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AIのすそ野はどこまで広がった?そしてAI以外は?~今年のCEATECを弊誌記事で振り返る

 10月15日〜18日に幕張メッセにて開催された「CEATEC 2024」。

 経済発展と社会課題の解決を両立する『Society 5.0』の実現をテーマに開催されてきたが、今年は25回目の節目となる開催。25周年特別テーマとして「Innovation for All」を設定し、25周年特別企画として「AI for All」エリアも開設。規模もホール2~8と昨年より大きく拡張しての開催となった。

 さらに、日本自動車工業会(自工会)が主催する「JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024」もホール1で併催。両イベントの来場者登録をワンストップで行えるなど、幕張メッセのホール1~8の全てが「共創」のイベントとして開催された。

 結果としての来場者数は、前年比25.8%増の11万2014人(会期4日間合計)。コロナ禍の期間は、様々な困難があったリアルイベント、リアル展示会だったが、今回は開催規模、来場者数ともに「リアルイベント復活」の方向性を印象付けるものと言えるだろう。

 そこで、今回は、弊誌で掲載した記事をもとに「今年のCEATEC」を振り返ってみたい。

「AI」のすそ野を含め、幅広く展示製品やサービス、要素技術から、半導体や電子部品、素材まで……

 CEATEC 2024の大きなテーマとなったAIだが、実に半数の出展者がAI関連の展示を行ったという。

 AI関連というと、「AIを活用したサービス」や「AIそのものの技術」だけをイメージしがち。そうしたAIサービスやAI技術も多数出展されていたが、CEATEC 2024ならではと言えたのが、「それ以外」のAI関連展示だ。

 具体的には、AIのための半導体や、その半導体を支えるための電子部品や実装技術、そしてその素材、さらには、AIによって応用範囲が広がりそうな要素技術まで、極めて幅広い。

 一方、会場では「AIだけが目立っている」わけではないのもCEATECならでは。

 個別のブースを見ると、実際に「AI関連のなにか」がある場合も多いが、必ずしもそれが前面に押し出されている訳ではなく、多くの出展者では、その持ち味を活かした本来的なアピールをしつつ、「でも探すとAIがある」といった状況。

 これは、パナソニックグループやシャープなどの大きなブースだけでなく、数小間サイズのブースでも同様だ。スタートアップや研究機関、大学などが多く出展している「ネクストジェネレーションパーク」や海外からの出展者が集まっている「グローバルパーク」に多いシンプルなブースでは、アピールしたいものが1つに絞られていることが多い。これらの場合は「これはAI関連だ」とわかりやすいものもある一方、話を聞いてみると、深くAIと関連しているようなものもあり、宝探しのような状況だった。

 CEATECは、もともと懐の広いイベントで、サービスから電子部品まで、また、コンシューマー向けから事業者向けまで、様々なものを1つのイベントとしてまとめているのが身上だ。そして、それらによる、いい意味での混沌さが魅力ともいえるが、AIが早くもそれに馴染んだ、と言えるだろう。

様々な視点を束ねる「軸」も多数、OpenAI Japan社長などの講演も…

 一方、そうした混沌さを束ねる「軸」があるのもCEATECだ。

 例えば、複数の出展者が、共通のテーマで共同出展する「パートナーズパーク」を今年も大々的に展開、この中でも様々なAI関連の出展があったほか、基調講演ではOpenAI Japan社長の長﨑氏が講演。そのほかにも、AIに関連する様々なコンファレンスが行われたほか、会場内に複数用意されたステージでも各社が様々なセッションが実施された。

 また、興味深いのは、期間中、AI関連団体を集めたネットワーキングイベントが開催されていたこと。

 これは、17日の閉場後に行われたもので、AIに関連する13もの団体が親交を深める機会となった。詳細はこちらの記事でまとまているが、AIの技術そのものから、ガバナンス、法律、活用、ハードウェア、利用者視点のものまで幅広く、なにかが生まれる機会になりえる、興味深いものと言えるだろう。

AI以外の「軸」と「出展」も多数ブースツアーに掲示板、コミュニティも……

CEATECのWebサイトには、出展者の検索カテゴリが80以上も設定されている。

 ここまで、AIを切り口にCEATEC 2024をまとめてみたが、CEATECはAIだけのイベントではなく、むしろ、「AI以外」に関しても、非常に多くの出展があった。

