意外と知らない? ネットセキュリティの基礎知識

「観戦チケットが当たる」というメールやSMSに注意

 東京オリンピック・パラリンピックの観戦チケット申し込みが話題です。また、先週末にはラグビーワールドカップの日本大会が開幕し、盛り上がりを見せています。このような大きなスポーツイベント、人気アイドルやアーティストのコンサートが開催されると、このイベントに便乗して金銭や個人情報を盗み取ろうとする犯罪者が現れます。

 特に正規販売チケットの抽選に外れた人を狙った手口は犯罪者の常套手段と化しています。「どうしてもチケットを手に入れたい」という人の心理に付け込み、獲得チャンスがあると見せかけた偽装メールや偽装SMSを送り、金銭や個人情報を盗み取ろうとしてきます。

 例えば、2019年7月には、2020年に開催する東京オリンピックに便乗した不審なSMSが出回っていたことがネット上で報告されています。報告によれば、SMSは東京オリンピックに関連する抽選券の配布と誤解させる内容であり、トレンドマイクロが本文中に含まれるURLを調査したところ、東京オリンピック関連の偽サイトでした。

 また、ロンドンオリンピックの開催直前期には、VISAカード主催の同オリンピック観戦旅行パックが当選する抽選に参加できると装う詐欺メールが配信されていることを確認しています。

ロンドンオリンピックに便乗したスパムメール

 もちろん、このような抽選は実際に存在しません。どちらの事例も、現地で実際にオリンピックを観戦したいという高い関心に付け込んだ詐欺の手口です。

 もし、このような観戦チケットを手に入れることができるとかたる詐欺サイトにアクセスしてしまい、クレジットカード情報や個人情報を求められるまま入力してしまった場合には、サイバー犯罪者に悪用される恐れがあります。

 このような当選詐欺の類似手口は、以前から手を変え品を変え繰り返されているため、利用者は今回のようなネット詐欺の手口を知り、だまされないようにすることが重要です。インターネット上でのお得な話には、立ち止まって、それが正規のサイトから提供されている情報か必ず確認する習慣を身に付けてください。

 心がけだけでは見抜きにくい巧妙な手口も増えているため、このようなネット詐欺のサイトへのアクセスをブロックしてくれるセキュリティ対策製品を導入して守ることも必要です。

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岡本 勝之(トレンドマイクロ株式会社)

セキュリティエバンジェリスト。トレンドマイクロ株式会社ビジネスマーケティング本部コアテク・スレットマーケティング部所属。製品のテクニカルサポート業務を経て、1999年よりトレンドラボ・ジャパンウイルスチーム、2007年、日本国内専門の研究所として設立されたリージョナルトレンドラボへ移行。シニアアンチスレットアナリストとして、特に不正プログラムなどのネットワークの脅威全般の解析業務を担当。現在はセキュリティエバンジェリストとして、それまでの解析担当により培った脅威知識を基に、セキュリティ問題、セキュリティ技術の啓発に当たる。トレンドマイクロの情報セキュリティ啓発サイトはこちら「is702(アイエス・ナナマルニ)インターネット セキュリティ ナレッジ」