地図とデザイン
夏休みの自由研究におすすめ! 国土地理院の「地理院地図Vector」で自分の地図をデザインしてみよう!
災害と地形について学べるコンテンツなども提供中
2021年8月19日 06:55
夏休みも残すところ10日あまりとなったが、自由研究のテーマが決まらずにまだ悩んでいる子どもがいるなら、国土地理院が試験公開している「地理院地図Vector」というウェブサイトを見ることをおすすめする。
国土地理院の「地理院地図Vector」とは
「地理院地図Vector」は、「ベクトルタイル」と呼ばれる形式の地図データを採用したウェブ地図サービスだ。国土地理院が正式公開している「地理院地図」はラスター画像形式の地図データを採用しているため、地図デザインを自由にカスタマイズすることができない。これに対して「地理院地図Vector」では、ベクトル形式の地図データを採用することにより、サイトの利用者が目的に応じて色を変えたり、表示する情報を取捨選択してカスタマイズしたりすることが可能となる。
例えば、白地図にして県境を分かりやすく表示したり、写真に地名のみを重ねたり、鉄道路線や川だけが表示されるようにしたりと、さまざまな表現が可能となる。国土地理院では、特に学校の授業や夏休みの自由研究、防災分野での活用を提唱している。
「白地図」「鳥瞰」など、地図の表示をいろいろ選べる
「地理院地図Vector」にアクセスすると、従来の地理院地図と似た「標準地図」が表示される。左側のメニューには、「おすすめの地図」として、「淡色地図」「白地図」「写真」「写真+注記」「大きい地図」「標準+陰影」「淡色+陰影」「大文字+陰影」など、異なる地図デザインが並んでいる。このうち「+陰影」が含まれているものは、地形の凹凸が陰影で表現されている地図で、山岳エリアなどで高低差を把握しやすい。
従来の「地理院地図」と異なる点としては、ベクトル形式の地図データの採用により、地図画面の回転や鳥瞰表示が可能となっている点だ。Ctrlキーを押しながら(または右クリックしながら)ドラッグすることで、自在に回転させたり、鳥瞰表示にしたりすることが可能。注記や道路番号などの向きは変わらずに、背景地図だけを回転させることができる。なお、スマホの場合は2本指で回すと地図画面を回転させることが可能で、3本指で上にスワイプすると地図画面が鳥瞰表示となる。
立体的に見える「アナグリフ」表示にも対応、近年の災害データも参照可能
「おすすめの地図」の下にある「表示中の地図」では、注記や地図記号、境界、道路、鉄道、航路、建物、交通構造物、海岸線、河川、湖池、水域、標高、等高線・等深線、地形など、編集可能な項目のリストが表示される。各項目で、表示のON/OFFやサイズ、色などを細かく変更することで、さまざまなデザインの地図を作ることができる。作成した地図を「地図デザインファイル」として保存することも可能だ。
さらに、「地図や写真を追加」を選択することで、地理院地図で提供されている「色別標高図」や「デジタル標高地形図」「陰影起伏図」「傾斜量図」「アナグリフ」「赤色立体図」など、さまざまな地図を重ねることができる。
また、災害関連の情報も充実しており、「近年の災害」の項目では、近年に起こった地震や台風・豪雨などの災害時に撮影された空中写真や火山の衛星画像、火山基本図などのデータを重ねることができる。
まさに自由研究の“ネタ”に使えそうなコンテンツも提供中
夏休みの自由研究に役立ちそうな情報として注目されるのが、「その他」の中にある「地理教育支援」というメニューだ。ここでは「イラストで学ぶ過去の災害と地形」や「地形等を活用した地理教育ネタ帳」など、自由研究のネタとしても使えそうな情報を収録している。それぞれのメニューを選択すると地図上に丸いマーカーが表示され、選択すると表示されるリンクをたどると、資料やSNS投稿などを見られる。
「その他」の中の「他機関の情報」という項目では、産総研地質調査総合センターによる地質図や、林野庁による森林(国有林)の空中写真、国土地盤情報サイト「KuniJiban」の地盤情報、気象庁の活火山分布など多彩な情報が用意されている。
このほか、PC版サイトで右上に表示される「色々な地図 公開中」を選択すると、GitHubの画面となる。ここでは「地理院地図Vector」で読み込めるさまざまなスタイルのサンプルが公開されている。シンプルなデザインにすることで読み込み速度を速めた「軽い標準地図」、道路をほかの地物よりも目立たせて表示した「道路地図」、鉄道に関する情報だけを表示した「鉄道路線図」、自然地形の情報のみを表示する「地形だけ地図」、河川や湖などに関する情報のみを用事した「川だけ地図」、文字をひらがなだけで表示した「ひらがなちず」などが掲載されている。
このような多彩なカスタマイズ機能と豊富な追加データを組み合わせることにより、地図を使って多面的に物事を分析し、可視化することができる。地形や地質、防災、公共交通、都市の変遷など、さまざまな自由研究に役立てていただきたい。
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INTERNET Watchでは、2006年10月スタートの長寿連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」に加え、その派生シリーズとなる「地図と位置情報」および「地図とデザイン」という3つの地図専門連載を掲載中。ジオライターの片岡義明氏が、デジタル地図・位置情報関連の最新サービスや製品、測位技術の最新動向や位置情報技術の利活用事例、デジタル地図の図式や表現、グラフィックデザイン/UIデザインなどに関するトピックを逐次お届けしています。