。また、地理×女子が普段どんな活動をしているのかについて紹介したり、地理×女子グッズの販売を行ったりする予定です。
『地理』は学校の授業科目としての印象が強い方もいらっしゃるかもしれませんが、街歩きでの発見を通して地域を知り、地理の面白さを感じていただきたいです!」
地理系女子フォーラム 森順子さん
「地理系女子フォーラムは、地理系分野の女性比率が低いことに危機感を抱いている教育関係者や企業の有志が集まり、昨年設立したばかりの完全なインフォーマル(草の根)組織です。広義の地理分野(測量・地図・GISなど)で緩やかにつながるネットワークです。女性特有の悩みや知見などを共有・相談し、活動できる場の創作や女子中高生の進学・就職先などの視野の拡大などを目指しています。
ジオ展では知名度の向上や活動のPRのほか、地理系女子のメンバー募集を行いたいと考えています。女性比率が少ない地理分野でも、その仕事に楽しみややりがいを持っている女性がいることを知ってもらい、特に若い人に地理分野に興味を持ってもらいたいと考えています。」
ジオ業界を目指す学生は必見、ジオ企業各社が会社説明プレゼン
展示会場のほかにプレゼンテーション会場も設けられ、出展企業各社による発表が行われる。様々な企業や組織の取り組みを紹介するほか、採用情報なども得られるので、ジオ業界への就職を考えている学生や、この業界への転職を考えている社会人は見逃せない。もちろん、普段から地図・位置情報に関わる業務に携わっている人や、地図・位置情報について新しい取り組みを考えていて協力会社を探している人などにもお勧めだ。この機会にぜひ一度、ジオの世界を覗いてみてはいかがだろうか?
“地図好き”なら読んでおきたい、片岡義明氏の地図・位置情報界隈オススメ記事
- 人々はなぜ「位置情報エンジニア」を目指すのだろうか――その仕事の魅力とキャリア形成を賭けた理由
- ゼンリン、都道府県の形をしたピンバッジ全47個セットを発売。フレーム入り
- 「一億総伊能化」を掲げる 青山学院大学・古橋大地教授の授業がレジリエントだった。
- 大学の「地理学科」ってどんなところ? “駒澤地理”の中の人に聞いてみた
- 高校の「地理総合」必修化で、地理教員の有志らがGoogleスライドで教材を共有
- 地理空間情報の最新トレンドを札幌で俯瞰してきた。「MIERUNE MEETUP 2024」レポート
- 「チーム安野」は都内1万4000カ所の都知事選ポスター掲示板をどう攻略していったのか?
- まるで現代の伊能忠敬――その極みにはAIもまだ辿り着けてない!? 地図データ整備の最前線を盛岡で見た
- 「れきちず」が3D表示に対応 地図データをベクトルタイル化。「江戸切絵図」から町家領域の抽出も
- 「れきちず」が話題、開発者の@chizutodesignさんが“地図とデザイン”の魅力を語る
- これはいつまでも眺めてしまいそう! 全国の流域を網羅した「YAMAP 流域地図」公開
- 神戸市さん、データ利活用しすぎ……無料で誰でも使える「統計ダッシュボード」拡充
- 「登記所備付地図」の電子データを法務省が無償公開→有志による「変換ツール」や「地番を調べられる地図サイト」など続々登場
- スマホ位置情報の精度が向上、“高さ”特定可能に。日本で10月より「垂直測位サービス」
- 電波強度がGPSの10万倍、GNSSの弱点を補う「MBS」とは?
- スマホの「北」は「真北」「磁北」どっち? 8月11日「山の日」を前に考えてみよう
- Googleマップも未踏の領域!? 海の地図アプリ「ニューペックスマート」が本気すぎる
- 海岸線3万2000kmを測量、日本の“浅海域”を航空レーザー測深で詳細な地形図に
INTERNET Watchでは、2006年10月スタートの長寿連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」に加え、その派生シリーズとなる「地図と位置情報」および「地図とデザイン」という3つの地図専門連載を掲載中。ジオライターの片岡義明氏が、デジタル地図・位置情報関連の最新サービスや製品、測位技術の最新動向や位置情報技術の利活用事例、デジタル地図の図式や表現、グラフィックデザイン/UIデザインなどに関するトピックを逐次お届けしています。