【連載】 【編集部から】 ●GoogleがBoobleを訴えた Googleは今後、どのぐらいの収益を得るようになるのだろう? 75%ものマーケットシェアを持った企業は、今後どうなっていくのだろう? インターネットの検索エンジンは、メールに次ぐ巨大な市場になりつつある。ジョン・ハットフィールド(John Hatfield)氏がSunday Herald Onlineに最近書いた記事は、このあたりを注意深く分析している。 記事にはこう書かれている。「Googleの成功の秘密は、口コミでその人気が広まったことにある。ファンたちがGoogleの驚異的な機能について熱狂的に騒ぎ立て、その輪がどんどん広がっていったのだ」。確かに、Googleは当初、怪しげなクライアントの「スポンサー広告」などを一切掲載しなかった。競合他社が広告を利用しすぎてエンジンそのものの信頼性を損ねてしまったのに対し、Googleはバナー広告さえ拒否していたのだから。 たとえばAsk Jeevesなど、検索エンジン他社が広告を掲載することで収益を上げようとしたのに対し、Googleは収益性を考慮に入れず、ひたすら検索能力を高めることに全力を投入した。これがネットユーザーたちに信頼される大きな原動力になったというわけ。 ハットフィールドは続ける。「ところが最近、Googleのそうした考え方は今では大きく変わってしまったことを見せつけられるような事件が起きた」。何のことかといえば、そう、Googleがポルノの検索サイト「Booble」を著作権侵害であると訴え、名称の変更を求めた事件のことだ。 「著作権侵害で似た名称のアングラ商売を訴えるというのは、ブランドイメージを守ろうとしている他の大企業なら当たり前の行為だろう。しかしここがポイントだ」とハットフィールドは書く。インターネットのWeb文化は、ティム・バーナーズ・リーやリーナス・トーバルズらが培ってきたオープンソース的でフリーな文化的精神に守られてきた。著作権を声高に叫ぶことよりも、みんなでコードを共有し、ネットの発展に寄与することが望ましいと考えられてきた。そしてGoogleもその栄誉ある列の中にある企業だと考えられてきたわけだ。しかし、Boobleを著作権侵害で訴えるという行為は……。 Googleは企業体として、変化しつつあるのだろうか? Googleが新規株式公開(IPO)を果たしたのちには、その変化はさらに大きくなるのかもしれない。そして、もしGoogleがそうした変化を遂げるのだとすれば、そのテクノロジーは影響は受けないのだろうか? この問題について、ボブ・マクドゥエル(Bob McDowell)氏はit-analysis.comでこう書いている。「もしGoogleがテクノロジー志向の企業からマーケティングベースの企業へと脱皮することができなければ――つまり、同社がきちんとした企業体へと変わることができなければ、Yahoo!やMSN、AOLなどマーケティングをきちんと研究している競合他社に追い落とされ、独占支配力を失ってしまう可能性は十分にある。IPOしたから何とかなるというわけではない」。 さてさて、今後どうなるのだろうか。興味深く観察していきたいテーマだね。■URL Sunday Herald Onlineの記事(英文) http://www.sundayherald.com/39750 it-analysis.comの記事(英文) http://www.it-analysis.com/article.php?articleid=11648 ●ルックスマート伝説再び
LookSmartで、オーストラリアの総括責任者を務めていたダミアン・スミス(Damian Smith)氏が、ジェイソン・ケラーマン(Jason Kellerman)氏のあとを継いで会長兼CEOに就任した。同社の役員会が交代するまでの、暫定CEOという位置づけだ。 LookSmartの赤字が拡大し、経営危機に陥っているのは、前にもお伝えしたようにMSNとの契約が終了してしまったからだ。契約終了は1月15日で、LookSmartの今年の赤字幅は3,000万ドルに達する見通しだという。だがスミス暫定CEOは、同社が赤字を拡大していることについて、「昨年10月から開始したキーワード広告ビジネスを展開し、経費削減も進めることでMSNの埋め合わせは可能だ」と米紙でコメントしている。そして「もうこれ以上、大手との提携は探し求めない」とも言っている。MSNに振られて、たいへんな失恋を経験したことで、今後はいろんな相手と交際していくことによって、リスクを回避する方がベターだということに気づいたようだ。 いずれにせよ、LookSmartは今後、自身を改革していくことによってしか生き残れない。どのように改革していき、どのようにPRしていくのか。そしてどのような経営者が現われるのか――同社をリアルタイムでWatchしていくことは、経営を勉強している学生にとっても格好の実地学習になりそうだ。 (2004/2/10) [Reported by ジェフ・ルート&佐々木俊尚]
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