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Wi-Fi 6Eの6GHz帯、2019年後半に欧米で免許不要利用にメド
【周波数帯を拡張するWi-Fi 6E】
2020年3月17日 06:00
InfiniBandも一段落したところで、休憩がてら、2018年4~7月にかけて全15回を掲載した【Wi-Fi高速化への道】」について、現時点までのアップデートも兼ね、Wi-Fi関連の動向をお伝えしよう。まず、Wi-Fi 6Eについては、Wi-Fi Alliance発表時の記事からの動きを順次補足しながら、現状の動向を紹介していく。
「周波数帯を拡張するWi-Fi 6E」記事一覧
2020年1月にLas Vegasで開催された「CES 2020」において、Wi-Fi Allianceは「IEEE 802.11ax」の拡張仕様となる「Wi-Fi 6E」を発表した。
もっとも、拡張仕様とは言いつつ、少なくとも現時点ではまだ外部には仕様そのものが公開されていないので、その意味では“ブランドの発表”と言う方が正確かもしれない。
IEEE 802.11axの仕様標準化は2020年末以降にまでずれ込むか
このリリース中では“拡張仕様”という言い方がされているが、実を言えば拡張も何も、IEEE 802.11axそのものの標準化作業が、そもそもまだ完了していない。
最後のWorking GroupのMeetingは2019年11月に開催され、ここでDraft 5.0までに出た問題をすべて解決。現在はDraft 6.0の策定に向けての準備期間中だ。
だが、2020年1月24日に行われたIEEE SA Ballotsでは、Draft 6.0への賛成票は82%止まりだった。それもあって現状の予想では、IEEE SA Ballotsをパスするのが2020年6月、最終的なWGの承認が9月、標準規格として認められるのが11月というタイムラインが示されている。
この予想が正しければ、標準規格としてのIEEE 802.11axは、2020年末に公布されるかたちとなるだろうか。ただ読めないのが新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、何しろメンバーが集まっての議論が現状では不可能になりつつある。ある程度はビデオ会議などで進められるとは思うが、今後のタイムラインには、変更が入りそうな雲行きだろう。
6GHz帯への拡張は2018年11月の「11ax Draft 4.0」で盛り込み済み
拡張規格としてのWi-Fi 6Eの話に戻すと、もともとIEEE 802.11axは、IEEE 802.11acの効率を改善するというストーリーであった。利用する周波数帯は同じながら、OFDMAの採用やMIMOの拡張、サブキャリアの周波数変更などを実装することで、より多数のユーザーに対して同時に効率よく通信を提供できるような仕組みを整えたという話は、こちらの記事などで以前に紹介した通りだ。
それはそれとして、実は2018年11月に出てきた「Draft 4.0」では、すでに「利用周波数帯の拡張」が行われていた。具体的に言えば、従来の5GHz帯(5170~5815MHz)に加えて、新たに6GHz帯(5935~7125MHz)を利用する仕様が追加されていた。これはDraft 6.0でも残っており、この先に何か問題が出たりしない限り、そのまま標準化されるものと思われる。
というか、少なくともWi-Fi Allianceはこのまま行くと考えているようだ。これを受けてWi-Fi Allianceでは、従来のIEEE 802.11acではカバーされていなかった、この6GHz帯を利用するものを“Wi-Fi 6E”として示したかたちとなるわけだ。逆に言えば、Wi-Fi 6はあくまでも5GHz帯を利用するものに留める見込みだ。
6GHz帯のアンライセンスバンドへの移行が米国と欧州で進展
もっとも、こんな話がなぜ今頃出てきたか?と言えば、Draft 4.0の時点では「6GHz帯が使えるようになりそうな可能性がある」と言う程度だったものが、2019年に入って欧米で「6GHz帯が使える見込みが高くなってきた」という状況に変わってきたことが挙げられる。
米国について言えば、FCC(Federal Communications Commission:連邦通信委員会)が2018年10月、5925~7125MHzを対象とした免許不要利用への開放に関するNRPM(Notice of Proposed Rulemaking)を発行した。
これは、「FCC Proposes More Spectrum for Unlicensed Use」という名前の通り「新しい周波数帯利用に関する意見の募集」であり、5925~7125MHzの周波数帯の電波を、Wi-Fiなど免許不要なアンライセンス機器に割り当てることに対する意見を募集したわけだ。
この周波数帯は、以下のようにもともと既にかなり使われており、それもあってFCCからは、U-NII-5とU-NII-7は標準電力のアクセスポイントでもいいが、U-NII-6とU-NII-8は低電力のアクセスポイントのみにする、といった提案がなされている。
このNRPMに対するコメントは2019年2月に締め切られ、FCCはこれを検討した結果、FACT SHEETとして2019年11月に「FCC-CIRC1912-YY」を発行した。
その中で6GHz帯に対するWi-Fiの利用は基本的に問題視せず、ただしITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)やC-V2Xなどの自動車向けに5.895~5.925GHzまでを割り当てる案が出ていることことを明らかにしている。
まだFCCでは最終的な決定は行っていないが、業界(Wi-Fi Allianceなどを含む3団体と30社)では、FCCへの上申書を2020年2月11日に提出するなどして、早めの法制化に向けたプレッシャーをかけるなどしている。
こうした米国における動きと同様、欧州でも6GHz帯の検討を行われていた。こちらは5925~6425MHzの利用に関し、CEPT(Common Effective Preferential Tariff:欧州郵便電気通信主管庁会議)内のSE45(Sepctrum Engineering 45)という作業グループが検討を行った。
検討結果は最終的に「ECC Report 302」として提示されている。この結論から言えば、対象となる周波数帯の屋内利用に関しては、認められそうな方向(屋外に関しては、パラメーターの検討が必要とされている)である。
こうした米国と欧州における状況をまとめたロードマップが以下となる。このロードマップは2019年7月時点のものと古いし、昨今のCOVID-19にからむ話はもちろん加味されていないので、スケジュールはここからもう少し遅れるかもしれないが、それでも2020年中には、米国、欧州ともに許可が下り、年末から製品の出荷が始まるとの予定となっている。
こうした動きが見えたことで、Wi-Fi Allianceとしても6GHz帯は確実に来るであろうと判断し、これに向けたプロモーションのため、“Wi-Fi 6E”というブランドを2020年に入って立ち上げたと考えるのが正しいだろう。
ちなみに半導体ベンダーは、既にWi-Fi 6E対応チップセットの出荷を開始している。筆者の知る限り、一番最初にアナウンスしたのはBroadcomで、まず1月7日に、アクセスポイント用チップセットのサンプル出荷開始を、次いで2月13日には、クライアント用チップセットの発表も行われた。Qualcommでも、まだ製品こそ発表していないものの、ウェブサイトで情報を公開しており、対応する気満々であることを明確に示している。
では日本は?という話は以下次回。
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