イベントレポート

CEATEC 2019

ANAが「瞬間移動手段」をCEATECに出展、綾瀬はるかさんも「アバターイン」

CEATEC初出展

ANAホールディングスのブースの様子

 ANAホールディングス株式会社が、10月15日から開催される「CEATEC 2019」に初めて出展。その内容を報道関係者に公開した。同社が取り組んでいる「ANAアバター」を活用したさまざまな提案を行っているほか、同社ブースだけの展示にとどまらず、同社が出展する「Society 5.0 TOWN」の出展企業と連携した“共創”型の展示を行っているのも特徴だ。

「ANAアバター」とは?

 ANAアバターは、VRやロボティクス、センサー、ハプティクス(触覚)などの最先端のテクノロジーを用いて、異なる複数の場所に設置したアバターロボット(遠隔操作ロボット)に「アバターイン」して、まるでその場にいるような感覚で「見て」「聞いて」「感じて」といった体験ができるのが特徴だ。

ANAブースには約40台の「ANAアバター」を用意している

 遠隔地にいる人とのコミュニケーションや、遠隔地における作業支援をロボットなどを活用して行うほか、災害の現場における救助や、医療機関の整備が進んでいない地域における治療、地理的や財政的な制約などによって十分な教育が受けられていない人への教育機会の提供なども可能になるとしている。

 同社では、「距離、身体、文化、時間、あらゆる制限を超える瞬間移動手段」と位置付ている。

タブレットを使って「ANAアバター」を操作できる
ANAアバター専用の走行レーン
この印のあるブースにはアバターが入ることができる
ANAアバター専用の充電エリア

 ANAアバターは、すでに数多くの実証実験を行っている。大分県にある世界初の「AVATARテストフィールド」で、宇宙開発、農林水産業、観光、教育、医療などでの実証実験を開始。JAXAを含む産官学との連携では、アバターによる月面施設の遠隔建設などの地上実証を行い、宇宙開発や利用を推進している。さらに、2018年3月からは、4年間にわたる総額10億円の賞金レース「ANA Avatar XPRIZE」をスタート。世界81カ国から、820社が参加を表明している。

 今回のANAブースの展示はこうした取り組みを紹介するもので、同社では、CEATEC 2019の出展を「ANAアバターの本格的展開の発表の場」としている。

 ブースでは、綾瀬はるかさんがANAアバターを使って水族館を訪問したり、買い物をしたりする紹介映像も見ることができる。

綾瀬さんが水族館を訪問している様子
生地について説明を受ける綾瀬さん
別のANAアバターを使って、生地を作る場所に出向き、職人と会話をすることもできる
祖母の家に出向き、ANAアバターを使って家を歩きながら祖母を探す
祖母は綾瀬さんと会話しながら楽しい食事の時間を楽しむ

「ANAアバター」で何ができる?

 ANAアバターの展示内容を写真を通じて紹介する。

ミュージアム&ショッピング

 各地に置かれたANAアバターを利用して、自宅のリビングにいながら、世界中のミュージアムの観賞や、ショッピングを楽しむことができる。高齢者や障がいを持つ人など、自由に動けない場合でも身体的な制約なく外出を楽しむことができる。ブースでは、大分県の大分マリーンパレス水族館「うみたまご」と連動して、同水族館に設置してあるANAアバターを利用して水族館の見学ができる。また、日本橋三越本店と結んでショッピング体験もできるようにする。

水族館に設置されたANAアバターを操作して見学ができる

フィッシング

 家の中でも魚を釣ることができる体験を紹介。大分の釣り堀に設置された釣りアバターロボットにアバターインすることで、釣りの体験ができるというものだ。ブースに設置された手元の釣り竿と、大分の釣り堀の釣りアバターロボットが連動。釣り上げる感触が手元にやってくる。実際の釣りと同じなので、現場では釣りアバターロボットに餌をつける作業が必要だ。まさに、大分の釣り場とつながっているので、現地の天候が悪い場合などは、体験できない場合もある。

ブースに設置された釣りアバターロボット
目の前には釣り堀の映像が表示されている
大分の釣り堀の釣りアバターロボットと、CEATECブースの釣り具と連動
現地では実際に魚が釣れている

スキルシェア

 ウェアラブルアバターにアバターインすることで“体験の共有”が実感できるのがスキルシェアの提案。2本の腕を持ったウェアラブルアバターを背負うと、そこに搭載された腕が遠隔地にいる高いスキルを持った技術者などによって操作される。難しい部分を離れた場所にいる専門家に作業してもらったり、技術指導を行ったりできるほか、ピアノや習字の個人レッスンなどにも利用できる。ブースでは、自ら操作して、離れた場所にあるウェアラブルアバターが、紙コップにボールを入れるという体験ができる。重量は12kg。今後、軽量化が図られるという。

ウェアラブルアバターは2本の腕を持っている
遠隔地から紙コップにボールを入れる

レッスン

 ANAアバターを使用して、学校のない地域の子どものもとへ瞬間移動し、授業をできるといった用途も想定している。世界のあらゆる場所へ教師を派遣したり、病気で学校に通えない子どもが、教室で仲間と授業を受けられたりといったことが可能になる。ブースでは、ANAのCAによる「おもてなし講座」などの遠隔授業が行われる。

遠隔地にいるANAのCAが、ANAアバターを使って講師を務める

クッキング

 ハンドアバターにより、遠くに住んでいる一人暮らしの親のもとに瞬間移動して、料理をつくるといった用途を想定。キッチンで“遠隔調理”をする様子を体験できる。ブースでは、イタリア地方のサラダである「カプレーゼ」を、ハンドアバターを使用して作るという。ハンドアバターの5本の指が器用に動いて、調理する様子を見ることができるだろう。将来的には遠隔地からの介護支援などにも応用を想定している。

ハンドアバターを使用して「カプレーゼ」を作るという
5本の指を器用に動かすという

フューチャーテック

 上半身と両腕を備えた二足歩行型のロボットを展示。自らが歩行経路を選択して行動できるほか、両腕で荷物を運ぶこともできる。屋外を移動できるほか、山道などの歩行も可能だ。今回はデモストレーションは行わず、展示だけとなる。

上半身と両腕を備えた二足歩行型のロボット。山道も走るように登っていく

アバターで「取材」してみた

 今回のANAアバターのデモストレーションでは、Society 5.0 TOWNに出展している企業との連携も注目を集めそうだ。

 Society 5.0 TOWNには、ANAアバターの専用レーンが用意され、そこをANAアバターが通行し、他社のブースに行くことができる。他社のブースでは、説明員がANAアバターの訪問者に対して説明をしてくれる。

「ANAアバター」で他社ブースにまで出かけてみる
凸版印刷のブースに到着した
「ANAアバター」を利用して、凸版印刷のブースで説明を聞くことができる
凸版印刷での説明を聞き終えて帰途につく「ANAアバター」

 一方、ANAホールディングスの片野坂真哉社長による基調講演が、10月15日13時から行われ、ANAアバターの取り組みなどについて言及する予定だ。

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