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Wi-Fi 6Eは80MHz幅で1Gbps、160MHz幅で2Gbpsの高スループット、6GHz帯の到達距離は?
【周波数帯を拡張するWi-Fi 6E】
2021年4月6日 06:00
Wi-Fi AllianceがWi-Fi 6Eの最新状況についてオンライン発表会を開催した。重複する部分もあるかとは思うが、2020年に公開した2本の記事をアップデートする意味でも、その内容を紹介していこう。
その発表内容は、Regulatory Update、Wi-Fi 6E Update、WBA Wi-Fi 6E trialsの3つに分かれていた。
「Wi-Fiを利用したビジネスのエコシステムをサポートする」WBAの「Wi-Fi 6Eトライアル」とは?
最後は、2003年にWi-Fiのエコシステムを構築する目的で設立された団体であるWireless Broadband Alliance(WBA)のCEO、Tiago Rodrigues氏による「Wi-Fi 6E trial report」について見ていこう。
Wi-Fi Allianceが言わばWi-Fiそのもの(ソフトウェアやハードウェアの開発や製造、一部プロトコルの確立など)に携わるメーカー向けの規格で、相互接続性の検証やWi-Fiの規格そのもののプロモーションなどは当然カバーすべき範疇なのだが、例えば、これを利用する公衆Wi-Fiなどをどう運営するか、ローミングサービスをどうするべきか、などの話はWi-Fi Allianceがサポートする範疇から外れてしまう。
WBAは、こうした「Wi-Fiを利用したビジネスのエコシステムをサポートする」という目的で設立された団体で、当初からBT、Comcast、Time Warner Cableなどの固定回線のオペレーターと、Cisco、Microsoft、Huawei Technologies、Google、IntelといったWi-Fiチップやシステムの提供ベンダー、それにAT&T、Boingo Wireless、China Telecom、Comcast、KT Corporation、Liberty Global、NTT DOCOMO、Orange、Ruckus Wirelessといったアクセスポイントを運営するキャリア(とアクセスポイント向け機材を提供するベンダー)がメンバー企業として参加する、比較的間口の広い団体であった。
WBAのウェブページで現時点の参加企業を確認すると、Board MemberがAT&T、Boingo Wireless、Broadcom、BT、Cisco、COMCAST、T-Mobile、Globalreach Technology、Google、Intel、Reliance Jio、SK-Telecom、Viasatの13社。これに40社のOperator Member、62社のTechnology Provider Memberを加え、とトータルで100社を超える大規模な団体となっている。
そして、WBAとWi-Fi Allianceの最大の違いは、WBAはWi-Fi以外も扱うことである。実際、2021年のプログラムを見ると、以下の5つが活動中だ。
- 5G Work Group
- IoT Work Group
- Next Gen Work Group
- Roaming Work Group
- Testing & Interoperability Work Group
Wi-Fi 6Eトライアルの範疇でもあるNext Gen Work Groupは、ほかにもIn-Home Multi-AP Solution、Wi-Fi Sensing Deployment Guidelines、Trackside Connectivity & Spectrum、Wi-Fi Callingなど、幅広い作業を手掛けている。
WBAのWi-Fi6Eトライアル、ローミング関連WG/TGやWi-Fi Allianceと共同で実施
ちなみに、Wi-Fi AllianceとWBAの両方に加盟する企業も当然多く、ローミングなどのCertificationとなるとWi-Fi Allianceにも関係することが多いため、両団体はしばしばコラボレーションを行っている。
例えば2011年6月には、Wi-Fi AllianceのHotSpot認定プログラムとWBAのNGH(Next Generation Hotspot)プログラムに関する提携を発表している。
そのWBAによるWi-Fi 6Eのトライアルについては、単にWi-Fi 6/6Eだけでなく、ローミング関連のWorking GroupとTask Groupが共同で行った。
トライアル全体は2段階で行われるが、Phase 1はドキュメントによる啓蒙活動であり、本番はPhase 2である。今回は、このトライアルの実施状況について発表が行われたわけだ。
まず、大規模企業向け(Enterprise)では、英国Mettis Aerospaceの製造工場で、現在もトライアルが実行だ。ここでは、航空機部品などの製造支援のためのARを中心にWi-Fi 6Eのテストを実施されており、Wi-Fi 6のIoTセンサーについても、同時にトライアルを行われている。
政府機関向け(Government)では、サウジアラビアのCITC(Communications and Information Technology Commission)で現在Phase 1にあたる啓蒙活動を実施中であり、2021年6月から、実際にトライアルが行われる予定だ。
また、複数の国際空港でのトライアルも予定されている。こちらはOpenRoamingのテストも一緒に行われる予定であり、Wi-Fi 6Eを利用しての実際のトライアルが、これも今年6月からスタートする予定だ。AR/VRをどうやってやるつもりかは不明だが、こちらは旅行者向けというよりは空港内の施設やそこで働く人々向けなのかもしれない。
Wi-Fi 6Eは80MHz幅で1Gbps、160MHz幅で2Gbpsの高スループット、6GHz帯での到達距離へと送信出力の関係は?
