地図と位置情報
“移動するだけ”でポイントが貯まるアプリ「Miles」が日本上陸、徒歩・ランニングなら獲得マイルが10倍に
2021年11月18日 06:55
世界中の全ての移動で“マイル”を貯めて、さまざまな特典や寄付などに交換できるアプリ「Miles」が10月20日、日本でのサービスを開始した。米国シリコンバレー発のMilesは、スマートフォンの位置情報により移動距離および移動手段を自動判定し、1マイル(1.609キロメートル)ごとの移動に対してポイントが付与されるアプリ。マイルは、協力会社が提供するクーポンに引き換えたり、抽選に応募したり、寄付金として利用したりすることができる。
移動手段によってマイルの付与倍率が変動、電車で3倍、徒歩で10倍になる理由とは?
移動するだけでポイントが貯まるアプリはほかにもあるが、Milesのユニークな点は、同じ移動距離であっても移動手段によって得られるマイルが異なる点だ。「徒歩」や「ランニング」は10倍、「自転車」は5倍、「バス」「電車」「スキー」は3倍など、環境に優しい移動に多くのマイルを付与することにより、持続可能な社会づくりおよびSDGsの達成に貢献する。これらの移動手段については、スマートフォンの位置情報に基づいてAI(人工知能)が自動判定する。
なお、月ごとの移動距離や特典交換数をもとに、次月のステータス(シルバー、ゴールド、プラチナ)が決まり、ステータスに応じて月ごとのボーナスマイルが付与されたり、特典へのアーリーアクセスが可能となったりするほか、マイルの交換率もお得になる。
移動履歴はアプリ上で確認でき、過去に遡って確認することも可能。履歴の一覧画面では、出発地点および到着地点が地図上に表示され、軌跡は表示されない。なお、地図を表示しない設定にも切り替えられる。現在のところ、移動履歴の記録に上限は設けておらず、過去の全ての情報にさかのぼれるようになっている。
ファミマやJR東日本などの特典を用意、Amazonギフト券が当たる抽選も
日本でのサービス開始にともなって、Milesのマイルを日本国内で利用できる特典を、さまざまなパートナー企業が提供している。アプリ提供開始時点で提携企業数は83社で、108の特典が用意されている。ローンチパートナーとなっている企業は、ファミリーマート、JAL、JR東日本、ブラザー、Anker、hulu、ガーミン、udemy、アンダーアーマー、あいおいニッセイ同和損保など。
マイルは、コーヒーが無料でもらえるクーポンや、さまざまな商品、ジャルパックの割引クーポンなどに引き換えられる。毎週行うマイルを使った抽選では、Amazonギフト券やサンリオキャラクターとのオンライングリーティングなどが当たる。さらに、Milesやあいおいニッセイ同和損保などを通じて、森林保護や動物保護などの団体に対して寄付として利用することもできる。
コンビニコーヒー1杯=車だと800kmの移動が必要、徒歩やランニングなら80km
例えば、NewDaysが提供する「EKI na CAFE カウンターコーヒー(アイス/ホット)」は500マイルで引き換えられる。500マイルを車で移動して貯めるには、約800kmを走行する必要があるが、ランニングならば倍率が10倍になるので約80km、つまり1日10kmのランニングを8日間続ければコーヒーを1杯飲めることになる。
特典の内容は提供会社によってかなり差がある。例えば「JAL国内ダイナミックパッケージ(国内宿泊券+宿泊)」の2000円割引は200マイル、Garminのスマートウォッチの15%割引は400マイル、タクシーアプリ「DiDi」の1500円割引は150マイル、Amazonギフト券300円分は1万5000マイルとなっている。なお、割引クーポンの使用可能回数は、原則1回のみとなる。
11月15日の週からファミリーマートにて「にごり旨み緑茶 600ml」「烏龍茶 600ml」「香ばし麦茶 600ml」「芳醇ジャスミン茶 600ml」「アールグレイティー600ml」「ルイボスティー 600ml」のいずれかを、500マイル(グレードがシルバーの場合)で引き換えられるキャンペーンがスタートする予定だ。
