イベントレポート

CEATEC 2019

西新宿の将来像をARで。建設会社の未来を見据えた取り組み、その2

建設会社のブースが多く集まる「Society 5.0」をテーマにしたエリア

 10月15日~18日に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催されている「CEATEC 2019」で、政府が推進する「Society 5.0」をテーマにしたエリアに多く出展している日本の大手建設会社のブース。Society 5.0の具現化の1つの目安となる2030年の社会をイメージした展示として、ここでは大成建設株式会社を中心に、清水建設株式会社と株式会社大林組のブースも紹介する。

大成建設

大成建設のブース

 大成建設は、コンパクトシティや環境保全、SDGs(持続可能な開発目標)、労働力の確保といった難解なところもあるテーマについて、ARや遠隔操作体験を通じて一般人にとっても分かりやすく紹介しているのが印象的だ。

 ブースの一画にあるグレー一色のジオラマ都市は、大成建設本社のある西新宿を模したもので、備え付けのiPadをかざして見ることで、グレーのジオラマに重なるようにしてカラフルな都市がCGで表示される「デジタル西新宿」になる。このデジタル西新宿では、「現在」と人の動き、風の流れ、熱の溜まり方などをシミュレーションしてグラフィカルに表示するため、それを元に「未来」でどのような改善策がとれるか検討がしやすくなるという仕掛けだ。

最初に、備え付けのiPadでマーカーにかざす
するとグレーのみのジオラマにCGで「デジタル西新宿」が重なって描かれる
「温熱シミュレーション」では……
西新宿一帯の熱の溜まり方が分かる

 例えば「現在」の人の動きは混雑で滞りやすいポイントもあるが、「未来」ではその流れをもとに適切な場所に適切な案内表示を設置することで混雑の緩和につなげられることが分かる。「現在」は地表面が暑くなりやすく、冷房・空調でエネルギーコストがかかっている場所でも、新たに日陰を設けたり施設の素材・構造を工夫したりした「未来」では温度上昇を抑えることが可能だろう。あるいは、「現在」のビル風の流れを把握して、将来的にどこにどういった建物を建設すべきか、すべきでないかの判断にも役立てられるはずだ。

風の流れを表示したところ
風や暑さを軽減する新たな施設の提案が考えられる
現在の西新宿はコンクリートビルばかりだが……
将来的には建物に木材を用いたり緑化したりすることで、エネルギーの損失を抑え、快適な環境にすることができる
季節に応じて適切な量の太陽光を取り入れられる「バイオロジカルルーフ」
歩道の屋根などに頑丈な構造の板素材を利用し、暑さを緩和する提案
赤と青の点が西新宿の人の流れをシミュレーションしたもの。混雑が激しい
ドローンは、人の動きを分析するだけでなく、避難誘導にも用いる

 遠隔の建設現場における無人作業を可能にするシステムを模したロボットの展示では、遠隔操作の実体験が可能。触覚デバイスを搭載したロボットアームを操作することで、モニターに映るマニピュレーターを制御できるようになっている。このマニピュレーターは大成建設のブースから数十メートル離れたところにあり、ゼロコンマ数秒程度のわずかな遅延で操縦者の操作に合わせて正確に動作する。

離れたところにあるマニピュレーターを操作できるデモ

 思ったように動かすのには慣れが必要だが、砂場の上に置かれたゴムボールをつかむと、操縦者が握るロボットアームのつまみにも弾力のある触感が伝わり、しっかり保持できたことを実感できるのは感動もの。砂場にはいろいろな小物が用意されているので、つかんだり、落としたり、皿に入れたりと、難度の高い操作にもチャレンジしたくなる。

今回の展示内容の模式図
正面と左右から捉えた映像を見ながら操作

 今回のブース展示では、あくまでもデモのためロボットアームとマニピュレーター間をLANで接続していたが、こうした建設現場における無人遠隔操作のシステムはすでに導入が進んでおり、現行の4Gはもちろんのこと、2019年から一部でサービス提供が開始される5Gにも対応し、より遅延の少ない遠隔操作が実現するという。

こちらが離れたところにあるマニピュレーター。いろいろな小物をつかんだり、つかめなかったり……

清水建設

清水建設のブースでは、コンパクトシティに向けた構想と現在の取り組み内容を紹介
豊洲に2021年2月開業予定の新オフィスビルとその北のホテル(ドーミーイン)を軸に、コンパクトシティに必要な技術の実証実験や商用サービスを展開していく。この建物の敷地内ではオフィス間物流を担う自動運転車が走行する予定
清水建設が構想するコンパクトシティ
10月18日・19日、新豊洲オータムフェス」で自動運転車の体験乗車も可能。要予約

大林組

大林組のブース
大林組が保有するビルの建築・運用、スマート化を可能にする多様なプラットフォームを紹介

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