 弊誌では以下のような記事を掲載しているが、これらはほんの一部の分野でしかない。

 例えば、CEATECのWebサイトでは、出展者の検索カテゴリとして「公共インフラ」「電子部品」「スマートシティ」「金融システム」「住宅」「物流」「量子コンピューティング」「スマート家電」「情報通信」「VR」「医療」「観光」「地方創生」など80種類以上の選択肢が用意されている。

 そして、あまりに多い「軸」をガイドし、前述したような「宝探し」をサポートしてもらえるようなサービスも現れている。

 アビームコンサルティングによる「ウォーキングブレスト」は昨年に続いて今年も開催。申し込んだ来場者のニーズを元に、スタートアップ企業を厳選してツアーのように紹介し、効率的なマッチングを行ったほか、今年は新たに掲示板型マッチングサービス「Biz-Board」も行った。

 出展者の幅が極めて広く、軸も多いCEATECだが、こうしたサービスがあることで、来場者が何かを発見しやすくなっているのも特徴だ。

 そして、各分野では、それぞれに軸を作るコンファレンスやステージイベントも多数実施、AIのところで触れたような、ネットワーキングイベントも「デジタル田園都市国家構想特設パビリオン」「CEATEC 2024+Japan Mobility Show Bizweek 2024 出展者」「グローバルエリア」で行われている。

 どんな「軸」があるのかは、CEATECのコンファレンス一覧を見て確認するのが良いだろう。また、ImpressWatchでも全媒体の記事一覧を用意している。

 このほか、今年は「JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024」が併催されたが、これについてはCar Watchが多数記事を掲載中。今回、自動車産業と連携度が高く併催されたことで、一体的に見学できた来場者も多かったはずだ。来場者にとっては「新たな軸」が増えたかたちと言えるだろう。

CEATEC 2024とJapan Mobility Show Bizweek 2024 出展者の合同ネットワーキングイベント
グローバルエリアのネットワーキングイベント
デジタル田園都市国家構想特設パビリオンのネットワーキングイベント

経営トップや政府関係者は何を見るのか?彼らの見る「軸」とは?

 なお、こうしたCEATECだけに、毎年、様々な重要人物が視察に訪れる。

 視察のほとんどは非公開だが、主催者によると、経営トップや政府関係者、自治体関係者など、非常に多岐に及び、それぞれの「軸」でCEATECを視察、時に情報発信していく。

 また、自らの「軸」を発信すべく、政府関係者がメッセージを寄せるのも通例。今年は石破茂首相やデジタル庁の平将明大臣、経済産業省の上月良祐副大臣、総務省の馬場成志副大臣らがメッセージを寄せている。

リアル会場での実施、だから気付くこと……

CEATEC 2025の予告。出展者向けの事前情報も既に出ている。

 最後に、記事で掲載できなかったいくつかの小ネタと、そのほかの記事を紹介しよう。

 リアルで開催される巨大イベントだけに、展示やコンファレンスだけでなく、色々な気づきがあるのもポイントだ。

 ちなみに、来年のCEATEC 2025は10月14日(火)から17日(金)に開催予定。出展者向けの事前情報は既に出ているが、開催時期が近付くにつれ、新たなイノベーションに向けた来年の取り組みも公表されていくと思われる。

CEATEC 2024会場側からJapan Mobility Show Bizweek 2024会場側を展望したところ。開催初日なので、あまり混雑していないのがポイント。来場者は初日が2万1千人で最終日が3万4千人。徐々に増えていくので、早めに来場すると楽に回れる。
ネクストジェネレーションパーク(手前)とグローバルエリア(奥)の様子。最終日は非常に混雑する時間帯もあったが、初日は余裕があった。
今回は幕張メッセのホール1からホール8までが使われていたが、実はホール7と8だけ、照明の雰囲気が違っていた。これは「ホール7と8だけ先行してLED照明に換装したため」(幕張メッセ)。ホール1から6は水銀灯で、消灯後の再点灯に時間がかかるほか、輝度の調節にも制約があるという。見た目の印象としても、LED照明の方が明るく感じる。なお、記事掲載日現在も同様の照明になっているとか。写真は左がLED照明、右が水銀灯。
環境への取り組みも年々強まっている。写真はシャープが掲示していたグリーン電力証書。
SNS時代ならではの告知も
中学生や高校生の見学も多いCEATECだが、実は小学生でも入場できる。中学生以上は一般的な来場者登録を行い、入場証を作成するが、小学生以下でも、入り口で申請すれば入場用のシールをもらえる。「次世代を育てる」ことを意識しているためとのこと。団体見学などについては、子どもとITにて記事を掲載している。