マイルを使用せずに、特定の移動距離×移動手段×移動回数を期間内に達成することにより特典が手に入れられるチャレンジ企画も用意している。このチャレンジ企画は、米国では自治体と組んで、車ではなく自転車で移動したり、オフピークに時間に電車に乗ったりするとクリアとなる企画などが開催されている。日本では、レッドブルとアンダーアーマーが、特定の距離を歩いたり走ったりするとグッズをプレゼントする企画などを予定している。
これらの特典は、カテゴリーやキーワードで特典を検索、個別の特典を選択することで特典の詳細を確認できる。
ユーザーのプライバシーは大丈夫?移動データなどを匿名化してマーケティング活用も
Milesのビジネスモデルは、Milesの特典を通じて売上を得たパートナー企業が手数料を支払う「売上連動モデル」と、ユーザー獲得のためにMilesを活用し、獲得したユーザー1人ごとに手数料を支払う「CPAモデル」の2種類となる。
位置情報を扱うということで、気になるのがプライバシーの問題だ。Milesでは、アプリで収集した移動データやアプリの検索・閲覧履歴などを匿名化し、グループ化した上で、どのようなユーザー層がどのような特典に興味があるのか、といった傾向を把握するのに活用している。このような分析結果を活かして、例えばパートナー企業から「ファミリー層にアピールしたい」といったリクエストを受けたときに、その情報をもとに提供する特典やキャンペーンの内容を提案するなど、マーケティングの施策に活用することが可能となる。
また、米国では自治体と連携して、移動するのに車ではなく徒歩や自転車、公共交通機関を利用した人にインセンティブを与えるチャレンジ企画なども開催されており、そのような場合に、キャンペーンを行う前後でどれくらい人流に変化が起こったかを分析するといった取り組みも行われている。
Milesの日本法人であるMiles Japan株式会社のCEOを務める髙橋正巳氏によると、アプリで取得した個人データの提供・販売は一切行わない方針だが、移動データや検索・閲覧履歴などを匿名化したビッグデータについては、他社と共有する場合があるという。
距離や移動手段が誤認識される場合も。こまめに移動履歴をチェックして手動で修正を!
実際に使ってみると、車で移動したのに鉄道での移動と認識されたり、その逆のことが起きたりすることもあった。また、移動距離についても実際の移動距離よりも短め・長めに出ることがあった。
ただし、移動距離については間違った判定の場合は手動で修正することができるため、こまめに移動履歴をチェックすることをお勧めする。特に鉄道での移動は車での移動に比べてマイルの倍率が3倍となっているので、間違っているのなら修正しておかないと損することになる。同社はこのようなユーザーからのフィードバックを活かして、AIによる移動方法の判別の精度を高めていく方針だ。
また、筆者はMilesのアプリをiPhoneにインストールし、常に位置情報を利用する設定にしてみたところ、バッテリーの消費はかなり抑えられているという印象を受けた。特に、移動せずステイホームの状態での消費が極めて少ない。衛星測位の間隔や位置情報の送信間隔については非公開だが、Milesの髙橋氏によると、バッテリー消費についてはかなりこだわって開発されたとのことだ。
「Miles」で人々の行動変容が促される?
Milesのサービスは米国で2019年に正式スタートした。コロナ禍で世界的に人々の移動が制限された時期と重なるが、2年半の間に140万人のユーザーが登録し、累計50億マイルを利用して1100万回、特典と交換したという。日本では、コロナ禍が落ち着きつつある中でのサービス開始となったが、今後の見通しについて髙橋氏はどのように考えているのだろうか。
「人は本能的に『移動したい』と思っているので、コロナ禍が収束して、自由に移動できるようになってくると、Milesのサービスをもっと使っていただけるのではないかと思います。
Milesは米国において3年前にスタートしたのですが、コロナ禍では逆に『ステイホームしたらボーナスマイルを加算』というキャンペーンを行ったときもあります。今後、人々が移動できる時期と、移動できなくなる時期が交互にやってきたとしても、Milesをうまく活用することで人々に行動変容を促すことが可能となるので、いろいろな活用法を検討していきたいと考えています。」(髙橋氏)
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