地図と位置情報
これはいつまでも眺めてしまいそう! 全国の流域を網羅した「YAMAP 流域地図」公開
2024年6月5日 06:55
株式会社ヤマップは5月13日、日本全国の流域を網羅した3Dの「YAMAP 流域地図」を公開した。ヤマップの発表によると、「流域」とは“雨水が川に集まる大地の地形”を意味しており、大地を含めて地球上のほぼ全ての場所は流域でとらえられるという。流域は、都道府県や市町村などの行政区分とは異なる、水の流れを基礎とした生命圏の区分であり、“地球の生態系の単位”という見方もできる。
YAMAP 流域地図では、地図上で任意のエリアを選択すると流域がフォーカスされ、上部に流域名が表示される。フォーカスされたエリアをさらに細かく選択すると、分化した流域が表示され、入れ子構造を確認できる。フォーカスしたエリア内にある山の山頂を示すマークも表示され、源流の山を調べられる。山名からはYAMAPの山情報を調べることが可能で、流域地図をもとに源流の山に登るといった使い方が可能だ。
また、流域地図のリリースにともなって、登山地図アプリ「YAMAP」や、YAMAPのウェブサイトの山情報ページにおいて山を選択すると、流域地図上でその山を含む流域を確認できる導線も追加した。
流域地図の開発を担当したヤマップのエンジニア・森脇誠智氏は、この導線追加について以下のように語る。
「山を起点に流域を眺めると、きっとその流域が予想外の広がりを見せることに驚くと思います。あんな山やこんな山まで、同じ流域だったのかと。そして、そこからさらに発展して『自分が住む場所に恵みをもたらしてくれる源流の山はどこだろう?』『この山は3つの流域の分水界だったのか?』などと気になる山を探したり、実際にその山に登山に行ったりすることで、これまでと違った視点で登山を楽しんでもらいたいと思っています。」(森脇氏)
開発にあたって苦労した点として、森脇氏は「流域を導出するための手法の確立」と「全国の流域の網羅的な導出」の2点を挙げている。
「当初はそもそも流域というものを知らない状態でしたので、その概念や考え方の理解から始まって、流域を算出するための手法や必要なデータの調査など、それぞれ複数組み合わせて検証する過程を経て、ようやく実際の河川の流れに近い精度の流域を導出できるようになりました。
この手法を使って導出する流域には、理論上の河川が存在するのですが、この理論上の河川と実際の河川を関連付けるのも一苦労でした。自動で関連付ける処理を実装して試みたのですが、期待したほどの精度が出ず、最終的には計算結果を突き合わせながら地道に座標を補正することで実際の河川に関連付けて全国の流域を網羅的に導出できるようになりました。」(森脇氏)
今回公開したものはテスト版で、今後はハザードマップの表示や衛星画像をもとにした情報を追加する予定としている。
「流域とハザードマップを組み合わせることで、上流から下流への水の流れ、および流域や小流域の境界が可視化された状態で、浸水想定区域や土砂災害警戒区域を把握できます。これによって、例えば河口近くに住んでいる人は、たとえ遠く離れた場所で雨が降っていても、それが同じ流域内であれば自分が住んでいるエリアに影響があることが直感的に分かるようになります。
また、別の例として、ある河川でよく氾濫する地点があれば、その地点を含む流域や小流域を把握することで、どこにどのような対策をするべきか検討しやすくなると考えています。このように、災害をもたらすレベルの大雨に対して、われわれがどこに注目すればよいのかを把握するためのツールとして、流域地図が機能することを期待しています。」(森脇氏)
「衛星画像をもとに、山の植生活性データを観測し、山での植樹・木々の伐採が流域圏、特に河川にどのような影響を与えているのかを追っていく予定です。」(ヤマップ代表取締役CEOの春山慶彦氏)
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