そんなわけで、Mettis Aerospaceの例を除き、いずれも2021年6月にトライアルが開始されることになっているため、実際の結果などはまだ出ていないのだが、発表会ではIntelのLabおよび小規模なトライアルの結果が示された。
それによれば、まず純粋な性能で言えばWi-Fi 6Eは圧倒的に高いスループットと、低いレイテンシーを実現する一方、到達レンジは5GHz帯の場合と比べた減少はわずか、とされている。
実際のところ、2.4GHz帯から5GHz帯への移行で、レンジそのものが結構減った(というか、障害物により弱くなった)のが実情なので、これが6GHz帯になったときにどの程度到達距離への影響があるのかは興味ある部分なのだが、Labレベルで言えば、これは大きな問題にはならない、とされた格好だ。
右のグラフは、Wi-Fi 6Eに限って、さらに細かく比較したものだ。脚注にもあるように、原則的には市販されているWi-Fiルーターと、Wi-Fi 6E対応カードを搭載したノートPCを利用したテストで、3mの距離(障害物なし)と26mの距離(間に壁2枚)という環境で送受信を行った際のスループットを比較したものだ。青が160MHz幅、緑が80MHz幅で通信を行った結果だが、おおむね80MHz幅では1Gbps、160MHz幅では2Gbpsのスループットが得られるとの結果だ。
ただ、注意すべきは、TXで26mの距離のケースだ。このテストは『Wi-Fi 6Eで拡張される6GHz帯を利用可能にする3つの電力クラス』でも説明したように、クライアントはVLP、ルーターはLPIの組み合わせで実施されたとみられる。
Intelによるテスト結果なので米国内で実施されたものだと思われ、ルーターはMAX EIRPが30dB、MAX EIRP Densityが5dBm/MHzとみられるため、5×160=800dBmになる……わけでもなく、30dBm=1Wの送信出力が利用できる。出力が1Wなら、壁2枚を隔てた26m先でも、3mの場合の1割減程度のスループットが維持できるわけだ。
ところがVLPの場合、MAX EIRPが14dBm、MAX EIRP Densityが-8dBm/MHzとなる。このうちDensityの方なら24dBm近くまで出力できるわけだが、MAX EIRPの方では上限が14dBm(≒25.1mW)に制限されることになる。この出力で壁2枚を挟めば、スループットはきっちり半分へ落ちる、というわけだ。ダウンロードであれば問題ないが、アップロードは遅いという感じになってしまうので、少し使い方を考える必要がある。
これをカバーするには、ルーター(あるいはアクセスポイント)の近くにクライアントを置き、壁なども通過させないことが必要なので、家庭内での利用を考慮すれば、Wi-Fi 6Eでもメッシュ接続が流行するかもしれない。
1アカウントで世界中どこでもWi-Fi接続できる「OpenRoaming」
話を戻すと、WBAが現在推進しているのがOpenRoamingだ。要するに、1つのアカウントで世界中どこでもWi-Fiに接続できる仕組みであり、現在世界で50以上のトライアルが実施中だという。
その一例が、ベルギーのWIFI4EUである。ベルギーでは、複数のオペレーターが入り乱れているが、都市間を移動してもユーザー情報が継承され、毎回ログインし直したりせずに利用できるというものだ。
現在はPhase 1のトライアルが完了し、今後の方針を議論しているらしい(少なくともWIFI4EUは最低でも3年間は維持されるとする)。
ちなみに、自治体あたり1万5000人のチケットが用意され、これを入手すれば利用できるというかたちなので、まだ商用利用というレベルではない。トライアルでは仕組みを確認するのが目的なので、これが上手く行けば、Wi-Fi 6/6Eの普及とあわせ、広範なローミングサービスが実現するのかもしれない。
ということで、今回まではWi-Fi AllianceによるWi-Fi 6E説明会の内容をお届けした。日本では総務省が認可を出さない限りどうにもならない話となる。通例であれば、2021年5月あたりとみられる令和3年度版で、このあたりが明確にされるのを待ちたいところだ。
もし、その中で認可が下りるような方針が打ち出されれば、そこから関連規則などが順次出てきて、最速であれば9~10月あたりにも商品が登場する可能性も残っているはずだ。
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